波雅 文人
(はが・ふみひと)
ブラジルの日系社会とはまだ3年あまりのつきあい。「旅行者」ではないものの、「移民」でももちろんない中途半端なかかわり。移民とその子孫へ一方的に関 心を向けているうちに、自分が「日本人」であることを繰り返し問われる破目となって自己解体中。現在日本在住。少し距離を保ってブラジル日系社会について 思いを巡らしてみる。
(2008年12月 更新)
この執筆者によるストーリー
第2回 日系二世という「種族」 その1
2009年3月5日 • 波雅 文人
ルイーザさんは、少なくとも仕事相手としては、きわめて第一印象の悪い人だ。ぶっきらぼうというのか、人によったらけんか腰に感じるのではないかと いうような態度を、わけへだてなく、誰にでも初対面から容赦なしにとるものだから、会った途端にルイーザさんの人柄に魅了される人などまずいそうにない。 私はやや例外的だったと言えるが、それは何も私の心が特別に広いといったことではなく、私がルイーザさんとは正反対の自他共に認める八方美人的人間だから だ。好んでそうしているつもりではない私には、ル…
第1回 しょせん腰かけの辞
2008年12月18日 • 波雅 文人
連載タイトルの由来からはじめることにしよう。話は少しだけ遠いところからはじまる。 高名な民俗学者と付き合いのあった出版社の主人が書いたエッセイ集を読んだことがある。『本屋風情』というタイトルがその本につけられた理由が、確かその巻頭の一文に記してあった。かなりあやふやだが私の記憶の中には、こんな話になってしまいこまれている。 その大先生に何か出版の計画があるというので主人は料亭に呼ばれる。主人を呼んだのは大先生本人ではなく弟子か何かである。料亭に着いて部屋に近 づいたところで…