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https://www.discovernikkei.org/en/journal/2014/8/20/ayamaru-hitobito/

「謝る人々」から学べること

加州農業経営者友愛団体の「良心」

先日、インターネットで羅府新報を読んでいたところ、大変興味深い記事を見つけました。

California Grange Apologizes for Anti-JA Prejudice
(邦訳(意訳)「加州農業経営者友愛団体、過去の日系人への反日的行為に謝罪」)

記事によると、加州農業経営者友愛団体(California State Grande)が、過去の活動などを通して行われた日系人への差別的行為に対して、市民協会(JACL)の会長であるデイヴィッド・リン氏(David Lin)に書簡を送る形で、謝罪の気持ちを伝えたとのことです。

州都、サクラメント(桜都)に本部を置く加州農業経営者友愛団体の会長、ボブ・マックファーランド氏(Bob McFarland)は書簡の冒頭、次のように記しています。

「日系人社会の皆様へ。加州農業経営者友愛団体のすべての会員を代表して、私達の過去において、差別的行為など、誇ることのできない歴史があったことに、謝罪の気持ちを伝えたいと思います。」

冒頭のあいさつ文に続き、20世紀初頭より団体が率先してアメリカ社会において反日感情をあおったこと、日系人の権利を制限した数々の法案を成立させるためにロビー活動などを行ったこと、さらには日米戦争勃発直後は日系人を強制収容施設に送ることを支持したといった、過去の団体による「過ち」が綴られました。

そして、ここ最近になって、過去の差別的行為に真摯に向き合うべきという風潮が、団体の内部に見られるようになったことが綴られました。一昨年の2012年には、組織の幹部らによって、日系人社会に謝罪の気持ちを伝えることが決定されました。この決定には、幹部のひとりである日系人のタカシ・ヨギ(与儀)氏(Takashi Yogi)の存在や、地元サクラメントのコミュニティ・カレッジで教鞭を執っていた、サンディ・リンドン氏(Sandy Lyndon)の存在がありました。

マックファーランド会長は書簡の中で、次のようなことも記しました。

「加州農業経営者友愛団体は、過去の日系人への差別的行為を謝罪し、市民協会を通して謝罪の気持ちを伝えます。さらには、私達の組織においては今後、人種、宗教、政治的信条、さらには、性的指向を理由に差別的行為が行われることがないことを約束します。」

記事を読み終えたとき、私は非常に嬉しく、すがすがしい気分になったと同時に、アメリカ社会の「良心」を再認識しました。

アメリカ社会は民族や宗教、さらには性的指向に関連した、さまざまな社会問題をかかえていますが、人々の心の隅っこには常に、真摯さや冷静さというものがあると思います。それこそが、アメリカ人の「良心」ではないかと思わされるときがあります。

日本社会で「居直る」人々の存在

アメリカ人の「良心」を再び目の当たりにした私は、台湾系日本人という立場で、日本人にもアメリカ人のような「良心」があることを、強く信じています。

しかしながら、ここ最近の東アジアにおける歴史認識問題では、一方的に日本人の言い分を主張し、他者への思いやりといった、長年の歴史の中で培ってきた美徳を軽視する日本人が少なくないことに、極めて強い問題意識をもつようになりました。

このような問題は以前より、多くの人々によって議論されてきました。2004年、イギリス生まれの歴史研究者、テッサ・モリス‐スズキ氏(Tessa Morris-Suzuki)が『過去は死なない―メディア・記憶・歴史』を発表し、歴史問題への真摯さの重要性を論じたところ、日本社会では彼女の意見を支持する多くの声と同時に、彼女の主張が日本人を貶めるものであるという一方的な「誤解」が、インターネット経由で広まりました。

日本人が過去の歴史―とりわけ、先の戦争における日本人による数々の戦争犯罪―に対して真摯な態度をとることが賢明であるというのが彼女の主張であって、それは決して日本人を貶めるものではありません。むしろ、過去に対して真摯であることは、日本人の品位を高めることになると思います。そのことを理解できなかった日本人が少なくなかったことは、日本人の歴史を一生懸命学び、日本人のアイデンティティを背負っていることを重要視する立場として、非常に悲しいことです。

また、元産経新聞記者で、在英ジャーナリストの木村正人氏(Masato Kimura)は自身のブログ、『木村正人のロンドンでつぶやいたろう』の中で、この問題に関する記事(「戦争の真実と和解」)を発表しましたが、過去の歴史認識の問題にたいして「居直り」の態度をとるのではなく、ひとりでも多くの当事者との対話を通して、お互いの立場を理解しあうことの大切さを強調しました。その過程において、謝罪をする場面があることは容易に予想できることですが、それは日本人を貶めるための行為ではなく、日本人の「良心」をアピールする行為であることを、私はひとりでも多くの日本人に伝えたいです。

羅府新報の報道した加州農業経営者友愛団体の「良心」は、現代社会を活きる日本人に対する、良きアドバイスであると思います。

 

© 2014 Takamichi Go

California discrimination interpersonal relations United States
About the Author

He studied American social history and Asian-Ocean American society, including the history of Japanese American society, at Orange Coast College, California State University, Fullerton, and Yokohama City University. Currently, while belonging to several academic societies, he continues to conduct his own research on the history of Japanese American society, particularly in order to "connect" Japanese American society with Japanese society. From his unique position as a Japanese person with "connections" to foreign countries, he also sounds the alarm about the inward-looking and even xenophobic trends in current Japanese society, and actively expresses his opinions about multicultural coexistence in Japanese society.

(Updated December 2016)

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