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排日土地法撤廃の功労者・藤井整を描いた「リトルトーキョーレポーター」 製作陣と出演者に聞く ~その1~

作品にも登場するリトルトーキョーのファースト・ストリートに立つジェフリーさん(右)、キャロルさん(中央)と主演のクリス・タシマさん

エグゼクティブプロデューサー: 文子・キャロル・藤田
監督・脚本: ジェフリー・ジー・チン


日本から来た新一世である私は、何の差別も不便も感じることなく、日々アメリカで生活している。ネイティブでないため、英語のボキャブラリーに不安を覚える程度の不便しかない。しかし、第二次大戦中に日系人が財産を没収され、収容所に隔離された、よく知られる差別的な事例以外に、昔は一世には土地を購入する権利さえ与えられていなかった。その日系人排斥とも呼べる状況を裁判によって撤廃したのが、山口県出身の日系一世、藤井整である。彼ら日系移民社会のパイオニアの存在と活動があって初めて、後世に暮らす私たちの生活が安全確実なものになったと言える。

パイオニア、藤井整の闘いを描いた短編映画「リトルトーキョーレポーター」がロサンゼルス、オレゴン、ニューヨークなど各地で18を超える賞を受賞している。2012年に試写会を実施以降、地道な上映活動を続けた結果、支持の輪を広げ、受賞にもつながった。この作品の一オーディエンスとして、また新一世として感じた「さらに多くの人にこの映画を見てほしい」との純粋な思いを胸に、同作品に関わった人々に話を聞いた。

藤井整を映画化しようと思い立ったのは、引退した薬剤師の日系三世、文子・キャロル・藤田(Fumiko Carole Fujita)さんだ。

「私は職業柄、昔の日系移民の置かれた医療の状況を調べたいという興味をもっていました。ハワイにいた私の父方の祖父母は若くして亡くなっています。一世が暮らした当時、日本人は正当な治療を受けることができなかったのです。日本人は病院に行くことさえ許されていませんでした。そのような差別的な処遇を受けていた日本人移民のために、5名の医者が日本人のための病院を作ろうと立ち上がりました。そこに力を貸したのが藤井整でした。弁護士を目指してアメリカに留学してきた彼は、アメリカでは市民権を取得していなかったために弁護士資格試験を受けることすらできなかったようです。そのような経緯で藤井のことを知り、彼の人生について深く調べるようになりました」

日本人のための病院開設だけでなく、彼が日英両語の加州毎日新聞の創設者であり、ラジオ局も運営し、さらには不公平な排日土地法を覆すまでの功績を残した人物だと知り、キャロルさんは「彼のことを広く紹介したい」と望むようになったという。

そして、藤井整について調べ始めてから2年後の2010年4月、サンフランシスコで開催された全米日系人博物館主催のイベントで、キャロルさんは若い映画作家に出会う。それが、後に「リトルトーキョーレポーター」の脚本、監督を手がけることになるジェフリー・ジー・チン(Jeffrey Gee Chin)さんだった。

引退した薬剤師と駆け出しの映画作家のコンビ

「私自身は中国系3世のアメリカ人。広東州から渡米した私の祖父も、1930年代にニューヨークのチャイナタウンで中国系移民のための活動に携わったと聞いています。私もアジア系アメリカ人の一人として、藤井整の人生に強い興味と共感を覚えました。是非、これを映画化したいと即答したのです」

ただし、当時のジェフリーさんはまだ大学生の身。映画作家を志望してはいても実質的な経験はゼロに等しかった。それでも、キャロルさんはジェフリーさんの熱い思いと可能性に賭けた。「引退した薬剤師とこれからキャリアを積もうとする若い映画作家、なかなか素敵なコンビネーションでしょう?」と話すキャロルさんは、ジェフリーさんとのパートナーシップに満足しているようだ。

この映画で非常にわかりやすい比喩に使用されているのが、日本の童話「桃太郎」だ。藤井整は1930年代当時、東京クラブ(社交クラブ)を牛耳り、リトルトーキョーに巣食っていた暴力的かつ不道徳な勢力を相手に、正面から闘った。実際にその一団から襲われ、一命を取り留めている。映画の中で紹介される桃太郎は、鬼を征伐に行く正義の味方の物語。つまり、ももたろうが藤井整で、鬼はリトルトーキョーの一団というわけだ。

この秀逸なアイデア、実はジェフリーさんのものだと言う。「小学校の頃から日本の童話には親しんでいました。1年間ずっと図書館から童話を借りっ放しだったこともあるくらい熱中しました。日本の童話も含めてアジアの物語を読むことで、僕自身のルーツを確認していたのかもしれません。欧米人にとって一番わかりやすい話は『アーサー王の物語』ですが、僕は藤井整を表現するのに桃太郎が最適だと判断しました」

脚本執筆と共に、製作資金集めも開始した。カリフォルニア・ステート・ライブラリー、ユニオンバンク、UCLAのテラサキセンター、ジョージ・アンド・サカエ・アラタニ基金、キャロルさんの住むパロスバーデス在住の一般市民までさまざまな層の人々が、日系社会のパイオニアを世に知らせるプロジェクトに賛同し、金額の違いはあっても資金提供に応じた。「藤井の出身地である山口県岩国市で会った彼の家族(子孫)も、映画化を喜んでくださって500ドルの寄付金を頂戴しました」とキャロルさんは振り返る。

資金面でも多くの人のサポートを得て実現した映画化だが、次に話を聞いたのは主人公、藤井整を演じたクリス・タシマさんである。クリスさんは戦中、多くのユダヤ人の命を救った日本の外交官、杉原千畝を映画化した「ビザと美徳」で監督、主演を務め、見事アカデミー賞実写短編部門を受賞した日系3世だ。彼が「リトルトーキョーレポーター」の映画に関わることで、制作の局面がダイナミックな動きを見せることになる。

その2 >>

 

「リトルトーキョーレポーター」公式サイトからDVD購入可: www.ltreporter.com

 

 エグゼクティブプロデューサーからのメッセージ

「リトル・トーキョー・レポーター」はアメリカ国内のみならず、海外のさまざまな地域で上映を行うため、皆様からの献金をお願いしております。個人用チェックの郵送、またはウェブサイトからのクレジットカードによる献金が可能となっております。チェックの宛先はLittle Tokyo Historical Society (小東京歴史協会)とご記入下さい。また、皆様の献金は所得税等の控除の対象となります。日系一世のパイオニアであり、「忘れられた公民権の運動者」であった藤井整への関心と、映画へのご支援に深い感謝の意を表します。


個人用チェック郵送先:

Lil Tokyo Reporter Film
PO Box 3552
Rolling Hills Estates, CA 90274

オンラインによる献金はこちらから:http://www.ltreporter.com/blog/donate/

 

© 2014 Keiko Fukuda

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