南米の日系人、日本のラティーノ日系人
日本在住日系アルゼンチン人のアルベルト松本氏によるコラム。日本に住む日系人の教育問題、労働状況、習慣、日本語問題。アイテンディティなど、様々な議題について分析、議論。
このシリーズのストーリー
ボリビア訪問と日系人との交流
2010年4月14日 • アルベルト・松本
2009年8月末初めてボリビアを訪問した。それも日系人の移住地等が多い東側のサンタクルス・デラシエラ(Santa Cruz de la Sierra)である。 アルゼンチン人である筆者のボリビアに対する訪問前の認識とは、隣国や欧州への出稼ぎ労働者が多く、その中でもアルゼンチンへの移民は以前からのものであり、貧困率も高く(ハイチに次いで二番目?)、鉱物資源や石油があるにもかかわらず所得格差がひどく、高地には先住民が多く、コカの葉の栽培もあって違法なコカイン(麻薬)製造が国際…
ペルーの目覚ましい経済成長と本国への未練
2010年3月29日 • アルベルト・松本
近年ペルーの経済成長ぶりが注目されており、実際にここ10年近くの経済成長率をみると、6%、7%、8%という高い水準を見せている。一人当たりの所得も確実に上がっており、年間平均所得も90年代後半の2.500ドルだったのが、今では4.500ドルに達している。それだけではなく、以前から悩みの種だったインフレ率は低い水準に抑えられ、通貨ヌエボソルはドルより高くなっている。これはペルー政府が健全な財政運営をしている証でもある。80年代には国際的に債務不履行になった国だが、今は300億…
移民送り出し国の渉外家事問題とは
2010年2月25日 • アルベルト・松本
外国人が大量に労働力及び生活者として移住してくると、一つの地域社会にさまざまな影響が出てくるし、移民を受け入れた国の法制度やその運用にも少なからず影響を及ぼす。また、複数の国をまたがって利害関係が絡んでいるときは通常では想定できない対応を迫られることもある。ということは、外国人の出身国いわゆる移民送出し国側でも同種の課題が発生しているのだ。同胞が海外で居住することで国境を越えたさまざまな法律行為が発生し、その効果が本国にも及ぶのである。身分登録関係、財産の管理と処分、判決の…
日系ラティーノの解決困難な相談内容の対策とは
2010年2月8日 • アルベルト・松本
たとえ国内の引っ越しでも新しい土地に住むとなると、何かと相談しなくてはならない事項がたくさん出て来る。日常生活に影響する習慣や風習を、その土地に応じて把握する必要があるからだ。これが海外移住となると、一時的なものであっても、精神的な負担に加え、諸制度の仕組み、言葉や文化の違いゆえに誤解をまねくこともしばしばある。中南米でも、同じスペイン語圏・文化圏内へ越境する者であっても、やはり政治制度や法体系、社会の特徴や人口構成、産業構造や労働市場等の違いによって慣れるまでは相当時間が…
日本の日系人:本国に帰るのか、日本に残るのか
2010年1月21日 • アルベルト・松本
経済危機に対する政府の対策はかなり早かったが、経済そのものの回復は同じペースには行かないようだ。なんせ、つくりすぎた車や家電、その在庫調整だけでも一年以上はかかるという。政権交代後は、前政権の補正予算見直しが行なわれ、2010年度予算に対してもこれまでとは異なった基準で編成されつつある現在、国全体が何となく「様子見」という状況にある。 失業、または契約が更新されなかった南米系日系就労者たちは今のところ雇用保険を受給したり、短期・臨時雇用に就いたりして何とか生計を維持し…
日系就労者たちの債務超過問題が多発-経済危機からみる奥の原因-
2010年1月8日 • アルベルト・松本
ここ数ヶ月の間、筆者はペルー人団体や自治体の要請によって関東地区をはじめ東海地方にも出向いて講演を行ってきた。経済危機への対策というテーマが主な依頼内容だが、行政や国際交流協会からの依頼は相談窓口強化策についてであった1。 ペルー人や他の南米系日系人からの質疑応答やアンケートでは、異常なほど債務超過問題についての質問が多かったことが印象的だった。話を聞くと、その多くが住宅ローンや車ローンだけではなく、クレジットカードや銀行ローンカード、そしてサラ金にも手を出しているこ…