ミン(ミノル)・ツボタさん
「虎年の人は一針以上縫ってもいいんですよ。虎は強いから、縁起がいいでしょう」。そう言って「千人針」を見せながらミン・ツボタさんは説明する。「女の人しかできないんですよ。ツーリ・レイクのキャンプでお母さんがね、作って渡してくれたから、僕は(戦争で)助かったと思う」。心持ち潤んだ、遠くを見る眼がやさしい。収容所で女性に会うたびに一針づつ頼んで回ったという、赤い玉縫いが千個も几帳面に並んだ生成り(きなり)の帯は、ところどころに小さな染みが付いているものの、まだほとんど新しい米袋で作られているように見える。「ほんとに嬉しくてね、畳んで袋に入れていつも持ち歩いていました」
ミンさんは1918年、ケント市で10人兄弟の末っ子として…