和泉 真澄

(いずみ・ますみ)

同志社大学言語文化教育研究センター准教授。博士(アメリカ研究)。主要研究課題は、アメリカおよびカナダの日系人の第二次世界大戦後のコミュニティ文化史。日系人強制収容、ロサンゼルスおよびバンクーバーの日系人コミュニティの再建、北米における太鼓の歴史などに関して、論文多数。主著は『日系アメリカ人強制収容と緊急拘禁法―人種・治安・自由をめぐる記憶と葛藤』(明石書店、2009)。

(2010年3月 更新)

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太鼓の歴史 - その2

>>その1

日本同様、アメリカでも太鼓は儀礼的な文脈から切り離されることによって、その機能が劇的に変化しました。1969年の夏、ロサンゼルスの洗心寺において、盆踊り終了後、太鼓を片付けていた開教師マサオ・小谷師と、寺の檀家の一人ジョージ・アベ氏がふと太鼓を打ち始めました。数時間後、豆が潰れて手から血を流しながら、二人は「これは面白いぞ!」と思いました。祖先の文化の継承と日米文化の混ざり合った独自の文化表現を同時に目指していた他の日系三世たちも、すぐにこの二人に加わりました。こうして、日系アメリカ人による日系アメリカ人のための最初の太鼓集団、緊那羅(キンナラ)太鼓が生まれたのです。

それを一年遡る1968年、日本から戦後にアメリカに移住してきた田中誠一氏が ...

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太鼓の歴史 - その1

人類文明のなかで、打楽器はおそらくもっとも古い楽器だといえるでしょう。事実、打楽器は書き言葉よりも昔からあると考えられています。たとえば、ナイジェリアのヨルバ地方では何千年もの間、ドラムが言語の代わりに使われてきました。ドゥンドゥン、またはトーキングドラムと呼ばれる太鼓は、2マイル先まで音が届きます。さまざまな近代テクノロジーが発明されるずっと以前から、ヨルバ族の人々は、トーキングドラムを使いリレー式にメッセージを伝えることにより、テレコミュニケーションを実現していたのです。

日本の「大きな太鼓」、和太鼓もとても長い歴史を持っています。太鼓は、ほかの文化財とともにアジア大陸からわたってきた人々が日本に持ち込んだと考えられています。日本最古の太鼓は、縄文時代(紀元前1万年~紀元前300年)の遺跡から考古学的発掘により発見されています。土器でできた太鼓や太鼓を打つ埴輪は ...

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