「米國日系人百年史」を読み直す~パイオニアたちの記録をたどって
1960年代はじめ、全米を取材して日系社会のルーツである初期の日本人移民の足跡をまとめた大著「米國日系人百年史」(新日米新聞社)が発刊された。いまふたたび本書を読み直し、一世たちがどこから、何のためにアメリカに来て、何をしたのかを振り返る。全31回。
このシリーズのストーリー
第19回 アリゾナ州とコロラド州の日系人
2015年4月24日 • 川井 龍介
アリゾナ州 「砂漠とカクタスとカウボーイとで表象されたアリゾナの炎熱と闘い抜いて今日の農耕地を築きあげた日本人の開拓者的努力は尊い」という書き出しで「百年史」のなかのアリゾナ州ははじまる。また、「アリゾナの農業にとり日本人は大恩人である」ともいう。 日本人による農業は、1905年にサンフランシスコの日米勧業社によって120人の労働者が精糖会社の農園に入り込んだのが最初である。以来、各地で各種野菜やイチゴなどの栽培が行われた。 州内の日本人農業史の特色としては次のように…
第18回 ネヴァダ州の日系人
2015年4月10日 • 川井 龍介
戦後は各地に散在し、縮小 「百年史」が、各州別で紹介のために割いているページ数は、該当する州に在住する日本人や移民当初の日系人の数とは関係がないようだ。前回紹介したユタ州の日系人は、44ページにわたって紹介されているが、その西隣になるネヴァダ州(第10章)は、わずか5ページである。 1910年当時の日本人の数は、ユタ州が2110人で、ネヴァダ州には864人。この割合にしては、ネヴァダ州についての日系人の情報は少ない。その理由は、戦争を挟んだのちもユタ州では大きな日系人社…
第17回 ユタ州の日系人
2015年3月27日 • 川井 龍介
鉄道、鉱山、農業からはじまる カリフォルニア州の東隣りがネバダ州、そのさらに東にユタ州は位置する。北はアイダホとワイオミングの両州に接し、東はコロラド州、南はアリゾナ州が控える。気候は比較的乾燥していて、四季ははっきりしているのが特徴だ。 モルモン教が拓いた地として有名なソルトレーク市を州都に抱えるユタ州は、19世紀後半、鉄道の敷設と鉱山の開発で発展、そのなかに日本人の足跡もある。初期の様子を「百年史」こう記している。 「当州に日本人が入りはじめたのは一九〇〇年代…
第16回 モンタナ州の日系人
2015年2月27日 • 川井 龍介
グレート・ノーザン鉄道から始まる 北はカナダと一直線の国境で分かれているモンタナ(Montana)州は、東をノースダコタ、南をワイオミング、西をアイダホの三州と接している。「百年史」では、「モンタナ州に日本人が最初に入込んだ経緯は詳らかではないが、一八八四年から一八九〇年頃の間、多い時は三十名も鉱山町ビュテに日本人賤業婦が入込んだといわれ、しかし大量に入ったのは一八九八年、東洋貿易会社がグレート・ノーザン鉄道会社に日本人労働者供給の契約を結び、多数を送り込んだことに始まる」…
第15回 ワイオミング州の日系人
2015年2月13日 • 川井 龍介
ワイオミング州というと、日本では西部劇やカウボーイというイメージを思い浮かべるのではないだろうか。かつて「ララミー牧場」というテレビドラマがあり日本でも放映され人気を博したが、このララミーはワイオミング州南東部の端にある。 米国西北部に位置するこの州と日本人、日系人について、「百年史」では、紳士録をあわせて5ページを割いている。 南はコロラドとユタ、北はモンタナ、東はサウスダコタとネブラスカ、そして西はアイダホの各州に接しているワイオミング州は、その多くが山岳地帯だ。週…
第14回 ワシントン州の日系人~その2
2015年1月23日 • 川井 龍介
第13回 ワシントン州の日系人~その1を読む >> 戦後のシアトルと日系人 戦後のワシントン州の日系人の活動について、「百年史」はわずか3ページだが力を込めて書いている。とくにシアトルの日本人、日系人の復興についてホテル業など戦前の事業の復活や新規事業を立ち上げて勢いづくありさまがわかる。それらをまとめると―― かつて日系人の商業区域だったが、戦時中は黒人が集まっていた「メーン街と南六街角」は、戦後は日系人によって買収されていき、再び日系人の領域となり、さ…