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日系人と名前

日系人の名前 「スジロ」?!

ブラジルの著名なマンガ家ズィラルド(Ziraldo)の作品『マルキーニョ少年』(Menimo Maluquinho)に登場する仲間の一人に、スジロ(Sugiro)という日系人がいる。イチロやスシロならばまだしも、スジロなどという名前はどう考えても変だ。日系人や日本人の名前としてはおかしいとずいぶん前から感じていた。そしてある日、一挙にその謎が解けた。これはピアーダ(ブラジル風ジョーク)から生まれた名前だったのである。この話は、ブラジルにおいて日系人がどのように捉えられているかを知る上でも興味深い。

スジロは主人公マルキーニョ少年の近所の子で、日本人の子孫という設定である。日系人の大半がそう思われているように、従順でおとなしく勉強熱心。一番熱中しているのは、コンピューターだという。インターネットに浸りきりで、母親は彼を部屋から外へと引っ張りだしたい。しかしスジロを屋外へといざなえるのは唯一マルキーニョだけだ、との説明がサイトにある。そしてスジロの語源となった「あるブラジル名」と題するピアーダ(ジョーク)は、以下のとおりである。

“Um nome brasileiro” 

Mal o japonês chegou ao Brasil, sua esposa já ia ter nenê. Como ele queria prestar uma homenagem a terra que tão bem o acolhera, resolveu dar um nome brasileiro ao filho.

Pediu uma sugestão para um amigo que lhe disse:

- Sugiro Alberto, Ronaldo, Carlos, Antônio...

E o zapon, todo satisfeito:

-Ótimo nome! Ótimo nome! 
 Nome garoto ser Sugiro, no?

「あるブラジル名」

日本人がブラジルに到着するや否や、奥さんは早速赤ん坊が生まれることになった。彼は自分をたいへんよくもてなしてくれた国に敬意を表したかったので、生まれてくる子どもにブラジル人の名前を付けることにした。そこで、ある友人に名前を提案してくれるように頼んだところ、次のような返事だった。

-アルベルト、ホナルド、カルロス、アントニオ・・・はどうかな。

〔*Sujiroスジロは「はどうかな」にあたり、「提案します」の意味〕

それを聞いたザポン〔*ジャポン(日本[人]のこと〕は、すっかり満足して、こう言った。

-とてもいい名前だ。最高の名前だ。
 子どもの名前、スジロね。

〔この最後の一行は、単語の羅列で文法的にはデタラメとなっている。〕(筆者訳)

日本語に訳すと原語での面白みが削がれてしまうが、ポルトガル語をよく理解していない日本人が、Sugiroという言葉(動詞)を名前と勘違いしてしまう、という内容である。ポイントはいくつかあるが、要点としては、新来日本人がポルトガル語の文法や発音がよく分からないために、からかわれているのだ。だから本来ならば絶対あり得ない言葉が名前として採用されてしまった、というエスニックジョークである。その象徴がスジロという名前なのだ。ブラジルではポルトガル人に対するこの種のジョークが多い。何とも滑稽な、当事者にはありがたくないエピソードであるが、こうしたからかいや遊びがブラジル人にとっては、親密さを表わし、また深める要因の一つともなっている。多くの日系人はこのピアーダを聞いて、苦笑いしながらも、いっしょに笑い飛ばすだろう。


登録された名前

しかしひょっとすると、スジロという日系人は存在するかもしれない。知人の日系ブラジル人に、二世の岡林先生と三世のイシ先生がいらっしゃる。その岡林先生の名刺にはアルファベットでOkabayaskiと表記されている。どうやらご先祖が移民としてブラジルにいらした際、名前を登録する時に誤ってそのように記載されてしまったらしい。アルファベットだけ見ていると、東欧系の方かと推測してしまいそうだ。イシ先生の場合も、本来は石井であったものが、Ishiと登録されたと伺った。そうした例は日本人移民にかぎらず、少なからずあるようだ。

外国人の名前は音を正しく聞き取ることが難しい上に、それをどう表記するかは一度や二度聞いただけでは至難の業だ。ブラジルの元大統領クビチェックをKubitschekとすぐに書ける人は、ブラジル人といえども数少ないだろう。私の名前「茂(しげる)」もそうだ。パスポートにはアルファベットでSHIGERUと表記されている。しかしこれをポルトガル語読みすると、シジェルと呼ばれてしまう。シゲルと読んでもらうためには、SHIGUERUとUをGEのあいだに入れなければならない。しかしその場合も、今度はシゲールと発音されてしまったり、chiqueiro (シケイロ、豚小屋)と間違われたりする。もしchiqueiroと登録されてしまったら、一生笑いの種となり、まるでポルトガル人のピアーダだ。

こうした音の一致から、日本人の名前を弄んでブラジル人からジョークを浴びせられることがある。テニスのサーブが下手だと「坂森さん」(saca mole、サッカ・モーリ〔サーブが弱いこと〕)と呼ばれ、お前は日本人だから「魚」(sacana、サカーナ〔放蕩〕)や「菊」(Que cu、キク―〔cuは卑語で肛門をさす〕)が好きだろうという具合である。


名前の使い分け

日本語名は時と場合により、揶揄されたり差別を受けるきっかけともなり得る。しかし南米の場合には、ファーストネームとラストネームのあいだにセカンドネーム(通常は洗礼名)あるいはまた、サードネームがあり、緩衝材の役目を果たしている。例えば日系パラグアイ人Wilson Shuji Onishi Hoshikawaさんの場合、ラストネームは母方の姓で「星川」、サードネームは父方の姓「大西」、ファーストネームは現地語名「ウィルソン」でセカンドネームは日本語名「秀次」となっている。ブラジルではサードネームに母方の姓、ラストネームに父方の姓となることが多いが、このパターンが一般的である。しかしこれはあくまで登録上のフルネームで、実生活ではウィルソン・ホシカワのように2語で通すことが多いようだ。そして日系人は、家庭や日系社会内ではウィルソンよりも秀次を使うといった使い分けがよく行われる。もちろん、日本名しか付けない場合や、二つないし三つということもあり、ケースバイケースだ。


日系人の名前を日本語で表す

日系人の名前を日本語でどのように表記するかは、かなりまちまちである。本人がどう表記するかはさておき、北米の日本語新聞、例えば「バンクーバー新報」や「北米報知」などでは、日系人の名前は一世など日本国籍保有者であれば日本と同じ表記、現地国籍であればカタカナ書きで現地語の読み方に従い、ファーストネーム・ラストネームの順番で表記することが多い。例えば、ダニエル・イノウエ、ジョージ・タケイといった具合だ。ところが南米の場合、例えば「ニッケイ新聞」や「サンパウロ新聞」は、一定していないが、二世や三世でも日本式に姓名の順で姓は基本的に漢字で表記していることが多い。例えば、高木ラウル、大竹ルイなど。これはなぜだろうか。二世や三世も日本人であるという意識が記事を書く側に無意識に働いているからではないかと推測する。一定していないことから、新聞社の方針ではなく、記者の個人的な意識によるものなのだろう。いずれにせよ、そこに書き手の思いが反映されていることは間違いない。


埋もれる日本語名

最近二人の日系人を「発見」した。一人は在日ブラジル総領事館に勤めるマルシ・コスタ(Marcy Costa)さん。話を聞いてみると日系人だという。名刺をいただくとマルシ・タガワ・オリベイラ・コスタ(Marcy Tagawa Oliveira Costa)と書かれている。そう言われてみれば、確かに日系人の面影が感じられる。マルシさんの場合、タガワは母方、オリベイラは父方、コスタは夫の姓とのこと。もう一人はネットで見つけたナタシャ・アレグリ(Natasha Allegri)さん。コミック・ブック・アーティストで、名前に日本名はないが母親は沖縄にルーツをもち、日系ボリビア人だ。日系人の名前に日本人の姓や名が消える時代となり、外見はもとより名前からも日系人かどうかを判断できない時代となった。名前が埋もれていくことは寂しい感じがすると同時に、日系人は新たな時代に入ったと強く感じる。

Praça Hayao Washida (鷲田隼雄広場)。クリチバ、ブラジル。鷲田隼雄は南パラナ初期移民の一人で、クリチバ日系社会に大きな貢献を果たした。

 

© 2018 Kojima Shigeru

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