孤独な望郷 ~ フロリダ日系移民森上助次の手紙から
第38回 アメリカに来て70年、長い夢だった

南フロリダの大和コロニーの一員として渡米、コロニー解体後もひとり最後まで現地にとどまり生涯を終えた森上助次は、戦後、夫(助次の弟)をなくした義理の妹一家にあてて手紙を書きつづける。さまざまな病をかかえ、体調を崩しながらもアメリカに来てから70年目を迎えたことや、数えで90歳となったことに感慨を覚え、故郷を去って以来一度も会わず先に逝った父母や兄弟のことを思い涙ぐむ。その一方でこれまでの年月を振りかえり、「何もできなかった」、「長い夢にすぎなかった」と嘆息する。
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〈新しい家がどんどん建つ〉
1975年7月26日
玲さん(姪)、暫くご無沙汰した。私の気分は別に変らぬ。よかったり悪かったりだ。ゴタゴタもあり不機嫌になることもある。物価は肉類の外は少し下向きだ。衣類、家具は投げ売り同然で ...