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おばあさんの手紙 ~日系人強制収容所での子どもと本~

第五章 戦後の新たな出発:1945年以降(6)

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4. 子どもにとっての痛み

収容体験が子どもにあたえた影響は、一人一人異なりますが、年齢、それまでの生活環境、サポートグループの有無、親の精神的安定度等によって大きく違ってくるようです。日系アメリカ人であることだけで、収容所にいれられたわけですから、日系であることを恥じたり、日系であることに罪の意識をもつことになりました。

しかし、幼少期を収容所で過ごした多くの人は「楽しかった」、「一日中野球をしていて楽しかった」と言います。親が子どもを守ってくれていましたし、子どもは、愛してくれる人がいれば、どんな所でも逞しく生きて行ける力をもっているようです。ベーコンも、「僕らのようなティーンエージャーにとって、収容所の生活は楽しかった。周りは日本人ばかりで、友達はたくさん出来たから。収容所に入る前は農場にいたので、家と家ははなれていて、野球をしようにもすぐに仲間が集まれる環境ではなかったけど、ハートマウンテンではすぐに野球もできたし、フットボールも、ハイキングだってすることができた。お金や物はなくても、いろんな遊びができて、すごく楽しかった。……でも、収容所での生活が子どもにとって良かったと言っているのではなく、ただ不当に行われた状況を受け入れ、その状況を最大限に生かしたということです」と。1

その一方、いまだにその時のことを話すことをためらう人もいます。一世の親から「男は泣くな」と育てられたので、泣きたくても泣けないという人にも会いました。どの方に伺っても、最後は親にたいする感謝の言葉で終わります。子どもにとっての一番の痛みは、親世代の経験した苦難なのかも知れません。いまも苦しんでいる人々に一日も早く穏やかな日々が訪れることを祈っています。


5. 未来につなげる試み  

戦時中、日系人におこったことは、だれの上にも簡単に起こりうることです。9・11直後、アメリカはまた同じ過ちをくりかえす寸前までいきました。とどまらせたのは、ハートマウンテンで子ども時代を過ごした当時の運輸長官ノーマン・ミネタの存在でした。ミネタはアラブ系アメリカ人やイスラム教徒にたいする人種差別を非難し、彼らを隔離しようとする圧力を拒否したのです。

「アメリカ合衆国は、建国以来、ある一部の人々に対しては平等の精神で接して来たが、万人に対しての平等が目標だ。この理想を達成するためには、少なくとも他者に対するある程度の理解が必要だ。私たちは、国家として、偏見や先入観で行動を起こさないように気をつけなければならない。この半世紀で、平等への扉は開いてはきたが、すべての人に平等な待遇への道は遠い。でも、達成可能であることを願う。戦争中、日系アメリカ人が被った排除や強制収容がなぜ起こったのかを知るだけでなく、こんなひどい政策が、どのように進められていったのかを知ることが大切だ。このプロセスを理解するためには、国がこれほど大規模に正義を踏みにじる計画にのりだしていった道筋への洞察力が必要。これをすべてのアメリカ市民に理解してもらうことだけが、このような不正義が他のアメリカ市民の上に再び起こらないことを確実にする」とカシマは著書Judgment without Trialで述べています。2

日系人に起こったアメリカンストーリーを明日につなげる試みを2、3ご案内します。


ブリードさんへの手紙———全米日系人博物館

1988年、長年住み慣れた自宅を処分して、老人ホームへ移る準備をしていた82歳になったブリードは、大切にしまっていた箱を見付けます。箱の中は、本をおくることで子どもたちを励まし続けた、ブリードのもとに届いた子どもたちからの感謝の手紙でした。懐かしくて、思わずそこに座こんで、子どもたちの顔を一人一人思い浮かべていました。しかし収納場所がわずかしかないホームに持ってはいけません。ブリードは「ブリードさんの子どもたち」の一人エリザベスに託すことにしました。一旦、引き受けたエリザベスは、ロサンゼルスにある全米日系人博物館に寄附し、ボランティアの手で一枚ずつデジタル化された子どもたちからの手紙は、コンピューターをつかえば、世界中のどこからでも見ることができるようになりました。3


Densho(伝承)

少し前に、ピーター・アイロンズが、ゴードン・ヒラバヤシの最高裁での判決を左右する重要な資料を、司法省が隠蔽していた事実を発見したと書きましたが、どのようにして見付けたのか、その時どう感じたのかをアイロンズ教授自らが話しているインタビューがDenshoにあります。歴史の本で読んだことが、すぐに、その場で、実際にご本人の顔を見ながら直接話を聞ける、世界中どこにいても。こんなことができるのもDenshoならではです。

Denshoは、ウエブサイトにある資料やインタビューの充実と検索の簡易化を計る一方、子どもに接する先生方へのワークショップにも力を入れています。この2年間で、アメリカ各地のみならず日本、カナダ、イギリスでもワークショップをおこなっていますので、日本でもどなたか参加された方もいらっしゃるでしょうね。4

面白いのは、提供された写真や資料はデジタル化して、Denshoのオンライン上で記録保管し、現物は提供者にお返しするというシステムです。手で触れられる展示物を持たない新しい試みの博物館です。


CyArk

今回の写真は、マンザナー強制収容所の跡地に立って、デジタル技術で忠実に再現したバラックを画面にいれた、マンザナー強制収容所のイメージをiPadで見ているところです。国立マンザナー強制収容所跡地のバーチャルツワーの潜在的な可能性を示すためにCyArkが作成したものです。

当時の収容所のたたずまいをデジタルで復元した画像を手にマンザナー強制収容所跡に立つ。(写真:CyArk)

2001年にアフガニスタンでおきたタリバンによるバーミヤンの大仏の破壊に端を発し、他の世界的文化遺産が「自然災害で消え去る前に、人間の侵略攻撃で破壊される前に、時の経過で荒廃する前に、新しいテクノロジィを駆使して無料の、3Dオンラインライブラリーを作ろう」とたちあがったのが、CyArkで、国際的な非営利団体として2003年に設立されました。そのような場所を世界中の人と分かち合い、人類共同の遺産の一つ一つユニークな物語を、新しく魅力のある方法で紡いでいきたいと。

日系人収容所プロジェクトは、アメリカの歴史上の暗かった時代を一般の方に理解してもらって、法にさだめられている人権が二度と踏みにじられることのないように願っておこなわれたもので、マンザナー、トパーズ、ツールレイクが完成しています。5


エピローグ

今、この連載を終わるにあたって思うのは、一世、二世の高潔で強靭な精神と、それぞれの環境で各自が考えて出来ることを行動にうつした個人の力です。本を送ることで子どもたちを励まし続けたクララ・ブリード、辞めたいという新米レポーターに辞めるなと手紙を書いたウォルト・ウッドワード、サラミと学校を運びつづけた先生姉妹、ぬかるみに困っている同胞に下駄を作り続けたおじいさん、ヘンリーたちに自由に自分の将来の環境を想像してみる課題を与えたミセス・ポーラック、何もない所から図書室をつくった人々……そんな人々が心に残ります。子どもの側にこういう人がいたことが、子どもにとってどんなに救いであったか。

やわらかい春の光のさす日、ウイングルーク博物館の図書室にミニドカから返ってきた本があるというので、出かけてみました。そこで新聞を読んでいた時、半世紀前にポートランドの「集合所」で受けた図書のサービスに感謝して、マルトノマハ・カウンティ図書館財団に匿名で1万ドル(100万円)の寄付を寄せた80歳の日系女性の言葉を見つけた時に、ふっとわたくしが探し求めていたおばあさんに出会えたような気がしました。

日本人や日系人に対してひどい嫌悪がみちみちていた頃でしたから、キャンプに本を届けるのは容易なことではなかったはずです。でも、本と本を届け続けてくれたあの思慮深い図書館員のお陰で難しい時を乗り越える事ができました。6

(終)

注釈:

1. Sakatani, Harumi Bacon, personal communication, March 10, 2014.

2. Kashima, Tetsuden. Judgment without Trial: Japanese American Imprisonment during World War II. Seattle: University of Washington Press, 2003.

3. ジョアンヌ・オッペンハイム著、今村亮訳「親愛なるブリードさま」柏書房 2008

4. Tom Ikeda, personal communication, March 11, 2014. Densho.
Densho e・news, March 2014.

5. Devon Haynes, personal communication, March 12, 2014.  CyArk.

6. Rubenstein, Sura. (1998, January 26). Gift thanks county library for war relief. The Oregonian.
Wertheimer,  Andrew B. Japanese American Community Libraries in America’s Concentration Camps. 1942 – 1946. [Doctoral dissertation] Madison: University of Wisconsin-Madison. 2004.

 

* 子ども文庫の会による季刊誌「子どもと本」第137号(2014年4月)からの転載です。

 

© 2014 Yuri Brockett

9.11 arab americans camps. JANM CyArk densho japanese american norman mineta

Sobre esta série

東京にある、子ども文庫の会の青木祥子さんから、今から10年か20年前に日本の新聞に掲載された日系の方の手紙のことをお聞きしました。その方は、第二次世界大戦中アメリカの日系人強制収容所で過ごされたのですが、「収容所に本をもってきてくださった図書館員の方のことが忘れられない」とあったそうです。この手紙に背中を押されるように調べ始めた、収容所での子どもの生活と収容所のなかでの本とのかかわりをお届けします。

* 子ども文庫の会による季刊誌「子どもと本」第133号~137号(2013年4月~2014年4月)からの転載です。