森 美子

(もり・よしこ)

ジョージタウン大学東アジア言語文化学部准教授、日本語プログラム主任。南山短期大学英語学科、南山大学外国語学部英米学科卒業後、愛知県と東京都で高校の英語教諭を勤める。その後渡米し、オハイオ大学言語学部大学院で修士号、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校教育学部教育心理学科大学院にて博士号を取得。専門は心理学的見地から見た第二言語習得。

(2012年10月 更新)

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第20回メキシコ日本語教師合同研修会を終えて - その2

その1>>

多言語環境で育つ子ども達が一世と違うところは、個人の中で複数の言語と文化が融合した独自の存在だという点です。

日本語、スペイン語、どちらの言語・文化も彼らの一部なのです。従って、二世以降の子どもたちを、一世が持ちがちな日本人かメキシコ人かというような二者択一的なアイデンティティー観で捉えることに無理が生じてきます。多言語環境で育つ子どもたちには、多言語話者、多文化が融合したアイデンティティーを持つ個人としての自尊心を育てるような支援が必要だと思います。

放っておくと社会の主要言語に押されてしまいがちな継承語を維持、発展させていくには、家庭、教育機関、継承語コミュ二ティーが連結し、それぞれが違った役割を果たさなければならないと言われています。

家庭の最も大切な役割は、何と言っても、子どもの言語発達の確固たる基盤を作ることです。なぜなら、乳幼児期の豊かな言語体験が就学後の二言語発達に大きく関わってくるからです。子どもの言語発達の基盤を作るには ...

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第20回メキシコ日本語教師合同研修会を終えて - その1

JICAと日墨協会の招きを受け、2011年10月29日から30日の二日間、第20回メキシコ日本語教師合同研修会に参加しました。研修会前日の28日には日本メキシコ学院と中央学園を訪問し、これからのメキシコ社会を担う子ども達が熱心に日本語を学んでいる様子とそれを支える学校関係者の方々のご尽力を見学させていただきました。

私はメキシコの日系人社会については予備知識がほとんどなく、JICAメキシコ事務所の室澤所長から、メキシコはブラジルなどに比べると規模が小さく、米国やカナダと状況が似ていると伺っているだけでした。しかし、実際にメキシコを訪れてみると、そこは米国以上に活気に溢れ、日本語を次世代に継承して行こうという日系人の方々の意気込みを感じました。

言うまでもなく、メキシコはスペイン語が社会の主要言語であり、日本語は少数言語、主に日系人の家庭で使われる言語として位置付けられています。これは、スペイン語習得は社会的教育的に支援されるけれども、日本語習得は支援が少ないということを意味します。社会的支援のない継承語は、放っておくと三世代で自然消滅すると言われています。

日本語を母語とする移民の親を持つ二世は、家庭では日本語を使わざるをえないでしょうが、学校教育は現地語で受けますし ...

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