若林 道枝

(わかばやし・みちえ)

1936年生まれ。3児の母。カリフォルニア州サンホキン郡の経理部で30年間働く。2002年に詩誌「短調」を設立。現在103号まで発刊。雑誌「平成」日刊サン「ポエムタウン」「日本未来派」などに作品を発表。詩集に「天の川」「パッチワークの声」。「短調100号記念選集」を編纂。

(2015年9月 更新)

community ja

イマジン・リトル東京ショートストーリー・コンテスト II

ホテルの男

その地区一帯は歴史保護地域に指定されていて、古い建物を勝手に倒したり、大きく改築したりできないことになっている。ホテルに続き小さな商店やレストランが並び、その終わりの壁には、歴史建造物指定のエッチングの表示があった。

一街の通りは、三階建て四階建てのビルディングが隙間なくびっしりと並んでいる。建物と建物の間は隙間がほとんどない。一階には食堂や土産物屋、雑貨店、宝石店が並んでいて、二階以上をホテルや下宿屋がしめている。全てが100年以上の建物だ。

やす子が何度も泊まるホテルは、入り口のガラスのドアを開けると、幅の狭い階段だけがあった。二階以上が客室だった。エレベーターがないから、その狭い急な階段をスーツケースを引きずりあげるのに、喘いだものだが、二回目からは下から声をかけると若いフロントの手伝いが飛んできてくれた。「あ、きたきた。ほいほい ...

続きを読む