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シアトル・宇和島屋物語 ~ The Uwajimaya Story

第1回 日本人のオアシスとして 

宇和島屋ビレッジ、2012年(写真:筆者撮影)

「ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」

石川啄木の有名なこの歌は、1908年東京へ出てきた啄木が、懐かしいふるさとの言葉を聴きに、東北から人びとが集まってくる上野駅へ足を運んだという、寂しい気持ちをあらわしている。

これをもじって、1980年代のニューヨークでは、在留日本人のなかで「ふるさとの 訛り懐かし エンパイアステートビル」とよく言われていたとかつてきいたことがある。当時のニューヨーク観光のシンボルでもあるエンパイアステートビルは、それほど多くの日本人観光客でにぎわっていたということだが、同時に日本語が恋しくなったらそこに行けばいいという意味もあったようだ。

日本国内ですら遠く離れれば、故郷への思いは募る。まして異国の地で暮らすとなれば、日本語は懐かしく響くだろう。すくなくともインターネットが普及するまでは、日本人がいなければ日本語を聴く機会はないという状況がふつうだったのではないか。

言葉と同じように、故郷の食べ物もまた郷愁を誘うものであり、日本を離れれば日本食ほど懐かしいものはなく、また「言葉」以上に生理的に日本食を求める気持ちも強くなる。その意味で、海外で日本食を手に入れられるところは、沙漠のオアシスのようなもの。そのオアシスの役割を担ってきたのが、日本の食材や食品を販売する店だ。

寿司やラーメンは世界中に広まり、豆腐などヘルシーな食材の魅力も伝わり、いまや日本食は世界中で知られるようになっている。販売する店も大小さまざま登場している。しかし、かつては現地で暮らす日本人コミュニティーのためだけの小さな店だった。


創業90周年を迎える老舗

アメリカで早くから日本人移民のコミュニティーが形成された太平洋岸のまちシアトル(ワシントン州)でも、こうした店はいくつも生まれた。そのなかで、長年その中心的な位置を占めてきたのが、「Uwajimaya」である。

アメリカの店だから、「Uwajimaya」 と表記されるが、これは「宇和島屋(うわじまや)」のローマ字表記で、宇和島という名は四国・愛媛県西南部の宇和島市に由来する。創業者で、日本からの移民一世である森口富士松が、若いころ宇和島で海産物の加工などをする店で修行していたことからこの名が使われた。

創業は1928(昭和3)年というから来年で創業90周年を迎える宇和島屋は、もちろんはじまりは家族経営の小さな店だった。が、いまやシアトル市内やその周辺で、その名を知らない人はいないほどの大スーパーマーケットとなり、日本食の食材や日本で作られた食品を取り揃えている。また、日本をはじめ東洋の食材がすっかりインターナショナルになっているなかで、単に日本のものやオリエンタルな食品を扱うスーパーとしてではなく、アメリカ人にとっては、ふつうのスーパーの一つとして利用されている。

シアトル市内のインターナショナル・ディストリクトという、かつて日本人移民で形成された日本町があった地域の一角に、現在の「Uwajimaya」はある。「Uwajimaya Village(宇和島屋ビレッジ)」と名付けられた建物の中核をなすのがスーパー「Uwajimaya」で、店舗内には食料品のほか日本の生活用品などもおかれ、フードコートも併設されている。このほか建物内には、紀伊国屋書店をはじめレストランなどいくつかのテナントが入り、建物の一部上階はアパートメントになっている。

周辺には日本食レストランや居酒屋などが点在するが、その多くはチャイニーズ・レストランなど中華的なものが目立つ。こうした地域にあって、「Uwajimaya」は、日本町の歴史を象徴するように存在感を示している。

かつてに比べれば海外で日本の食材は容易に手に入るようになったとはいえ、まだごく限られた場所でのことだ。日本人留学生や現地で働く日本人にとっては、活力の源でもある日本食を提供してくれる「Uwajimaya」は、いまも日本的なものへの渇望をいやしてくれるオアシスになっている。

(敬称略)

 

© 2017 Ryusuke Kawai

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Sobre esta série

アメリカ・ワシントン州シアトルを拠点に店舗を展開、いまや知らない人はいない食品スーパーマーケットの「Uwajimaya(宇和島屋)」。1928(昭和3)年に家族経営の小さな店としてはじまり2018年には創業90周年を迎える。かつてあった多くの日系の商店が時代とともに姿を消してきたなかで、モリグチ・ファミリーの結束によって継続、発展してきたその歴史と秘訣を探る。

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