荻野正蔵氏:日墨関係500年の記録を追って

荻野正蔵氏が執筆した『海を越えて500年』は、メキシコと日本の交流関係を記録したすばらしい著書である。440ページに及ぶこの作品は、16世紀に当時のメキシコがまだヌエバ・エスパーニャ副王領だったころに日本と初めて交流を持ったときからはじまり、1897年以降メキシコに到着した日本人移民のたくさんの人生物語や出来事が盛り込まれている。
初の移民団がメキシコに到着する11年前に、両国はすでに友好条約を締結していた。組織的に日本人移住が始まったのは、1897年である。荻野氏の著書では、二カ国間の交流記録だけではなく、1,000枚の写真と多数のイラストを用いてメキシコでの日本移住者の生活模様を紹介している。
荻野氏は1970年に早稲田大学を卒業し、その直後にメキシコへ移住した。徐々に日本人移民労働者の経緯や体験を知るようになり、彼らがどのようにメキシコ社会に溶け込んでいったのか、また各地にどのように定着したのかを自ら調べるようになった。素晴らしいジャーナリストとしてのセンスを持つ荻野氏は、東西南北にいる日本人をインタビューし、何百という証言を取った。
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