ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2008/6/12/oozumou/

27年ぶりの大相撲ロサンゼルス巡業、興奮をありがとう

6月7&8日、ロサンゼルスのスポーツ・アリーナにて、27年ぶりに大相撲ロサンゼルス巡業が開催された。二日間で、合計2万人の観衆が日本の国技を観戦。生で見る力士たちのぶつかり合いに大きな歓声を送った。

「ワカノーサトー、ラ〜ラ〜ラ」白人女性二人組のジングルのような若の里への声援と手拍子に、会場がつられて手拍子で応える。「朝青龍〜」「白 鵬〜」こちらは、あちこちで国旗を上げる、モンゴル大応援団の声援だ。「千代大海!」「魁皇!」歯切れのよい掛け声は日本人のものだが、残念なことに日本 人力士への声援は、そんなに多くない。ナニジンだって、力士は強くなくっちゃ応援のしがいがない。

会場は7割方がアジア人。アジア人はほとんど日系と思っていたが、LAに住むモンゴルからの移民の人たちも多く来ていたようだ。彼らは朝青龍、白鵬 の両横綱を含む実に7名のモンゴル勢を熱狂的に応援していた。“悪行”で知られる朝青龍も、異国の同胞に自分と似たものを感じるらしく、LAのモンゴル人 学校を訪問し、寄付を申し出たという。ファンサービスは、今回やって来た40名の力士たちの中では抜群だったと思う。

白人観客も負けてない。「ASASHORYU YOU ROCK」の看板を掲げる男性もいた。「大相撲ダイジェスト」を見て相撲の楽しさを知ったという人もいた。今は有料のテレビジャパンでしか放送してない が、昔は地上波の日本語チャンネルで放送していたのだ。日本文化って、思わぬところでアメリカ人にも広がっているものである。相撲をTVで見たことのある 人も、ただ興味本位でやってきた人も、アメリカ人は本当に良い観客である。長い取り組みの勝負が決まると、こぶしがあちこちから上がり、イスから飛び上が る。中には“参りました”の最敬礼ポーズも。レイカーズの試合じゃあるまいに、本当にノリのいい観客だ。総合優勝の朝青龍でさえ、観客のスタンディングオ ベーションには上機嫌。あの仏頂面の横綱が自分からハイタッチを求める興奮ぶりだった。

一方の日系人観客。会場には日本人が家族連れでたくさん来ていたが、日の丸も星条旗も掲げるわけじゃなく、存在感は大きくなかった。日系コミュニ ティとの連携はどれほどだったのだろう。一年前の5月、LA巡業が正式に決まる前に 勧進元でハワイ在住のビジネスマンの位ノ花繁充氏ら実行委員会は、地元日系コミュニティの協力を求めるべく、LAにやって来た。双方の思い違いもあったの か、その成果は思わしくなかったと聞く。チケットの売れ行きは遅く、今年3月に日本相撲協会から親方衆が派遣されて下見に来たとき、「全然進んでないじゃ ないか」と怒り心頭ムードだったことを覚えている。しかし、ふたを開けてみれば、一日平均1万人の入場者数は、日本の国技館など本場所の会場規模からすれ ば“大入り”。「お客さんも入っていい巡業だった」(大島巡業部長・元大関旭国)と、日本相撲協会も喜んだ。これは日系企業の頑張りに加え、LAタイムズ にも掲載された、直前の熱心な広告活動も大きく貢献している。

“Thank for coming today. See you again.”横綱・朝青龍は最後に英語で挨拶した。「相撲はおもしろい」—そんな評判もこれでLAに伝わるだろう。日本相撲協会も海外での巡業に本腰 だ。だからこそ次のLA巡業ではもっと日系コミュニティの熱狂がほしい。ずっと昔はリトル東京にだって、土俵があったくらい、日系人は相撲が大好きだった のだ。今回の日系コミュニティのおとなしさは、LAの日本人町の衰退と全く関連がないわけではない。

© 2008 Yumiko Hashimoto

執筆者について

兵庫県神戸市生まれ、97年よりロサンゼルス在住。日系コミュニティ紙に編集者としての勤務していたが、近年はフリーランスライターとしてローカル情報を 中心に記事を執筆。日本にいたころは、第二次世界大戦時の強制収容所はおろか、“日系人”という言葉さえ、耳にすることもなかった。「日系人の存在を少し でも身近に考えてもらえれば」。その思いで「ディスカバー・ニッケイ」のサイトに寄稿している。

(2008年10月 更新)

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