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国際日系デー:2018年6月20日

伊佐ウルビナ正と比嘉アンドレス

随分前から日系関連のフェイスブックで、二人の若い日系人が気になっていた。一人はアルゼンチン出身の比嘉アンドレス、もう一人はペルー出身の伊佐正(いさ・ただし)アンドレスだ。二人とも沖縄に在住しており、自分たちのルーツであるウチナーンチュ(沖縄の人)の存在とアイデンティティーを世界中の人々にもっと知ってもらいたいと活動していた。彼らは学生のときから活動を続けており、多大な努力の結果、数年前ついに、10月30日を「世界ウチナーンチュの日」と制定することができた。

我々のほとんどは、「世界ウチナーンチュの日」が制定されたことしか知らないが、長い道のりを経てようやく制定にこぎつけた。彼らの熱意ある活動を応援する人が少しづつ増え、沖縄にルーツを持つウチナーンチュに喜びを与えるだけでなく、海外在住の日系人からも賛同を得るようになった。世界中の日系人からも支持を得られたことは、彼らにとって驚きだったという。この二人の若者は、他の若者同様に自分たちの余暇を自分たちの楽しみにのみ使うこともできたが、自らのルーツに対する思いと愛情をもって、彼らは多くの人と会い、様々な機関にその考えを紹介し、時には全く理解を得らえなかったこともあったが、地道に活動を続けた。

この若き二人の努力と志のおかげで、すべてのウチナーンチュは自らのルーツを自覚し、世界には多くのウチナーンチュがいるということを認識するきっかけを得ることができた。しかし、彼らの活動はそれだけでは終わらなかった。彼らは、6月20日(1868年、明治元年のその日に日本人移民がハワイに到着した日)をウチナーンチュだけでなく、すべての日本人の子孫すなわち日系人の「国際日系デー」を制定されるよう活動を始めたのだ。そして、2018年6月にハワイで開催された海外日系人大会で、この日は新たな記念日として宣言された。

2017年のリマ・パンアメリカン日系人大会COPANIで、アンドレスと正の「国際日系デー」案が採択された。

そもそも「ニッケイ」とは何であろう。広義の定義では、海外に移住した日本人とその子孫であるが、それ以上の意味を含んでいると私は考えている。例えば、日本に対する思いや日本人の持つ価値観、共通する体験や習慣、食べ物などを共有できる人たちのことでで、国籍も混血化による顔立ちも関係がない。

ほんの少しでも日本人の血を持っているのであれば、日系になりうるなのだ。我々が日系人として内に秘めているもの、また曽祖父母から祖父母、そして両親へと受け継がれてきた思いや行動パターンなどが、日系人の要素を作り出す。いつどこでどのような環境で自らのアイデンティティを見つけたかは問題ではない。日系人としての価値観例えば、勤勉さや誠実さ、忍耐強さ、そして忠誠心といったものが、日系人として我々の中に秘めているのだ。

これらをよりよく理解するためには、自分たちの未来を築くために日本から海外へ渡った祖父母らの歴史をたどることが大事である。初期の移住者らはいかなる仕事をもこなしてきた。彼らの多くは農業などに従事し、夏も冬も問わず長時間、過酷な労働をやり遂げてきた。私の義母は、「農夫として農業経営者のために尽くす」というのが口癖だった。たとえどんなに大変な仕事であっても、一生懸命働き、あまり報われなくともその期待を裏切らないように尽くしたのである。

初期の移民は、他人の何かを奪うこともなく、誠実かつ忠実で真面目に一生懸命働いた。多くの不正義や差別にも見舞われたが、めげずに立ち上がり、威厳を保ち続けた。彼らは、家族や友人・知人との間でいろいろなものを分かち合うことの大切さを教えてくれた。オバ(祖母のことを指すことが多い)は、困った人がいれば人種や経済、社会的地位を問わず、その人を家に招きいれた。一人分多くの食事代がかかったとしても、ゲストが居心地よく過ごせるよう気づかいを怠らなかった。そして、その定住先の社会に溶け込むため、その土地の習慣を身につけ、ときには宗教をも取り入れ、そこを新たな故郷にし、その一方日本の伝統やしきたり、ルーツを忘れずに先祖を敬ってきたのである。

こうしたことすべてが日系人であると私は考えている。いかなる国にも適用し、他の国の日系人と出会うとそこには何らかの懐かしさや安心感があり、昔から知っているかのように感じて、家族の一員のように接してしまう。違いといえば国籍だけで、習慣や家族体験など分かち合えるものがあるからだろう。

だからこそ、今回「国際日系デー」が認定されたことはとても重要なことであると私は思っている。日本人移住者は海外で、自らの家庭を築き、多くの犠牲と苦難を乗り越えて、我々にたくさんの教訓を教えてくれた。そして世界の日系人が共有できる手本となる価値観の大切さや互いに協力しあって自分の国や社会に貢献し続けることことの重要性を、この「国際日系デー」は改めて認識させてくれているからだ。

この沖縄在住の二人の日系人は、常に他の若者とも交流しながら、意見交換をし続けている。アルゼンチンのCOPANI(パンアメリカン日系人大会)代表であるルカス・コスカレリ・メトルマは、数年前に沖縄でこの二人に会った。その際、各国の日系コミュニティーで毎年この「国際日系デー」を祝うこと、スペインの王立国語辞典に「Nikkei」という言葉を認めてもらうよう申請することなどを提案した。これは素晴らしいアイデアであり、みんなそのことを望んでいるに違いない。将来、彼の提案が実現する日が来るだろう。この二人の運動に新たに参加したルカスは、アルゼンチンの日系人で、祖父母は沖縄の宮城島出身(現在のうるま市)だ。

伊佐正、ルカス・コスカレリ・メトルマ(アルゼンチンの日系人。「nikkei」という言葉をスペイン王立国語辞典への導入を提案)、比嘉アンドレス。沖縄にて。

国際日系デー、おめでとう!

 

© 2018 Roberto Oshiro Teruya

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