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「トランスパシフィック・ボーダーランド」展: アーティスト竹田信平の舞台裏

2017年9月17日、全米日系人博物館で行われた「トランスパシフィック・ボーダーランド:リマ、ロサンゼルス、メキシコシティー、サンパウロにおける日系ディアスポラのアート」展のオープニングイベントで、多分野で活動するアーティスト集団、ゴースト・マグネット・ローチ・モーテルのメンバーとしてパフォーマンスをする竹田信平。(写真:リチャード・ワタナベ)

「僕の作品は、メガホンのように何かを話しているようだと言う人もいます」と竹田信平は語る。「それから網のように何かを捕まえようとしているように見えると言う人もいます。(その二つは)まったくの別物ですが、両方になり得るというのはいいですね」。

完全に異なる視点をつなぐことは、竹田氏にとって珍しいことではない。映像、写真、音楽、パフォーマンス、絵画、織物、書といった多様な媒体を使って活動するビジュアル・アーティスト・映像作家である竹田氏は、多様性の真価を知っている。

一方で竹田氏は、世界の異文化に対する独自の幅広い視点も提示する。日本で生まれ、メキシコとドイツに拠点を置き活動する竹田氏は、より一層グローバル化の進む社会を象徴している。現在竹田氏は、全米日系人博物館で開催中の「トランスパシフィック・ボーダーランド:リマ、ロサンゼルス、メキシコシティー、サンパウロにおける日系ディアスポラのアート」展に現代美術家として参加している。この展示は、南カリフォルニアの70か所の文化施設で行われているゲティ財団主催の「パシフィックスタンダードタイム:LA/LA」の一環として開催中だ。

「トランスパシフィック・ボーダーランド」展は、ラテンアメリカおよび南カリフォルニアのラテンアメリカ・コミュニティーの日系人アーティストの経験を考察し、日本、ラテンアメリカ、南カリフォルニアのコミュニティに絡み合う、捉えどころのない脈略(threads)を探求している。視覚的に印象的で、他の素材と共に文字通り糸(threads)を使ったこの作品は、展示の入り口を飾るにふさわしい。

写真:Todd Wawrychuk

「タイトルは『Politics of Displacement: (Beta Decay 8)[移動の政治:(β崩壊8)]』 です。2013年にβ崩壊シリーズとして始めた、糸を使った作品の一つです。このプロジェクトは、住民のほとんどが織り手というオアハカ州のテオティトラン・デル・バジェのTaller 8(非営利団体)で滞在制作をしていた時に始めました」。

「織りの土台として使われる下地の糸の美しさに胸を打たれたんです。僕はそれをキャンバスに見立てました。つまり、織物になる以前の、古代の原始的な形としてのキャンバスです。糸の一列一列を時間軸、または個人の人生に見立て、その上に絵や文字を描きました。この作品には文字が書かれています。そしてその根底には、僕が南北アメリカで行った大勢の被爆者(第二次世界大戦中に被害に遭った日本人)へのインタビュー調査があります」。

竹田氏は、自身の国際的な役割や、「トランスパシフィック・ボーダーランド」などの異文化プロジェクトから与えられる機会についても熟考している。「今回は展示の枠を超えることに(運営側が)前向きだったことがとてもうれしかったです。ティフアナに拠点を置く者として、自分の役割は北米と南米の橋渡しをすることだと思っています」。

さまざまな地域を旅する中で竹田氏は、文化が異なれば、「現実、特に政治的情勢についての見方がまったく異なる」ことを知る。日系の人々に向けられる目も例外ではない。「一般化することはとても難しいと思います。だからこそ担当の学芸員は、地域をメキシコシティー、サンパウロ、リマといった特定の都市に慎重に限定したんです。メキシコだけ見ても、ティフアナとメキシコシティーでは全然違います。日系人の受け止められ方も違うんです」。

竹田氏は、文化的な事柄を比較する時、国単位ではなく都市単位で考えることを好む。「僕が2008年に制作した映画『The Closest Mexico to Japan(日本に最も近いメキシコ)』は、1920年代のティフアナ初の日系人写真家であるキンゴ・ノナカと、ティフアナにおける戦前の日系コミュニティの繁栄を描いています。僕が時々拠点にしているドイツのデュッセルドルフには、1960年代から大規模な日本人コミュニティがあります。僕が育った1990年代は日本のバブル絶頂期で、日本人が通りを独占し、日本の店だらけでした。でも今はそうではありません。米国でも、サンフランシスコとロサンゼルスではニッケイ人の受け入れられ方は違いますよね。日本人移民について興味深いのは、彼らの地元とのつながり、“ミクロの文脈”です」。

移民は、アイデンティティに関わる複雑かつ混ざり合う感情をいや応なく生み出し、それが彼のアートを刺激すると竹田氏は語る。「僕の作品には、常に葛藤が存在します。所属を望む気持ちと望まない気持ちの狭間にある葛藤、歴史と現在が交差することで生じる、相反する力の間にある葛藤です」。

過去と現在を探る中で、竹田氏は、最終的にアートは未来に影響を与えることに気付く。そして国際的な異文化プロジェクトは、他ではなし得ない方法で、地理的、文化的境界を越えられることを知る。「僕はどんな世界を望むか、という提言も(作品に)込めようとしているところです」。

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2018年2月25日(日)全米日系人博物館にて竹田信平とキュレータークレメント・ハナミが、国境を超える社会的表象と文化的文脈をテーマに対談します。司会は、インディペンデント・キュレーター兼ゲティ財団プログラム・アシスタントのセレネ・プレシアードが務め、観覧者との質疑応答も予定しています。

詳細は janm.org をご覧ください。

 

© 2018 Darryl Mori

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