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南米の日系人、日本のラティーノ日系人

同一労働同一賃金原則は、外国人労働者には適用が困難?

今年の一月末、政府は「ニッポン一億総活躍プラン」の一環として、同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えを示した。正規と非正規雇用の間に存在する賃金格差の是正と、非正規労働者の所得改善という思惑がみられるが、この議論には賛否両論があることは言うまでもない1

同じ時期に、ペルーの経済誌「GESTION」のサイトで、「根拠のない理由で同じ職種で賃金格差がある場合、経営者は3年の実刑になる」という記事を目にした2。いかなる労働者もペルー労働基準監督署に告発し、その格差と不当な扱いが立証されれば、同一労働同一賃金原則に違反しているとして国はその経営者を告訴し、判事は最高3年の禁固刑を下すことができるという。このような処罰規定が実際に適用されたことはあまりないようだが、存在することは事実である。

日本でも、正社員と非正規社員の間の処遇格差はかなり大きい。全労働者に占める非正規社員比率は40%弱を示しており、約2,000万人がパートやアルバイト、契約社員、派遣社員、臨時社員として働いている。こうした非正規雇用者が正社員と同じ仕事をしても、同じ賃金を受け取ることはあまりなく、日本では「同一労働同一賃金」という原則についてあまり真剣に議論されたことがない。専門性の高い職種では、比較的この原則を遵守しやすいが、「同一労働同一賃金」が最も求められているのは、工場労働者や一般事務、外食や販売など、熟練度がそう高くない職種である。

多くの職種では、学歴や資格の有無にかかわらず、非正規社員の実質賃金はかなり低く抑えられており、この格差を是正するのは困難な状態にある。すべての職員を正社員にすることはできず、憲法が労働者保護を明確にし、賃金格差是正を義務づける法律が成立したとしても、中南米のように「もぐりのブラック労働」を助長してしまう恐れがある。過剰な非現実的規制は逆に闇の労働市場を拡大させてしまう。世界銀行によると、就労人口の約半分がその状況にあるという3

いかなる契約形態でも、やはりボーナスというインセンティブは誰にとっても嬉しいものである。

日本では、非正規雇用であっても、一定の要件を満たしていれば雇用主によって雇用保険に加入できる。労災保険は、雇用主がその加入を怠っていてもすべての労働者をカバーする。年金と医療保険は、時間数が少ないパート労働に関しては夫の扶養になることが多いが、自ら国民年金と国民健康保険に加入することもできる。しかし非正規雇用の課題は、いくら働いてもどのような研修を受けても、昇給やボーナスがないケースが多く、インセンティブが低いのである。

政府は、同一労働同一賃金原則を導入することで、こうした格差を是正するだけではなく、正社員の過酷な労働環境を改めたいという目的も持っている。過大なサービス残業や少ない有給休暇取得率等を改善し、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指している。

最終的にどのような法改正が行われるか定かではないが、非正規雇用であってもその職のスキルと責任に見合った報酬が保証されるべきである。確かに国内賃金水準が上昇しすぎると中小企業には堪え難い負担になるし、大企業は海外移転を選択する可能性もある。しかし、国内市場を活性化しバランスのとれた成長戦略を実現するには、公正な雇用を守るとともに理不尽な賃金格差は是正しなければならない。

それでは、外国人労働者にもこの「同一労働同一賃金」の原則を適用し、日本人との間に存在する賃金格差を改善できるのであろうか。複数のペルー人は、下記のような声をあげている。

「自分は日本語もある程度理解できるし、機械操作の資格も取ったが、同じ仕事をしている日本人より賃金が低く、ここ20年いつも契約社員である」

「溶接の資格を取り日本人より働いているが、正社員にしてくれない。時給は10年前からまったく上がらない」

「お弁当の製造でみんな同じ作業をしているけど、日本人パートより我々の時給は低い」

「どんなに一生懸命仕事をしても、自ら夜勤を希望しても、時給は上がらないし、他の(日本人)職員とは賃金格差がある」

多くの外国人労働者が従事している業務は、比較的単純な労働で、一定の作業手順を覚えれば問題なくこなせることが多い。製造ラインやお弁当の詰め合わせ作業のような流れ作業では、日本人職員と外国人労働者との生産効率に大きな違いはないはずである。にもかかわらず、根拠のない賃金格差が存在する。

過去に、参考になる賃金格差是正の判例がある。1996年におきた丸子警報器事件である4。勤続年数5年から25年の女性パート職員28名が、残業を含めた労働時間が正社員とほぼ同じであるにもかかわらず、正社員より低い賃金しか支給されず、昇給やボーナスもあまりにも小額で、こうした扱いは不当な賃金差別であると、当時長野地裁上田支部に提訴した。

裁判所はその賃金格差は労働基準法3条5に定める「社会的身分」に該当せず、また、同一労働同一賃金原則は労働関係を規律する一般的な法規範ではないので、これらを根拠にパートタイム労働者と正社員との処遇格差は是正できないという見解を示した。しかしその一方で、労働基準法3条、4条6、および同一労働同一賃金原則の基礎にある均等待遇の理念から、このような格差は公序良俗に反する行為で、賃金格差は違法であるとの判決が下された。雇用主は勤続年数等にもとづいて賃金調整をし、ボーナスや退職金などを含めたパート職員の賃金が正社員の8割を満たない場合は違法な差別であるとし、労働者側の勝訴と報じられた。その後、会社側は控訴したが、1999年11月に和解が成立した。

ここで注目したいのが、正社員とパート社員の賃金格差である。20%の差は合理的であると判断されたことだ。完全な同一性が実現できたわけではないが、この事件は後のパート法改正や労働契約法の制定にも影響を与え、処遇格差の改善に貢献してきた。

いくらマニュアル化された作業でも、正規と非正規の労働条件をもっとバランスよくする必要がある。また、下請けの条件改善も必要である。

とはいえ、学説やその他の判例はこの同一労働同一賃金原則をあまり支持しておらず、今後政府の法改正案がどこまで進展するかは未知数である。契約形態が異なり、その責任や期待感が異なるのであれば一定範囲の賃金格差は合理的だとみなされている。日本の正社員は、専門的スキルより幅広い業務を遂行できる人物が求められ、転勤や移動、後輩の指導等が期待される。余りにもひどい賃金格差は是正されなければならないが、現行法の適用及び最低賃金の上昇で対応できるという見方も強い。また、外国人労働者の賃金に関しては、日本語の水準アップと資格取得等でかなり改善できるという。

すべての労働者を正社員にするのは非現実的なことであり、いかなる場合にも同一労働同一賃金原則を法的に強制することは無理である法改革よりも、むしろ、不当な格差是正を容易にする労働基準監督官の権限強化や、もっと柔軟な人事制度導入を促進する方が、格差是正の近道になるかも知れない。

注釈:

1. 「【討論】議論が始まった同一労働同一賃金、あなたはどう考える」産経ニュース、2016.03.06 

2. Miguel Juape, “Gerentes irían a la cárcel si fijan sueldos diferentes sin sustento para un mismo cargo,” Economía, GESTION, 2016.01.08  http://gestion.pe/economia/gerentes-irian-carcel-si-fijan-sueldos-diferentes-sin-sustento-mismo-cargo-2152286

3. 2013年の世銀の調査によると、ラテンアメリカのブラック労働率は47.7%で、1億3千万人が何の保証もない職に従事している。中米諸国では、その比率が70%を超えている。
La mitad de los trabajadores de América Latina tienen un empleo informal”, Banco Mundial, 2014.04.01

4. 丸子警報器事件判例、「(99)パートタイム労働者に対する賃金格差」、JIL労働政策研究・研修機構 

5. 労働基準法第3条:使用者は、労働者の国籍、信条または社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

6. 労働基準法4条:使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱をしてはならない。

 

© 2016 Alberto J. Matsumoto

equal pay for equal work nikkei in japan working conditions

Sobre esta série

日本在住日系アルゼンチン人のアルベルト松本氏によるコラム。日本に住む日系人の教育問題、労働状況、習慣、日本語問題。アイテンディティなど、様々な議題について分析、議論。