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The Nikkei of Latin America and Latino Nikkei

在日ペルー人とブラジル人の違いとその共通点

南米からの出稼ぎ日系就労者が来日してから四半世紀になるが、受入れ国である日本にとっては、出稼ぎ日系就労者は「南米」出身であり、その出身国による違いや支援策に対する反応の違いが意識されることはあまりなかった。南米最大の日系コミュニティーはポルトガル語を話すブラジルで(140万人)、2008年のリーマンショック以前は、日本在住の日系ブラジル人は31万人を数えた。他方、南米スペイン語圏を代表するペルー人は、日本に約6万人、本国に9万人だった。それが2013年12月末現在、在日ブラジル人が18万人、在日ペルー人が4万8千人である。2009年から5年間で在日ブラジル人が13万人(40%強)、ペルー人が1万2千人(20%弱)減少している。

南米地図—ブラジルとペルーの経済的規模の違い(ブラジルの国内総生産はペルーの10倍で日本の約半分にも及ぶ。一人当たりの平均所得もペルーの倍で、進出している日系企業数も13倍である)。 

経済危機直後に日本政府は就労支援策や帰国支援事業(帰国渡航費の支給)を実施したが1、在日ペルー人とブラジル人の反応は異なった。平均120時間の日本語講座である就労準備研修では、比率からみても当初からペルー人の参加が多く、今後も日本で生活を続けるという、彼らの強い意思が感じられた。また渡航費助成事業に参加したのは1万9,000人がプラジル人で、ペルー人や他の国籍を含めても1,000人程度だった。 

両者間の差異については、慶応義塾大学の柳田利夫教授が詳細な分析をしており、その論文に委ねるが2、私もこれまで両者間の違いを機会がある度に自治体行政やNPO法人、そして日本政府当局に伝えてきた。多くの日系就労者支援はブラジル人を前堤に展開されているが、同じ南米の外国人であっても、すべての政策で同じような効果を期待することはあり得ないのである。また現場レベルではある程度メリハリのある対応が求められ、両者間の国民性や考え方、支援策の捉え方などにも配慮する必要がある。

90年代の前半は、ペルー人に関しては偽造日系人問題や比較的高い犯罪率(主に窃盗)が話題になったが、ここ10年はブラジル人と比較しても犯罪件数も減り、地域住民としての社会統合状況や子弟の義務教育履行率もかなり向上している。逆にブラジル人子弟の不就学率や青少年非行率は、人口比率からみてもペルー人より高い3。高校卒業率は両者とも50%台であるが、近年大学や専門学校に進学している子弟は両者とも幸いに少しずつ増えている。

柳田が指摘している通り、ペルー人もブラジル人もその多くが関東や東海地方に居住しているが、ペルー人の場合一つの団地や地区に極端に集住している様子が伺えない。その結果、地元住民との摩擦や排他的な関係があまり生じていないのが特徴である。神奈川県の平塚や愛川町では一部の団地にかなりのペルー人が集住しているが、当初ゴミの出し方や非行問題で近隣との摩擦が絶えず、地区によっては、保育園または幼稚園に通園する外国人児童の数が日本人より圧倒的に多いと日本人保護者からクレームが相次いだが、それらは話し合いですべて解決している。また、90年代後半、愛川町で窃盗団による盗品売買の問題が発生したが、ペルー人コミュニティー内では「盗品ストップキャンペーン」を実施し、警察の取り締まりの甲斐もあって犯罪拡大を防くことができたのである。それ以来、これらの町では大きな問題はなく、地元住民との共存も比較的スムーズであり、ここ10年前ぐらいから積極的に町の祭りや行事にも参加している。群馬県や栃木県、埼玉県北部でも同様であり、ペルー人は複数の自治体に分散して集住しているため一部の地域だけにエスニック雑貨店やペルー料理レストランはあるが、ブラジル人が多い群馬県大泉町のような「ブラジル人街」という現象はみられない。数の上でそれは無理なのかもしれない。

里帰りについて再入国データを検証してみると、思ったほど本国に帰っていないことが分かる。当時アメリカの大学から東北大に出向していた竹中歩准教授の下で、神奈川や東京などのペルー人50世帯を対象にヒヤリングが行われた。それによると、しっかりした生活戦略をもち、子弟の教育や日本語学習に熱心な世帯ほど、20年の間一度もまたは一回しか帰っていないというケースが半数を占めていた(これはあくまでこのサンプルの結果であり、現在そのデータは分析中)。マイホームの購入や自動車ローン、子どもの教育費などが影響しているが、本心は経済的に活気だっている今のペルーに里帰りし、子どもにもそれを見せたいと回答している。ペルー人の定住指向は、永住権取得率でも明らかであり、90年代の後半には半分近くがその在留資格を有していた(ブラジル人の場合は3割未満だった)。

明確な生活戦略がなくとも、ペルー人は本国に帰っても雇用や商業活動に関してはかなり厳しい状況が待っていると認識しており、ブラジル人よりもっと現実的な路線を歩んでいるように思われる。祖国に対する意識の違いもある。いくらペルーが経済的に発展しても、そう簡単に以前から存在する格差や社会的不平等は是正されないと理解している証なのかもしれない。それでも一部の在日ペルー人は自身の貯金を有効に活用して、リマ市内で複数の物件を購入4、帰国者の中には小規模ながらビジネスで成功しているケースも多数報告されている5。ペルー政府も他の移民送出し国と同様、海外在住同胞の家族への送金だけではなく自国社会に対する最も具体的な投資や技術的かつ専門的ノウハウの提供、移住先との文化的及び国際交流的なパイプ役等で貢献してほしいと期待し、数年前に「海外同胞帰国支援法」を制定した6。在日ペルー人の場合は、リマの日系共済組合等を通じて不動産投資をしているが、次第に移民二世である在日ペルー人子弟の一部が日本で高等教育を受けるようになったことで、今後はこうした人的資源をもっと戦略的に活用する時代になるであろう。

これはブラジル人や他の南米諸国出身者の子弟にとっても大きなチャンスであり、持ち分の文化的多様性や言語力をどのように活用するかである。この挑戦は共通の目標であり、それによって、彼らに対する日本社会での認知度と評価は高まるに違いない。ブラジルもペルーも日本にとって重要な資源供給国であるが、今後は市場及び投資先にもなるからだ。

同じ日系人でも、当然その出身国の歴史、文化、言語、社会構造、政治情勢等が大きく影響し、その特徴が日本でも何らかの形で表現されている。来日の経緯が「デカセギ」であっても、ペルーの場合は経済的な要因にテロや治安悪化という要素が加わり切羽詰まった状況で日本にやってきた。また、一部の日系人には、政治不安と恐怖が脳裏に深く刻まれており、本国が経済的に多少よくなっても社会構造や政治の仕組みはそう簡単に変わらないという、従来の不信感は未だにある。楽観視できない事情が日本に留まらせたのかもしれないし、本国に戻ってもまたゼロからやり直し、教育制度に不備が多いところで子どもたちを教育することにためらいがあったのも事実である。

他方ブラジルは、中南米の大国としてその規模や期待感は非常に高く、在日ブラジル人はその存在を誇らしげにアピールし、常にその懐に戻れるという「幻想」を抱いているのかもしれない。しかし、実態はもっと複雑で、経済成長とともに物価上昇への対応と高い競争率が要求され、本国に戻っても自身の社会に再適応することは容易ではない。

いずれにしても両者間に違いがあって当然であり、もっと重要なのは、そうした彼たちの特徴がこの日本でもっと「文化的資源」として活用されれば、この社会でのやりがいや希望がさらに高まり、日本はもっと魅力的になるに違いないということである。

注釈:

1. 「日系人の帰国支援事業による帰国を考察」2010年6月
  http://www.discovernikkei.org/ja/journal/2010/6/16/nikkei-latino/ 
  http://sv2.jice.org/jigyou/tabunka_gaiyo.htm JICE実施の就労準備研修の概要

2. 柳田利夫、「第6章:在日ペルー人の生活戦略 — 在日ブラジル人との比較を通じて」、233頁〜263頁、三田千代子編『グローバル化の中で生きるとは〜日系人ブラジル人のトランスナショナルな暮らし』、上智大学出版、2011年

3. 「来日外国人の犯罪データを検証」
  http://www.discovernikkei.org/en/journal/2013/7/5/delitos-de-extranjeros/ 

ブラジル人子弟の不就学率は改善しつつあるが、それでも地区によっては3~4割に及んでいるようだ。ペルー人にもドロップアウトのケースはあり、結局未就学になっている児童や生徒はいるようだが、1割程度という試算もある。参考論文:イシカワエウニセ「第4章:家族は子どもの教育にどうかかわるか〜出稼ぎ型ライフスタイルと親の悩み」77頁〜96頁、2005年、山脇千賀子「第5章:日本の学校とエスニック学校〜はざまにおかれた子どもたち」97頁〜115頁、同年、宮島喬/太田晴雄編『外国人の子どもと日本の教育〜不就学問題と多文化共生の課題』、東京大学出版会、2005年。

4. 日本にあるKyodai Remittance (http://kyodairemittance.com/es/ ) という送金会社を通じて現地の日系共済組合Cooperativa Pacífico(http://www.cp.com.pe)で海外在住者預貯金口座を開設し、その貯金をもとに住宅ローンを設定することもできれば、一括で不動産購入のあっ旋も可能である。日本在住の組合員向けの預貯金商品の案内:
  http://cp.com.pe/fileadmin/img/japon/Link_Web_PaciFijo/Link_Web.jpg

5. 日本で発行しているコミュニティー月刊誌「Mercado Latino」では、毎回帰国したペルー人のビジネス事例が紹介されている。飲食店が多く、日本で得たノウハウやマネジメント手法を導入している。
  http://www.mercadolatino.jp

6. 山脇千賀子、「第4章:在外ペルー人が問いかけるもの—グローバル化のなかのナショナル・アイデンティティの行方」、136頁〜163頁、駒井洋監修『ラテンアメリカン・ディアスポラ』、明石書店、2010年
  海外同胞の帰国支援法(税制優遇措置):http://leydelretorno.rree.gob.pe
  http://www2.produce.gob.pe/produce/migrante/index.php

 

© 2014 Alberto J. Matsumoto

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About this series

Lic. Alberto Matsumoto examines the many different aspects of the Nikkei in Japan, from migration politics regarding the labor market for immigrants to acculturation with Japanese language and customs by way of primary and higher education.  He analyzes the internal experiences of Latino Nikkei in their country of origin, including their identity and personal, cultural, and social coexistence in the changing context of globalization.