デカセギ・ストーリー

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。

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第十七話 三世代のデカセギ物語

        バチャン1 ゲンキ?
        ニホン イマ スッゴサムイ。
        デモ ワタシ ダイジョウブ。ゲンキ ゲンキ。

                                              -- マルセラ ヨリ

かわいい花柄の便せんにはこれしか書いていなかったが、たくさんの写真が一緒に送られてきた。工場の同僚と弁当を食べている写真。習い始めた日本語の先生と仲間と一緒の写真。クリスマスパーティーで赤いドレスを着た写真。はじめて作った雪だるまの横でピースサインをしている写真。どの写真にもマルセラは笑顔で写っていて、ほんとうに元気そうだった。

孫娘のマルセラの手紙を読んで以来、キミコは「人生って不思議なものですね」と美空ひばりの ...

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第十六話 サンパウロ発 18:59

グアルーリョス空港は大きな荷物を持った人で混雑している。今は、バカンスシーズンの真っ最中で、ブラジル人はますます海外旅行をするようになっている。

「今年の日本はとても寒いと聞いているから、あかりもおまえも風邪をひかないようになあ。元気でなあ。着いたら連絡するんだよ」と、祖母は心配そうに別れを述べた。

「大丈夫、おばあちゃん。ちゃんとあかりの面倒を見るし、わたしは頑張るから!おばあちゃんも、元気でね」

 

3年前、ちょうどこの時期にマユミは、突然、ブラジルに戻って来た。出迎えに来てくれたのは祖母だけだった。

祖母はマユミが幼い子どもを連れて戻って来るとは夢にも思っていなかった。何度か電話で話したことはあったが、マユミが結婚したことも全く知らなかった。

「おばあちゃん ...

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第十五話(後編)『あまちゃん』にありがとう!

ユカは、日本で生まれ育ち、15歳の時、両親とブラジルに戻った。

本当は、日本に残って勉強を続け、大学に進学し、栄養士になりたかった。そしてもうひとつ、「成人の日」には着物を着て友人と街を歩いてみたかった。しかし、両親はブラジルに戻って暮らすことを強く望んだので、ユカは仕方なく従った。戻ってからは、なるべく早く新しい生活に慣れようと頑張った。

しかし、高校に通い始めてからたった10日後、早くも、同級生にいじめられた。以来、学校へ行かなくなった。それから2年が経ち、あることがきっかけでユカの人生は変わっていく。

「バチャン ...

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第十五話(前編) 『あまちゃん』にありがとう!

「なんか、ジャッパ1って、僕は好きじゃないなぁ」と、ダニエルが言うと、側にいた4人の男の子も女の子も「そう、そう。言葉も話せないし、可愛いくもないし」と、ユカの方を見て、笑い出した。

ユカはショックを受けた。仲良しになれると思っていた同級生の言い方は残酷だった。一生懸命ブラジルの生活に慣れようとしていたのに。

このショッキングな出来事が彼女の人生を変えた。

話はユカの生まれる前に遡る。ユカの両親はブラジルで結婚し、すぐに日本へデカセギに行った。2年後、長女のユカが生まれ、二人はますます仕事に励み ...

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第十四話 ジョージに何があったのか

僕は20数年ぶりに故郷に戻った。ちょうど出張で近くの町に滞在することになったので、多忙だったが、寄ることにした。

町は、以前、聞いていたよりすっかり変わっていて、びっくりしたし、又、残念な気もした。昔、にぎわっていたメイン・ストリートは、商店がわずかに残っているだけで、さびれていた。子どもの頃、よく菓子パンを買っていたパン屋がバール1になっていたので、そこに入ってコーヒーを飲んだ。

父はその通りに店を持っていたが、長男、つまり僕の兄をサンパウロの大学に行かせるために、みんなでサンパウロに引っ越した。

僕が中学校を卒業したすぐあとのことだった ...

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