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日本文化に夢中:日本の伝統文化を極める“ガイジン”さんに、その魅力を聞くシリーズ

第4回 「はかないからこそ着物は美しい」- ジョージ・ハワードさん

お正月や結婚式に着物を着る機会はあっても、誰かに「着せてもらう」よりほかに手はなく、自分で「着られる」日本人は少数派になってしまった。その一方で、ロサンゼルスの山野流着付けでは、アメリカ人男性の講師が活躍中だ。名前をジョージ・ハワードさんという。

日本の美を体現する様式

ロサンゼルス近辺でも特に日本人と日系人が集中して暮らすサウスベイ地域で生まれ育ったジョージさんにとって、日本は常に「興味を魅かれる異国」だった。その後、彼が教師として勤務していた高校の日本人学生との交流がきっかけとなって、日本との距離感がぐっと縮まった。

「リトルトーキョーにも足を運ぶようになり、1年に1分野のペースで、日本史、演歌と新たな日本文化について学ぶようにもなった」

やがて、ジョージさんの娘は、日本好きな父親の影響で日本舞踊と津軽三味線を始め、日本舞踊では名取りにまでなった。

「私の周りには常に日本人がいた。そして、日本舞踊や琉球民謡のグループに、ボランティアのマネジャーとして関わるようになった。そして6年前、山野流の押元末子先生に、着付けを習うことを勧められた。時間外も熱心に教えていただき、正式な着付けを習得する機会を得られたことを心から感謝している」

着付けは目的によっても異なってくる。長い間正座することが多い茶道なのか、動き続ける日本舞踊なのか、それぞれの違いについて理解を深め実践していくことで、技術に磨きがかかっていく。

しかし、筆者が「技術」と言った矢先、ジョージさんは「単に技術的なものではないのだ」と付け加えた。「技術を超えて、スピリチュアルな部分を理解することが重要だ。私にとっての着物は、日本の美の心を体現する様式。いかなる心持ちで、いかに振る舞うかまでを含めた総合的な芸術なのだ。しかも、着物は、人間が着ている間だけ表現される、テンポラリーの芸術だ。はかないからこそ余計に美しく感じられるのは、まさに日本の桜のようだ」

まるでお堀端に咲く満開の桜を見てきたかのように語るジョージさんだが、日本文化に傾倒して30年、意外なことに日本には一度も行ったことがないのだそうだ。

最初は疑いの目で?

平日はメーカーのシニアマネジャーとして勤務し(高校教師から転職)、週末は日本舞踊グループのマネジャーや着付け講師として多忙な日々を送るジョージさん。

「着付け講師としてのゴールは?」と聞くと、「この道に終わりはない。だからゴールもない。きっと死ぬまで学び続けるだろう」と即答した。

長い歴史を持つ日本の着物を理解するヒントとして、時代劇を見るのも楽しみの一つだとか。

「大河ドラマは必ず見るようにしている。そこから着物、歴史、考え方、言葉を学ぶことができる」

2009年3月現在、「私が知る限り、アメリカの山野流では私が唯一のアメリカ人講師だと思う。しかも男性ということで、最初、日本人に紹介されると、非常に疑い深い目で(笑)見られることが多い。なかなか信じてくれない」そうだ。

しかし、お互いに深く知り合うようになると、相手の日本人から必ず言われることがある。それは「ジョージさんの前世は日本人だったに違いない」というコメントだ。

「日本にはアメリカ社会の中には見られない上下関係や、婉曲な言い回しがある。主語も不在。たとえば、最初の頃、『行きます』と言われると、『誰が?』と疑問に思ったものだ。しかし、その壁を既に超えてしまった私には、日本人の中にいることが非常に心地よく感じられるのだ」。やはり、「前世は日本人」に違いない。

* 本稿はU.S. FrontLine May 5/2009からの転載です。

© 2009 Keiko Fukuda

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このシリーズについて

三味線、陶芸、詩吟、武道、着物…その道を極めるアメリカ人たちに、日本文化との出会いと魅力について聞く。(2009年のU.S. FrontLine より転載。)