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「正義の闘い」を映像に―藤田キャロル文子さん その2

その1>>

藤田さんの「闘い」

藤田さんが、藤井整氏の生涯に強い興味を持つようになったきっかけのひとつは、彼女自身が、日系史のみならず、アジア太平洋系アメリカ人の歴史において、「重要な役割」を果たしたからです。そのような過程をへて彼女は、彼との「つながり」を意識するようになったとのことです。

彼女は藤井氏と同じく、南加大学を卒業しました。薬学博士(Doctor of Pharmacy)の学位を取得したのちに、加州大学付属ハーバー病院(UCLA Harbor Hospital)にて、薬剤師として活躍するようになりました。数年後、彼女は病院の薬剤部におけるスーパーヴァイザーのポジションを得ましたが、その後さらなる活躍の場を求めるため、薬剤部長(Pharmacist Director)への昇進を申請しました。

しかしながら、彼女の申請は正当な理由のないまま、却下されてしまいました。その当時、医療機関などにおける薬剤部長のような要職は、白人の男性によって占められており、藤田さんが薬剤部長への昇進に意欲をみせていることは、彼らにとっては悩みの種だったのです。

その最中、最悪の事態が彼女を襲いました。藤田さんは上司から暴行を受け、7ヶ月という長期にわたる休職を余儀なくされたのです。そこで、彼女はロサンゼルス郡人事委員会(Los Angeles County Civil Service Commission)に、この件に関する徹底的な調査を求めました。

いとこの橋村さんも、藤田さんの昇進実現のため経済的な支援を行った。写真は、2011年12月、藤田さんがいとこの橋村さんにLTRについて説明をしているところ。

一方、彼女の昇進を実現するために日系社会においては、「藤田さんを応援する会(Friends of Carole Fujita)」が結成されました。アイリーン・イノウエ‐ヒラノさん(Irene Inouye-Hirano)など、日系社会における指導者的立場をになう人々が、彼女の支援にまわりました。

そして1980年、ロサンゼルス郡人事委員会は加州大学付属ハーバー病院において、彼女にたいする人種差別と性差別が存在したことを認めました。その後、病院側は彼女の昇進の申請を受け入れ、彼女の昇進が決まりました。「薬剤部長、藤田キャロル文子」が誕生しました。こうして藤田さんは、日系人のみならず、アジア太平洋系アメリカ人、そして、アメリカ社会に生きる一般の女性たちに、雇用面における「門戸」を広げることに成功したのです。その後およそ20年にわたり、彼女は薬剤部長という「大役」を務めました。

藤田さんは2001年に薬剤師を引退し、その後はビル・ワタナベさん(Bill Wantanabe)らとともに、小東京歴史協会(Little Tokyo Historical Society)をたちあげました。そして、彼女にとっての「先輩」である、日系一世の医療従事者たちと、戦前の日本人病院の歴史にかんする調査をしたことで、藤井整氏の生涯に強い興味を覚えるようになりました。それからというもの、いつかは、彼の生涯を描いた映画を制作したいと考えるようになったといいます。

陳さん、山形県にて、2011年12月

制作費の問題に直面

私は昨秋、藤田さんと会ってから数日後に、LTRの制作監督を担当するジェフリー・ジー・陳さん(Jeffery Gee Chin 日本語では、“陳立文 ちん・たつふみ”)にも会いました。LTRは、彼にとってはデビュー作品とのことです。

わたしは、藤田さんの自宅でLTRの制作に必要な史料などに目を通してみたのですが、史料の中には、日本語のものもあったので、それらを英語に訳したりもしました。また、藤井整氏に関する書物―『羅府ぎぎゅう音頭―排日土地法を葬った藤井整の記録』(1983年、善本社刊)―の著者であり、加州毎日で記者を務めていた佐藤健一さんにも、日本でインタビューをしました。

藤田さん、佐藤先生の自宅にて、2011年12月

その後LTRの制作作業が始まり、現在も着々と進んでいます。作品の完成は2012年の春を見込んでいます。出演者は、主役である藤井整氏を日系のベテラン俳優クリス・タシマさんが演じています。彼にとっては、一世の役を演じることが、ひとつの大きな夢であったとのことです。タシマさんのほかに、ハワイ出身の女優ケイコ・アゲナさん、2010年の二世週日本祭女王ラニ・クメ・ニシヤマさん、そして日本の若手俳優である尾崎英二郎さんらが作品に出演しています。現在のところ、20~30分程度の、ナレーション形式のドキュメンタリー作品を目指しているそうですが、これが完成した後には、本格的な映画作品の制作を始めたいとのことでした。

ただ、動きだしたばかりのこのプロジェクト、現在、制作費の調達という大きな問題に直面しています。現在までに、撮影と編集の費用は調達できたのですが、その後の活動にかかる費用を工面することが、今の大きな課題だそうです。日系社会の歴史は一世紀以上も続いていますが、藤井整氏という人物がいなかったら、現在のような繁栄を築くことはできなかったでしょう。私は、LTRの制作にあたってできるだけの協力を藤田さんや陳さんに約束しました。この一文を日本から書いたのも、そのためです。一人でも多くの人々に、このドキュメンタリーの制作を支援していただきたいと思っています。関心のある方は、わたし、郷崇倫までご連絡ください。

日系一世の権利を打ち立てた、藤井整氏の生涯を描く映画制作への、皆様のご支援をお願いしています!
郷崇倫: tgo@jalivinglegacy.org

佐藤さんと藤田さん、山形県にて、2011年12月

© 2011 Takamichi Go

Carole Fumiko Fujita documentary Jeffrey Chin Little Tokyo Reporter Sei Fujii