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The Nikkei of Latin America and Latino Nikkei

移民労働の受入れ議論が再燃

2014年現在、この日本で30年前と同様に一部の業界で発生している人手不足を理由に、外国人労働者の受入れ議論が展開されている。2020年の五輪開催に必要なインフラ建設、既存のインフラ補修、東日本の震災後の復興事業、新規交通網のインフラ整備等、老朽した住宅や公共施設の解体や耐震補強等、ほとんどが建設関連の事業であり、かなり深刻な人手不足である。90年代初期のバブル崩壊後、建設業界は大きな影響を受け公共事業も大幅に削減されたため、建設会社の数も半分以下になり、多くの従業員が転職を余儀なくされた結果、若い技能労働者もあまり育っていないという。この15年間で180万人がこの業界を離れ、就業者の3分の1は50歳以上である。

建設現場で労働者不足

こうした中、景気回復や上記の事業によるニーズで労働者が足りない状況になっており、同じようなことが外食産業、小売業、運輸、介護にも及んでいる。その結果、パートやアルバイトという非正規雇用でも深夜や休日労働には人が足りない状態が深刻化している。一部の企業は、人材確保と労働条件向上を目指して正社員化を進めている。

今年の3月頃、少子高齢化対策も念頭に、毎年20万人の外国人労働者を受入れる案を政府が本格的に検討していると報道された1。経済財政諮問会議の専門調査会がこの議論を進めており、これだけの労働者を受入れることはこれまで厳しく規制されてきた単純労働者も認めるという大きな方針変更も伴う2

また、現在の「技能実習制度3」を更に緩和し、途上国や新興国からもっと積極的に労働者を受入れ、在留期間も最大6年に拡大することが検討されている(2015年から開始した場合、2020年の五輪までの労働者ニーズを補えるからだ)。平行して、「特定活動」というビザも緩和して必要な労働力を海外から調達することが模索されているようだ。

このテーマに関しては、どの新聞も雑誌も取り上げており、多くの書物も刊行または再発行されている。しかしながら、ほとんどが両極端の立場からであり、建設的かつ現実的で冷静な議論は少ない。

反対派は、多くの移民は日本固有の文化や習慣、社会構造に、当然、悪影響を与え、治安悪化や社会保障費負担増につながるだけでなく、大量の労働力はその業界の賃金値崩れを招き日本人失業者を増加させると指摘している。

一方、賛成派は、移民は多様性を豊かにし、少子化にも歯止めをかけ、税や社会保障歳入が増え、生産性が低いサービス部門は改善され、高度人材の間では健全な競争が拡大していくという、プラス面を強調している。

私も、南米の日系就労者にここ20数年関わってきたが、そう単純に「移民イエス・ノー」といえる課題ではないと思っている。しかし、日本の行政と社会には外国人労働者受入れサポートの体制がかなり整っていることも事実である。その蓄積されたノウハウを活用すれば緊急性の高い建設労働等については、一定数内であれば受入れも可能である。ただ、そのために出身国もしくは来日直後3カ月の集中日本語講習(これには日本の習慣や仕組み等についても4)を義務づけ、各配属先では労働災害防止の観点から徹底した安全衛生訓練を受けなければならない(一定期間は通訳の配置も必要になるだろう)。しかしこうした施策と平行して、日本の若者や転職者が様々な職種に従事し、魅力を感じるような労働市場にしなくてはならないことも重要である。女性や高齢労働者の活用や、住みやすい社会の構築も大きな課題である。

(1) 今議論になっている外国人技能実習制度を拡大して建設労働を確保という案だが、現状の在留資格ではかなり無理があり、技能実習の名目のもと低賃金と長時間労働が助長されやすい。これまでの悲惨な事例がそれも物語っている。最大6年まで延長するというが、五輪後確実に帰国することを担保できるのか疑問である。受入れの業界組合はそこまで管理はできないし、国もそこまですべて監視することは非常に難しい。それにその間、外部との接触を完全に制限するならともかく、日本に定住または永住することを考える者も出てくるし、家族を呼び寄せたり日本で家庭を築いたりすることもあり得る。これを阻止することはできないし、欧州の事例でも多くの教訓がある。やはり、この種の労働は技能実習というのはあまりにも曖昧で責任逃れであり、具体的に「技能(建設、介護等)労働」としてその権利と義務を明確にすべきである。受入れる以上、恐れずに移住の可能性をも念頭におく必要がある。  

(2)人手不足だという業界は、ほぼすべてが過酷な労働環境で定着率も低く、生産性があまり高くない分野である。最近よく話題になる「ブラック企業」集団であり、使い捨て労働が横行して大卒が最も就職したがらない会社ばかりが名を連ねている。安易な移民労働の受入は、そうした企業のブラック的要素は改善されず、人材も育たず、更に競争率が低下する。特に日本のサービス産業の生産性はかなり低いし、低いからこそ低賃金・長時間労働であり(サービス残業も当たり前)、魅力的な職場とは言えない要素が多い。80年代の半ばから後半は、バブルも影響して製造業の人手不足がかなり大きな議論になり、結局文化摩擦や日本語の理解力の観点から無難とされた南米の日系人を受入れた。これが、建前上日本政府が認めていない「単純労働」と「移民」を受入れることになった最大のケーススタディーになったのである。かなり高い授業料を払うことになり、職がなくなればすぐに帰国するという思惑は完全に外れ、政府の諮問委員会にいる委員や専門家たちは、この四半世紀に残された教訓をもっと直視すべきである。  

(3)少子化対策の外国人の受入れについては、その前に日本がどのような社会を今後構築していきたいのかをもっと真剣に議論すべきである。穴埋め的な発想で外国からの移民を受入れることは、結局女性の労働市場やその就労環境は改善されないことを意味し、一定期間は出生率が上昇しても外国人も二世代目になると出産にはかなり慎重になることも立証された。高学歴の女性は、ほとんど今の日本の女性と変わらない行動をとる(晩婚化、高齢出産、低出産率)。人口1億2千万人という数字を前堤にしているようだが、様々な可能性を含めたもっと柔軟な政策転換を検討しなければ、今の社会保障や税制度、社会の安定は持続できなくなる。人口減少はまぎれもない事実だが、100年後日本が消滅してしまうという空論が前堤では建設的かつ現実的に前進できない。

限定的に外国の労働力を様々な分野で受入れることはどの業界でもプラスにすることはできる。しかし、そのためには日本にも相当の覚悟と意識改革が求められる。何パーセントという比率の問題ではなく、その実体数がどのように活かされ本国に戻っても日本で得た技能知識や経験が評価の対象になるかである。そして日本に残った場合は、当然移民として位置づけるとともに、日本の新たな「資産」にするという姿勢で望まなければならない5

南米の日系就労者は出稼ぎ労働であったが今はれっきとした移民である。2013年のナショナルデー式典(群 馬県伊勢崎市) 写真提供:Latin-a, Fabiola Oshiro

注釈:

1. 移民として受入れることを意味し、少子化への具体的な対応策である。このままだと20歳から74歳の人口が今の9千万人から100年後には2500万人になってしまうという試算で、毎年20万人入れれば7千万人ぐらいに抑えられるというのが根拠らしい。しかし、あまりにも非現実的である。

2. 1990年から本格的に受入れた南米の日系就労者は実際単純労働者であり、研修生や技能実習生もその特徴が強い。建前上受入れていないというが、実際労働市場には現在30万人ぐらいの外国人労働者が非熟練労働者として働いている。

3. 途上国や新興国の労働者を日本に一定期間受入れ技能を身につけることを目的としている。現在、滞在期間が最大3年であるがこれを延期し、雇用形態も緩和する予定のようである。

4. 厚労省の事業で、南米の日系就労者に2009年から実施している「就労準備研修」は120時間で構成され、その内容は技能実習生の労働にも十分に活用できる。http://sv2.jice.org/jigyou/tabunka_jisshi.htm

5. これはスムーズに永住権を認めることであり、義務と権利を履行してもらうためである。ただ、参政権等の権利行使については、やはり帰化を前堤にするべきだ。一部の国や地域の出身者に対しては、もっと慎重に審査すべきかも知れない。

© 2014 Alberto J. Matsumoto

dekasegi labor nikkei in japan

About this series

Lic. Alberto Matsumoto examines the many different aspects of the Nikkei in Japan, from migration politics regarding the labor market for immigrants to acculturation with Japanese language and customs by way of primary and higher education.  He analyzes the internal experiences of Latino Nikkei in their country of origin, including their identity and personal, cultural, and social coexistence in the changing context of globalization.