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日系人とは?田中克之・海外日系人協会会長との対談より

田中克之海外日系人協会会長

2022年5月にメキシコのサンルイス・ポトシ市で開催された第15回日系人大会で、私たちが持つ「日系アイデンティティー」に関する概念を見直すため、私は海外日系人協会の会長田中克之氏に話を伺いました。時とともにそれがどのように発展してきたかを知ることは興味深く、また把握すべきことでもあります。このテーマに関心を持つすべての人がその新しい概念を理解し、私たちの国のコニュニティーに徐々に広めていくべきであると考えています。


海外日系人協会の主な役割は何ですか?

海外日系人協会会長としての私の任務は、海外日系人大会やJICA日系人奨学生のための研修プログラムなど、当協会のプロジェクトを確固たる方法で、明確に実施・運営することです。同様に、日本においては、在日日系人学生の指導や在日日系人への支援を行っており、在外日系社会との広報活動を通し、日本人移民に関する一般的な知識を広めることを目指しています。

海外日系人大会は、第二次世界大戦後、海外にいる日系人から送られた支援に対する感謝を表すために始まったことを強調したいと思います。戦後(1946年ー1952年)、アメリカ、カナダ、メキシコを含む中南米の国々から、「ララ物資」(LARA:アジア救援公認団体 [Licensed Agencies for Relief in Asia])と名付けられた食料、衣料、医薬品などが日本へ送られ、その額は約400億円に達しました。この支援の20%がアメリカ、カナダ、メキシコを含むラテンアメリカの日系人からのものでした。

これらの支援に対し、日本は国会議員の指揮のもと、1957年東京で「海外日系人親睦大会」を開催し、深い感謝の意を表しました。1960年には「第二回海外日系人大会」という名称のもと、海外日系人協会がこの大会の運営を担いました。

日系人がそれぞれの国で果たすべき現在のまたは将来の理想的役割は何だと思いますか?

私が日系人に期待することは、日本文化や社会に関心を持ち続け、日本を理解し、良き市民として自国の発展に貢献することです。また、世界中の日系人と絆を深めるため、自国と日本との懸け橋となっていただきたいと思っています。

あなたにとって日系人とは何ですか?

「日系人」という言葉は日本以外の国に移住し、移住先での国籍または永住権を取得した日本人とその子孫をさすのだと思います。また、日本において、前述の日本人の配偶者とその子孫を含むという考え方、日本人の血を引いてなくとも、日本社会の活動に関心があり、積極的に参加している人も含めるべきだという考えが存在することも認識しています。

日本人の血を受け継いでない、すなわち日本人の子孫ではない人でも、日系人らしい振る舞いをし熱意のある人を日系人とみなすのでしょうか。

今後その可能性は増加していくと思います。実際にJICAは数年前から日系人向けの研修プログラムに、こうした方々を日本に招待しています。


いつ頃から、海外の日本人の子孫を指す「ニッケイ」という言葉が存在していますか。

そのことに関して明確な答えを持ち合わせていませんが、日本語で書かれた文献では、1928年アメリカのシアトルで発行された『北米年鑑』に「日系市民」という用語が出てきます。また、「日系」という言葉は、『ニューヨーク便覧』の中に初めて出てきます。


可能であれば、これまでで最も優れていると思う日系人を
5名、挙げていただけますか。その理由もお教えください。

ダニエル・イノウエ上院議員、米国商務長官ならびに運輸長官を務めたノーマン・ミネタ氏、ペルーのアルベルト・フジモリ元大統領、パンアメリカン日系人協会の創立者であるカルロス・春日氏の名前は、聞いたことがあると思います。さらにこうした方々以外にも、スポーツ、文化、芸術、経済、科学分野で傑出した人たちは大勢います。しかしながら、これらの方々を公平に評価する基準が存在しないので、5人の傑出した日系人のお名前を挙げるあげることはできません。


先のオリンピック開会式では、八村塁選手が旗手を、大坂なおみ選手が聖火最終ランナーを務めました。このような日系人アスリートの活躍は、あなたにとってどんな意味がありましたか。

東京オリンピック2020の開会式を見ながら次のことを感じました。二人の日本人アスリートはそれぞれ、日本が誇るバスケットとテニスの世界的選手です。この二人が旗手と聖火最終ランナーを務めたのはふさわしい選択だったと思います。日本社会は、国際化(国際結婚を含む)と多文化共生が急速に進んでいますからね。


現在日本に住む日系人についてのご意見をお聞かせください。

多くの日系人は日本の人手不足を解消するため、1980年代半ばに労働者として日本へやってきました。日系人とその家族の数は現在30万人。結果として日本は、ブラジル、アメリカに次ぐ第三の大きな日系コミュニティーを持つことになりました。ですから日系人もまた、国の経済発展や国際化、異文化、異人種間の共生に貢献してきたと言えると思います。


すべての日系人コニュニティーへのメッセージをお願いします。

私にとって日系人とは、多くの困難を乗り越え、各々の国の発展に寄与して来た人々のことです。彼らは日本という国を理解し、自国の住民に(日本の)文化や価値感を広めてくださった方でもあります。日本が自然災害など困難に直面した時、いつも最初に日本へ支援の手を差し伸べてくれるので感謝しています。

(左から)筆者、田中会長、カルロス・春日氏(日系パンアメリカ名誉会長)、アメリア・ユビ・ウナス(1952年ヘルシンキオリンピックに参加した初代日系メキシコ人)、ダニエル・ゴメス・タナマチ(ロンドンおよびリオデジャネイロオリンピックに参加した日系フェンシング選手)


最後に

現在の「日系人とは誰か」という概念は、私たちの生きる時代にあわせ変化してきました。世界における日系人分布も変化しており、将来、新しい時代の流れの中、新しい概念が生まれることは確実です。すべての日系人を繋いでいる日本の文化、言葉、習慣への興味を、我々日系人は失わないでほしいと思っています。また、国籍に関係なく、常に感謝の気持ちを忘れず、必要な時には日本の助けになりたいと願っています。というのも、日本は1世紀以上前に各国へ移住した私たちの祖先の故郷で、そんな日本には今、勉強のために滞在している人もいれば、一時的に定住または永住している人がたくさんいるからです。

 

© 2022 Alberto Teramoto

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