ディスカバー・ニッケイ

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デカセギ・ストーリー


2012年6月18日 - 2024年4月18日

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。



このシリーズのストーリー

第十五話(前編) 『あまちゃん』にありがとう!

2013年11月25日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

「なんか、ジャッパ1って、僕は好きじゃないなぁ」と、ダニエルが言うと、側にいた4人の男の子も女の子も「そう、そう。言葉も話せないし、可愛いくもないし」と、ユカの方を見て、笑い出した。 ユカはショックを受けた。仲良しになれると思っていた同級生の言い方は残酷だった。一生懸命ブラジルの生活に慣れようとしていたのに。 このショッキングな出来事が彼女の人生を変えた。 話はユカの生まれる前に遡る。ユカの両親はブラジルで結婚し、すぐに日本へデカセギに行った。2年後、長女のユカが生ま…

第十四話 ジョージに何があったのか

2013年10月21日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

僕は20数年ぶりに故郷に戻った。ちょうど出張で近くの町に滞在することになったので、多忙だったが、寄ることにした。 町は、以前、聞いていたよりすっかり変わっていて、びっくりしたし、又、残念な気もした。昔、にぎわっていたメイン・ストリートは、商店がわずかに残っているだけで、さびれていた。子どもの頃、よく菓子パンを買っていたパン屋がバール1になっていたので、そこに入ってコーヒーを飲んだ。 父はその通りに店を持っていたが、長男、つまり僕の兄をサンパウロの大学に行かせるために、みんな…

第十三話 塩辛&ポン・デ・ケイジョ

2013年9月16日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

日系三世のリンダが日本に来たのは2007年の冬だった。今でも思い出に残っているのは親戚の温かい歓迎だった。 一人っ子のリンダは幼い頃にお父さんを亡くし、そのあと、最愛のお母さんも亡くしてしまい、独りぼっちになってしまった。18歳の時だった。それを知った、日本に住んでいるデカセギの叔父さんがリンダを呼び寄せてくれた。 叔父さんは家族と一緒に日本にデカセギに来て13年目だった。最近、ブラジル製品の商店「Mercadinho do Paulo」を開いて、そこで叔母さんと二人の息子…

第十二話(後編) 居場所のない子どもたち

2013年8月21日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

あとわずかでブラジルに戻るサヤカは帰国の準備を始めた。家族へのお土産はまだ揃っていなかったが、それよりも気になることがあった。 それは、真夏の日に公園で出会った小さな女の子と、初めて耳にした「日本のブラジル人学校」のことだった。ブラジルの小学校で教えていたこともあって、サヤカはその学校を訪ねてみた。 金曜日の午後、ちょうど、子どもたちが帰る時間だった。外には送迎バスが待っていた。 ブラジルでは送迎バス費用は保護者負担なので、多くの子どもは歩いて帰るしかなかった。サヤカは日本…

第十二話(前編) 居場所のない子どもたち

2013年7月24日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

サヤカは学校の教師を25年間勤めた後、退職した。これで、やっとのんびりできる時間が持てると思った。 しかし、夫はまだ現役を続け、あと10年は働きたいと言う。だから、自分だけのんびりする訳にはいかないと思い直し、何かすることを探し始めた。 ちょうどその時、兄の子ども2人が日本に再びデカセギとして行くことを知った。2人とも日本で2年間働き、ブラジルに戻って来たものの、仕事が見つからず、「これでは、日本で暮らす方がよっぽどいい」と、再びデカセギを決心した。 サヤカは不思議だ…

第十一話(後編) クレイトは、もうサンバは踊らない

2013年6月21日 • ラウラ・ホンダ=ハセガワ

クレイトは、15年ぶりに出会えた父親とゆっくり話をしていたかった。しかし、妹のケイラに「パパイは血圧が高いので、あまり興奮させたら体によくないから、今夜はここまで」と言われたので、久しぶりに「Boa noite、papai!(おやすみなさい、おとうさん!)」と言って、話を止め、外に出た。 その日は、夜空が特別きれいに見えた。正直にいうと、それまでは、空の様子に気付く余裕などなかった。日本にデカセギとして来たが、工場の仕事は以上にきつく、休まずに動いている機械と同僚の汗まみれ…

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このシリーズの執筆者

1947年サンパウロ生まれ。2009年まで教育の分野に携わる。以後、執筆活動に専念。エッセイ、短編小説、小説などを日系人の視点から描く。

子どものころ、母親が話してくれた日本の童話、中学生のころ読んだ「少女クラブ」、小津監督の数々の映画を見て、日本文化への憧れを育んだ。

(2023年5月 更新)