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「ノーノー・ボーイ」の世界を探る

第21回 “パールハーバー”の日を迎えて ~「毎日メディアカフェ」で『ノーノー・ボーイ』を語る~

安倍首相が、今月26,27日にアメリカ・ハワイを訪れ、オバマ大統領と会談し、真珠湾(パールハーバー)攻撃による犠牲者を慰霊するというニュースが先日流れた。現職首相が真珠湾を訪れ慰霊するのは、正確には初めてではないようだが、私たちの記憶のなかで、首相が公式に、日米開戦の地を訪れ慰霊すると国民に発表したのは初めてである。

新訳「ノーノー・ボーイ」について説明する訳者

パールハーバー攻撃からちょうど75周年を迎える直前の12月5日にこの発表はあった。その翌々日の7日、奇しくも「パールハーバー攻撃」から始まる『ノーノー・ボーイ』の新訳について、毎日新聞が主催する「毎日メディアカフェ」というイベントスペースで、出版に至るいきさつや本書の現代的な意味などについて話をした。

「毎日メディアカフェ」は、毎日新聞記者が旬の話題についての取材内容を語る「記者報告会」をはじめ、NPOや企業などが企画したさまざまなイベントを毎日のように開いている。毎日新聞東京本社(千代田区、地下鉄東西線竹橋駅直結)1階の「MOTTAINAI STATION」の一角が会場となり、最大で30数人が申し込み制(無料)で集まる。

12月7日は「幻の名著『ノーノー・ボーイ』を語る」と題して話をした。メディア関係者やアメリカ文化研究者から勤め帰りの人など20人ほどが集まった。「幻の名著」と題したのは、『ノーノー・ボーイ』がアメリカでは出版当初評価されることなく一時は姿を消してしまったことや、日本でも翻訳が出されたが、絶版となり日本の読者には目にする機会がなくなったためである。

この日は、訳者として私がどのようにしてこの本と出合い、新たな訳として再び日本の読者に届けられるようになったかのいきさつを話したのをはじめ、今では貴重な1957年に出版された初版本の現物が参加者の間で回覧された。また、これまで外部に紹介されることがなかった著者ジョン・オカダの生前の様子がわかる写真を披露した。

これらの写真は、ジョンの父親で移民一世にあたる岡田善登がアメリカから日本の実家(広島市安佐北区)に、戦前から戦後にかけて送ったものなどである。この広島の岡田家についても、私が訪ねた際の家や周辺の様子などを写した写真を披露した。

『ノーノー・ボーイ』は、「自分が何者であって、どう生きたらいいのか」と問う主人公の苦悩を描いている。これは、移民二世であるため二つの国と文化を内に抱え、かつその二つが戦争によって戦わざるを得ないという特殊な状況のもとで心のおき場所をなくした苦悩である。しかし、今国内にあっても、会社や学校などの組織の中や、格差社会の中で、程度の差こそあれ自分が他者と異なる疎外感を味わう状況はいくらでもある。その意味で、主人公イチローの抱える苦悩は、今の若者も抱えうる普遍的なテーマであるということを強調した。

話のあと、参加者の中からいくつか質問が出された。まず、日本で出版されたこれまでの旧訳と新訳との違いについてである。これに対しては「新訳では(日本語として)より読みやすくなったと思う」と答えた。

また、「何度か読むうちに、作品に対する思いについてどのような変化があったか」という質問には「読むたびに、登場人物に対する理解が変わり、最初はあまり同情しなかった人物に対して共感することなどがあり、読むたびに味わいの深い作品だと感じた」と答えた。

また、初版本を開いてみた参加者のなかからは「Printed in Japan by Kenkyusha, Tokyoと書かれていますが、東京で印刷されたんですね。どうしてでしょう」といった疑問の声が上がった。これについては以下のように考えられることを示した。

出版元のチャールズ・E・タトル社は、東京とアメリカ東部バーモント州の両方に拠点を置く出版社で、戦後は日本の出版界の再生の役割を担い、その後も洋書の出版事業に携わった。読者がアメリカ西海岸やアメリカ人をはじめ日本にいる英語を解する人と想定したため東京で印刷したのではないかと推察される。日本にいる読者を想定した証拠に、出版後この本の書評が日本の英字新聞にいくつか掲載されている。

新訳の出版は13日で、まだこの時点ではもちろん参加者は読んでいないが、著者と作品に興味を持っていただけたと感じた。

(一部敬称略)

 

© 2016 Ryusuke Kawai

Japanese translation john okada literature no-no boy Ryusuke Kawai

Sobre esta série

太平洋戦争を挟みアメリカで生きた日系アメリカ人二世、ジョン・オカダ(John Okada)が残した小説「ノーノー・ボーイ(No-No Boy)」。1971年に47歳で亡くなった彼の唯一の作品は、戦争を経験した日系アメリカ人ならではの視点でアイデンティティをはじめ家族や国家・民族と個人の在り方などさまざまなテーマを問う。いまも読み継がれるこの小説の世界を探りながらその魅力と意義を探っていく。