日本のおふくろの味といえば芋の煮っころがしとかお煮染めが想像されるかもしれないが、家ではまるで違っていた。朝食の懐かしい味といえばオートミールだ。
私が育った頃はまだ外国製品のことを舶来品と呼び、輸入食品はデパートや特定のお店に行かないと入手できなかった。しかし、舶来品好きの母は私と弟をアメリカ製の離乳食で育てた。そんなわけで、朝食もチーズトーストにミルク、スクランブルエッグとハムまたはベーコン、そしてオートミールだった。固めに作ったオートミールにミルクとバターと砂糖をかけてゆっくりかき混ぜると芳醇な香りが食欲を誘う。ケロッグのコーンフレークもあったが、オートミールのおいしさにはかなわなかった。
学校給食がなかったので毎日お弁当を持って行ったが、そのおかずはランチョンミートやコンビーフ、ソーセージ、ハム入りの卵焼きなど。でも、ごはんのまん中には梅干しがあり、大好きだったのでいつも最後に食べた。たまにお弁当がサンドウィッチだと、ごはんを食べている同級生がうらやましかった。
晩ご飯は白米という基本パターンは守っていたが、おかずはやはりコロッケやカツ、オムレツという大正時代から人気の西洋料理が多かった。しかもおみおつけ(味噌汁)ではなくコーンスープなどと一緒に食べることもしばしばあった。食後に必ず、ごはん茶碗か別の茶碗で番茶を一杯飲むのは日本的習慣だった。
たまに祖母の家に行くと、母が…