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定住外国人支援策を検証する -教育の成果は長い目で見ることが大事- その2

>>その1

定住者としての外国人のために「日本語教育事業」を実施
リーダーとなる人材を養成

「日本語を覚えようとしない日系人は、すぐに母国に帰るべき」と、強い口調で語るのは、神奈川県鶴見市で日系人らの支援活動を行うNPO法人ABCジャパンの理事長、橋本秀吉さんだ。自身も日系ブラジル人3世で、今から20年前に日本文化に憧れて来日。当初は工場労働や新聞配達員などを掛け持ちしながら、苦労して日本語を習得していったという。

「私たち日系人は日本の製造業を支えてきた。使い捨ては許されないが、ブラジル人も日本社会に溶け込む努力すべき」と、同胞に向ける目もまた厳しい。

そんな橋本さんが、「日系人のリーダーとなる人材を育てたい」と、文化庁からの委託を受けて昨年6月から半年間実施したのが、「生活者としての外国人のための日本語教育事業」だ。

平成19年度から文化庁が実施しているこの事業は、日本語の理解が不十分な定住外国人に対して日本語教育を充実させることで、日本社会の一員として不自由のない生活が送れるよう支援しようというものだ。日系人らの失業問題が深刻化した平成21年度からは、「外国人支援策」の一環として対策が強化され、前年度より大幅に委託先を増やし、総額176,921千円の予算をかけて日本語教育の普及に努めている。

ABCジャパンでは、上級者のための「日本語指導者養成講座」と、初心者のための「日本語教室」の2クラスを開講。毎週土曜日の午前9時半から16時まで日系ブラジル人やペルー人ら約43人の受講生を対象に日本語の指導を行ってきた。

ABCジャパンが主催する日本語教室には、日系人の配偶者も多く参加していた

日系社会の役に立ちたい

私は、昨年の8月から10月にかけて3回ほどABCジャパンを訪れ、受講生たちの様子を取材した。

ABCジャパンのわずか12畳ほどの狭い事務所を3つに区切り、レベル別の日本語授業が行われていた。ざっと見渡したところ、6対4の割合で女性が多め。年齢は10代から40代と幅広い。

上級者のための「日本語指導者養成講座」の受講生は、さすがにネイティブなみに流暢な日本語を話す方も多く、ほとんどの方が仕事を持ち、なかには解体業や電気事業を営む会社の社長も数人見受けられた。

一方で、初心者のための「日本語教室」の受講生は、日本語の聞き取り力はあるが、自分の思いをスムーズに伝えることは難しいというレベル。「日本で生まれ育った子どもと、日本語で会話できるようになりたい」との思いで学ぶママさん受講生もいた。

なかでも印象的だったのが、上級者のための「日本語指導者養成講座」を受講していた日系ブラジル人3世のジェファーソン君(18歳)だ。

彼は、両親に連れられて3歳のときに来日。両親とはポルトガル語で話すが、小・中・高と公立学校に通っているため日本語はネイティブだ。「英語の教師になる」ことが目標で、そのため現在は、都内の大学を目指して受験勉強に励んでいる。そんな多忙ななかでも本講座を受講したわけを、彼は次のように語ってくれた。

「テレビや新聞のニュースからは、日系ブラジル人に関するネガティブな話題しか聞こえてこない。それがとっても残念なんです。だから僕も、何か日系社会の役に立てたらと思って受講しました」

また、初心者のための「日本語教室」を受講していた日系ブラジル人3世のコマツ・アメリコ・サトルさん(44歳)は、「講座に通い始めてから自信を持って日本語を話せるようになった」と顔をほころばせる。彼は来日13年目になるが、正しい日本語が話せず長年コンプレックスを感じていたという。現在は、ポルトガル語の文書をファイリングする仕事に従事しているが、「今後は日本語能力検定2級に合格して仕事の幅を広げたい」という。

まずは一歩踏み出すことが大事

彼らに日本語を教える金子糸子先生は、「最初はうつむきかげんだった生徒が、回を重ねるごとに積極的になっていくんです」とうれしそうに話す。受講生たちの多くは、正式に日本語を習ったことはなく、職場で覚えた日本語をそのまま使用している。そのため、文法的な間違いはもちろん、敬語や尊敬語を使えない受講生も多い。工事現場や製造ラインで働く受講生たちのなかには、汚い言葉でののしる上司の日本語をそのまま真似て使っているケースもあり、自分の日本語に自信が持てず「知らず知らずのうちに日本人と話すことを避けていた」と言う受講生もいるのだという。

「受講生のなかには、仕事が忙しくて講座を休みがちになっている人もいます。しかし、何十ページもある教科書のすべては無理でも、その中のひとつでもふたつでも覚えてくれたらいいんです。ひとつマスターすれば、それが自信となって次のステップを踏み出せるはずだから」と金子先生は、まず一歩を踏み出すことの大切さを訴える。

たしかに、教育の結果が出るまでには長い年月がかかる。1990年に入国管理法を改正し、多くの日系人を招き入れたのは、他でもない日本政府だ。日本の将来のためにも、結果を急ぐのではなく、長い目で見守る必要があるだろう。日本における日系人の歴史は、ここから始まるといっても過言ではないのだから。(了)

*本稿は『多文化情報誌イミグランツ』 Vol 3より許可を持って転載しています。

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