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元米商務長官・運輸長官 ノーマン・ミネタさん ー その2

バラク・オバマ元大統領と(写真:ノーマン・ミネタ)

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「全機を今すぐ着陸させろ!」

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件発生時、運輸長官だったミネタさんは連邦航空局(FAA)の民間航空保安対策室(ACS)と連絡を取り、旅客機が通常の運航を再開できるようにするための新しい保安計画をまとめ始めた。しかし、その最中に国防総省本庁舎に3機目が突入。FAAと電話中だったミネタさんは、「この1時間半で民間機がミサイルに使われたのはこれが3機目だ」と言い、すぐに方針を変更して思い切った措置に出る。

「スタンドダウンだ。全機を今すぐ着陸させろ!」

軍隊にはスタンドダウン(一時停戦)という、全てを急停止させる作戦がある。1つに集中するために、それ以外の予定は取りやめる必要があったとミネタさんは説明する。

その時、米国領空には6,438機が飛んでいた。「パイロットの判断で全飛行機を降ろすのか?」と聞かれたミネタさんは、「パイロットの判断なんてどうでもいい!」と叫んだ。

「たとえばアルバカーキやフェニックスの上空を飛んでいるパイロットが、帰宅したいからと元の行き先のロサンゼルス上空まで飛び回るようなことがあっては困ると思いました。パイロットは、その飛行機の大きさによってどこの空港で受け入れてもらえるかわかっているので、できるだけ早く飛行機を着陸させるよう要求しました」

この判断は正しかった。2時間20分で6,438機を大きな事故もなく安全に着陸させることができた。

「航空管制官、飛行機の操縦室、パイロットの相互連携は素晴らしいものでした。どこに着陸するのか全くわからない乗客を落ち着かせなければならなかった客室乗務員も見事な働きぶりでした」

左から妻のダニーリアさん、ブッシュ元大統領とローラ夫人、ミネタさん(写真:ノーマン・ミネタ)

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問題は、私たちのことを何も知らない人によって私たちのことが決定されるということ。決定された ことが必ずしも私たちにとって最善とは限らない。

—ノーマン・ミネタ


未来を担う若い世代に伝えたいこと

ミネタさんが今、若者に呼びかけているのは、ボランティア活動への積極的な参加だ。「これから長いキャリアが待ち受けている若者にこそ、ぜひボランティア活動をして欲しい。今後の人生を左右する大きな決断を迫られたとき、その経験がきっと役に立つはずです」

また、誠実であり続けることの大切さにも言及する。「何事にも誠実でなければ尊敬されず、決定しなければならないことに関して信頼されません。長期的に良い目標を持っていながら、これが守れないために途中でつまずく若者が多いように感じています」

ミネタさんは、政治活動にもっとかかわって欲しいとも話す。それは必ずしも政治家になることとは限らない。

「自由な民主社会にはさまざまな市民がいて、公職に立候補する人は全体の1~2%程度でしょう。つまり、それ以外に99%近くの市民がいるということです。誰でもキャリアや仕事の目標を追求しながら、少し時間を確保して、市や郡、州、国の政府に、『私はこの分野の専門家なので、役員または委員を務めたい』と言うことはできます」

アジア太平洋系アメリカ人の声を届けるためには、こうした市民の政治参加がカギとなる。

「問題は、私たちのことを何も知らない人によって私たちのことが決定されるということ。決定されたことが必ずしも私たちにとって最善とは限らないのです。公職に立候補する必要はありません。ボランティアとして参加し、私たちの要望やニーズを認識してもらうことで、将来的により良い結果を生み出せるのです」

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(写真:ノーマン・ミネタ)
ノーマン・ミネタ(Norman Mineta)

カリフォルニア大学バークレー校卒。米陸軍に入り、情報将校を務める。1971年、ハワイを除く米本土では日系人として初めて、大都市サンノゼで市長に当選。1974年には、やはり米本土では日系人として初めて米下院議員に当選する。2000~2001年に民主党ビル・クリントン政権で商務長官、2001~2006年に共和党ジョージ・W・ブッシュ政権で運輸長官を務める。

 

* 本記事は『北米報知』10月25日号に掲載された英語記事を一部抜粋、意訳したもので、「SoySource」(2019年11月7日)からの転載です。

 

© 2019 Randy Tada, North American Post

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