郷 崇倫

(ごう・たかみち)

オレンジコースト大学、カリフォルニア州立大学フラトン校、横浜市立大学にて、アメリカ社会の歴史、日系人社会の歴史を含めるアジア大洋州系アメリカ人社会のを学ぶ。現在はいくつかの学会に所属しつつ、独自に日系人社会の歴史、とりわけ日系人社会と日本社会を「つなぐ」ために研究を継続している。また外国に「つながり」をもつ日本人という特殊な立場から、現在の日本社会における内向き志向、さらには排外主義の風潮に警鐘を鳴らしつつ、日本社会における多文化共生について積極的に意見を発信している。

(2016年12月 更新)  

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日系人社会における市民権の問題について:「N・R・A・の米國」を読んで思ったこと

ロサンゼルスで1931年に加州毎日新聞社を立ち上げた藤井整は、1934年11月に「N・R・A・の米國 附在米日本人の産業」を出版しました。1 彼がこの本を出版した主な目的は、世界恐慌のさなかに、アメリカ政府が打ちだしたニュー・ディール政策の詳細や当時の国際関係を、日系人社会に伝えるためでした。

藤井整はこの本の冒頭において、このように記しています。

この拙著を
在米幾十年の尊敬する先輩各位
親愛なる同胞諸氏
および
わが親しき友人達
愛する第二世諸君
に捧ぐ

この本は、日本語を母語とする一世にとって ...

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意外と知られていない大相撲における日系人の活躍

「巨人、大鵬、卵焼き」
「江川、ピーマン、北の湖」

これらは、昭和時代の日本社会で流行した言葉です。当時、大相撲は野球と並び、大衆の娯楽を代表するものでした。

これらの流行語が一世を風靡してから、数十年が経ちました。悲しいことに、現在の日本社会では、大相撲の人気が低迷しています。貴乃花親方を中心としたグループが抜本的な改革をさけぶ一方で、ここ数年、力士や関係者らによる不祥事がマスコミをさわがせました。そして、2011年の春、本場所の開催が中止となり、代わりに技量審査場所が開催されるという、異例の事態が起こりました。

以来 ...

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日本建築の美しさを世界に―中谷新七と桑港の日本庭園

今から5年ほど前、わたしはロサンゼルス郊外に住む広島県系(廿日市)の日系二世、中谷カツヤさんに会う機会がありました。初めて彼の自宅を訪れたとき、初対面にもかかわらず、みずからの人生経験を詳細に語ってくれたこと、日本の親族のことを紹介してくれたことをよく覚えています。

今回は中谷家のエピソードのひとつとして、桑港(サンフランシスコ)の日本庭園について紹介します。

桑港の日本庭園には、茶屋、鐘楼(しょうろう)の門、鳥居、太鼓橋があります。実はこれらの建築物は、中谷さんの曽祖父、新七(しんしち)さんによって造られたものなのです ...

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日系人社会における「分裂」について

今回は、誰もが言及したくない話題について、あえて言及したいと思います。その目的は、読者にたいして特定の考え方を押しつけるためではなく、現在進行形で発生している問題の「核心」について一緒に考えてみたいからです。

今年7月、南加のグレンデール市(Glendale)の公園に、韓国系、アルメニア系の働きかけのもと、「慰安婦の少女像」が設けられました。建立の式典には、公民権と戦時補償のための日系人組織(Nikkei for Civil Rights and Redress)から代表のキャシー ...

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アジア系アメリカ人研究―その誕生から現在まで

2009年5月26日、長年にわたって多発性硬化症と闘ってきたロナルド・タカキ先生が、自らの命を絶ちました。彼がおよそ四半世紀にわたって闘病生活をしていたことはすでに人々の知るところではありましたが、突然の訃報に、多くの人々が驚かされました。

タカキ先生は、アメリカ社会におけるアジアや大洋州につながりをもつ人々ついて研究する学問、アジア系アメリカ人研究(Asian American Studies)の発展・確立に貢献した人物のひとりです。そして、彼の発表した“Strangers from a Different Shore”(1989年発表)と“A ...

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