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対談: 「日本」を見つめる日系人と日本人留学生 ~後編

対談に臨んだ鈴木さん、オカモトさん、近藤さん(左から)

米国で育ち、教育を受けた日系人と、日本教育で育ち、米国でカルチャーショックを受けた日本人留学生。彼らの共通の関心事、「日本」に関する意見交換、座談会を企画した。前回からの続き。

日本の世界における影響力についてどう思いますか?

ジョン・オカモトさん

ジョン・オカモト(以下オカモト):日本は長い停滞期を経て、現在は「ほの暗い」状態なのではないでしょうか。日本は新しい世界における自身の場所をまだ探し続けているように思えます。

過去10年で、首相が何度も変わりました。世界は製造業の経済から情報技術の世界へと変化しました。多くの組織が、知力が求められるこの時代で自分たちの強みを探してきました。

どんな国でも転換することは容易ではありません。しかし、日本はまだまだ世界で大きな経済力を持っており、また有能な技術者、技術力を生かすことができます。日本の人々は、中国の経済成長と比べて、日本が力を失ったことに落胆しています。中国は国のサイズ、天然資源共にとても大きいのです。そこまで落胆することはないと思います。日本は素晴らしい国です。

近藤康介さん  

近藤康介(以下近藤):日本はまだまだ素晴らしい国だと思います。しかし、もし私たちが考えと行動を変えることができなかった場合、下降していくでしょう。素晴らしい国だと言えなくなってしまう。私たちは日本の未来を考えるべきです。日本の未来を思うと心配ですが、落胆はしていません。

日本は今まで2度の奇跡を起こしました。1回目は明治維新。2回目は第二次世界大戦後。西洋文化とシステムを取り入れ、自身を新しく作り直し、成長してきました。日本は素晴らしい精神を持っているのです。近い将来大きな壁にぶち当たるでしょう。しかし私たちは必ず乗り越えられると信じています。

オカモト:私は日本にとって前向きな側面を見ました。東日本大震災で原子力発電の件で若い人たちがより厳しい質問をしていたのです。若い世代が、何かを変えたいと望んでいるのです。5年、10年前、私は今よりも日本について心配していました。

日本人、日本は影響力を向上させるために何を変えるべきだと思いますか?

オカモト:あなたたちが今、行っていることです。外国で学ぶと、他文化、考え方、問い方を学ぶことを強いられる。そして、自身の文化の良さを知り、考える方法、成長する方法、質問することの大切さを学び、それぞれの国に持ち帰る。若い人たちが世界で影響力を向上させるためにどうしたらいいかと質問する、このような対談の場もそのひとつです。今までこのような対談を何度行ったか思い出せないほどです。

鈴木俊也さん

鈴木俊也(以下鈴木):日系人の視点から日本の若い世代に向けて何か伝えたいことはありますか?

オカモト:昔から日本が持つ家族やコミュニティー、勤労、教育等といった価値観を大切にすることです。あなたを個人的にまた社会の一員として、あなたの役割をサポートしてくれるでしょう。

鈴木:米国人の友達から、「米国は日本に比べて建国してからの歴史が浅く、その点日本は羨ましい」と言われたことがあります。米国の史実に残っている歴史は短いですが、日本は2千年以上の歴史から成る確固としたアイデンティティーがあるはずで、これは私たちの強みにすべきです。しかし、外国人と関わる機会が少ないため、日本人はそのことに気付いていません。日本は海に囲まれ、他国から守られてきた。(自分たちを知るために)日本人はもっと異文化を感じ、他国の人から刺激を受けるべきだと考えています。


日本の教育システムについてどう思いますか?

オカモト:とても構造的な教育システムだと思います。事実を教えることに長けているように見えます。しかし、大学等に入学することが容易でないことは問題でしょう。また、大学で「クリティカル・シンキング(批評的思考)」と起業家精神を育てることを重要視する必要があると思います。

鈴木:起業家精神を教えるクラスは私たちの大学にはほとんどありません。とても必要な教育だと思います。また、それらを教える教師の数が十分でないことも問題でしょう。

クリティカル・シンキングのスキルを多くが持つことで、日本はどのように変わりますか?

オカモト:もっと多くの人が政治問題の解決策について議論をするでしょう。ビジネス環境では、問題を解決する新しいアイデアがより多く生まれるでしょう。現状に対してより挑戦的に関わっていこうという姿勢に変わると思います。

近藤:近年、多くの日本人は政治と経済の問題に無関心です。問題が何かを考える人たちが足りないのです。日本の人々が問題を見つけられるよう、クリティカル・シンキングはとても重要だと思います。


あなたにとっての「日本」とは何ですか?

オカモト:私のルーツで、家族の歴史であり、大切な場所です。

近藤:この問いを聞かれたのは初めてです。日本は私の家族のようで大切なものです。

鈴木:なんと答えればよいか非常に難しいです。私は日本で生まれ育ち、今は初めて外国で長期滞在をしています。日本は間違いなく自身のアイデンティティーであると改めて思っています。


今後、日本とどのように関わっていきたいですか?

オカモト:ちょうど1月に由布院からの客人迎えて、日本を近くに感じ、日本に対して何かしたいと思いました。また、先日(衆議院議員の)河野太郎氏がシアトルに来られた際も、ブランチをご一緒しました。

2010年に日系アメリカ人リーダーシップ使節団に参加してから、日本を身近に感じますし、築いた関係を新鮮に保つことを心がけています。2、3月は社会貢献型起業家を目指す若者たちを指導する予定です。


【対談者プロフィール】

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ジョン・オカモト
日系三世。シアトル市特別企画顧問。ワシントン大学行政学修士号。シアトル市役所、ワシントン州運輸局、シアトル港湾局、ワシントン州教師会などで要職を歴任。シアトル港湾局時代は年に2回は日本を訪問。2010年に日系人リーダーシップ使節団に参加。

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近藤康介
6年以上働いた日本の商社を退職後、2014年3月シアトルに留学。ワシントン大学で英語とビジネスを学ぶサーティフィケートクラスを受講し、同年6月に同じ留学プログラムの日本人学生と共にシアトルと日本を結ぶ学生団体「Arch for Startup」を立ち上げる。

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鈴木俊也
東京大学大学院土木工学専攻。大学院を休学して2014年3月シアトルに留学。ワシントン大学で英語とビジネスを学ぶサーティフィケートクラスを受講、2014年6月に同じ留学プログラムの日本人学生と共にArch for Startupを立ち上げる。

 

* 本稿は、2015年3月5日『北米報知』(Vol. 70, issue 11)からの転載になります。

 

© 2015 The North American Post

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