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ヘイトスピーチ・ヘイトクライムを許すな!―9.11同時多発テロ事件後の日系人コミュニティ

第2次世界大戦前のアメリカ社会における反日感情と、それにともなう日系人にたいする大小さまざまな差別的待遇については、すでに周知のことだと思います。全米日系人博物館やマンザナー国定史跡資料館などでは、当時の反日感情や日系人差別のすさまじさを物語るいくつかの資料を目にすることができます。

左:「ここは白人の住む街だ!ジャップ(注1)は出ていけ!」(著者による意訳)(“A More Perfect Union” スミソニアン博物館);右:「ジャップ“射殺”免許証―常に“射殺”可能、永久に有効!」(著者による意訳)(マンザナー国定史跡資料館 常設展示)

「ジャップはこの街には不要!」(著者による意訳)(“Remembering Manzanar” マンザナー国定史跡資料館制作)

このような反日感情は、日米戦争による日系人の強制収容の原因となりました。戦時中みずからの人権や尊厳を著しく傷つけられた日系人は、戦後のリドレス活動をとおして、謝罪と補償というかたちでアメリカ政府の過ちを正すことに成功しましたが、それには40年以上もの月日を要しました。リドレス活動を成功に導いた日系人は、自らの経験をアメリカ社会に活きる人々に理解してもらうため、さまざまな教育活動を通して熱心に取りくむようになりました。

日系人の戦争体験を活かして民主主義や平和の大切さをアメリカ社会にうったえる活動は、2001年に大きな転機をむかえることなります。

2001年9月11日、いわゆる9.11同時多発テロ事件が起こりました。その直後から、中東・イスラム系の人々に対するヘイトスピーチやヘイトクライムがアメリカ社会のなかで多発しました。さらには、この事件を日本人による真珠湾襲撃と対比する人々や、それらを同一視する人々も出てきました。「真珠湾を忘れるな!」が「ツインタワーやペンタゴンを忘れるな!」へと変貌したことは、多くのアメリカ人にとって衝撃的なことでした。

日系人の強制収容を「擁護」したミシェル・マルキン(ウィキペディア)

日米戦争時に国家の安全保障を理由に日系人の強制収容を正当化したように、この時も中東・イスラム系の人々の身柄を拘束したり、彼らの人権を限定することを正当化、合法化させようとする動きも少なくありませんでした。特に、フィリピン系アメリカ人の評論家ミシェル・マルキンが、日系人の強制収容は合法的な政策であったと主張し、同時多発テロ事件を理由にイスラム系の人々の身柄を拘束し、かつて日系人が経験したような強制収容も辞さないという持論を展開したことは、日系人コミュニティのみならず、アメリカ社会へ大きな波紋を広げました。

しかし、強制収容問題の当事者である多くの日系人はこのような動きに正々堂々と、真っ向から立ちむかい、中東・イスラム系の人々に対するヘイトスピーチやヘイトクライムの阻止に奔走しました。

さらには、当時アメリカの運輸長官をつとめていたノーマン・ミネタ氏は、戦時中の自らの不当な収容経験をもとに、レイシャル・プロファイリングによる国際テロリストの身柄拘束は人種差別であると指摘し、人種差別にならないかたちでテロリストを取り締まることの重要性を訴えました。彼はみずからの「経験」にもとづく「持論」を展開し、彼の意見に反対する人々を説き伏せ、周囲の反対を押しきって、レイシャル・プロファイリングを阻止することに成功しました。

ミネタ氏のインタビューを見る(ディスカバー・ニッケイ)>>

どのような事態が起こっても、人種や民族的な出自を理由に、偏見のまなざしで他者をみたり、一方的に差別することはあってはなりません。9.11同時多発テロ事件以降のアメリカ社会では、日系人の戦争体験がひとつの象徴的な歴史的な教訓となり、中東・イスラム系の人々が強制収容されることはありませんでした。

ヘイトスピーチの問題でゆらぐ日本社会

日系人がアメリカ社会におけるヘイトクライムやヘイトスピーチの問題解決のために奔走する一方、現代の日本社会でもヘイトクライムやヘイトスピーチの問題が浮きぼりになりはじめました。特に、在日外国人などを対象にしたものが目に付くように思えます。2

東京での、排外主義者らによるデモ活動の様子(1)(スクリーンショット画像は著者によるもの)

多くの良識のある日本人にとって、このような社会問題をかかえることは納得のいかないことあるにちがいありません。日系人コミュニティの歴史を見ても分かるとおり、ヘイトスピーチは、深刻な人権侵害や社会内部の分裂などを引きおこす可能性があります。日系人が強制収容所というかたちで人権を侵害されたように、このような差別が原因となって深刻な人権侵害が発生した場合、それを解決することは容易なことではなく、時間もかかります。

ある予備校講師の「いつやるの?今でしょ!」というセリフが日本では流行語になりましたが、このようなヘイトスピーチの問題の解決にあたっては、「今でしょ!」という姿勢が必要だと思います。

ひとりの良識のある個人として、日系人コミュニティの歴史を学んでいるひとりの人間として、さらには外国につながりをもつ日本人(台湾系日本人)として、現在の日本社会をゆるがしているヘイトスピーチの問題にかんして、われわれは元米国運輸長官ノーマン・ミネタ氏の「断固たる態度」を見習うべきだと思います。誰もが他者にたいして寛容であること、そして、不寛容を許さず、ひとりひとりが尊重される社会をつくることが、これからの社会には求められています。

注釈:

1. 「ジャップ」という表現は、日系人または日本人を指す差別用語で、戦前から戦後まもなくにかけてアメリカ社会では日系人を見下すかたちでこの言葉がよく使われていました。

2. 日本人の女子中学生による在日外国人にたいするヘイトスピーチ: http://www.youtube.com/watch?v=YqzwtGj1XuU
東京都内における排外主義者らによるデモ活動:  http://www.dailymotion.com/puni2nuko#video=xy144f

 

© 2013 Takamichi Go

9.11 discrimination hate speech