第十六話 サンパウロ発 18:59
グアルーリョス空港は大きな荷物を持った人で混雑している。今は、バカンスシーズンの真っ最中で、ブラジル人はますます海外旅行をするようになっている。
「今年の日本はとても寒いと聞いているから、あかりもおまえも風邪をひかないようになあ。元気でなあ。着いたら連絡するんだよ」と、祖母は心配そうに別れを述べた。
「大丈夫、おばあちゃん。ちゃんとあかりの面倒を見るし、わたしは頑張るから!おばあちゃんも、元気でね」
3年前、ちょうどこの時期にマユミは、突然、ブラジルに戻って来た。出迎えに来てくれたのは祖母だけだった。
祖母はマユミが幼い子どもを連れて戻って来るとは夢にも思っていなかった。何度か電話で話したことはあったが、マ…