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シアトル・宇和島屋物語 ~ The Uwajimaya Story

第2回 “日本”が味わえる

シアトルで暮らす日本人、日系人なら「Uwajimaya(宇和島屋)」の名前を知らない人はいない。日系でなくても、さまざまな人種が生活するシアトルのアメリカ人でも、その知名度は高い。

1970年代からアメリカでは、ヘルシーブームで豆腐(トーフ)が好まれ、同時に寿司をはじめ日本食に対する関心は徐々に高まっていった。これに伴いお米やしょうゆなど基本的なものは多くのスーパーで扱われている。

しかし、まだまだ品ぞろえとなると日本の食品を軸にしている店に行くしかない。シアトルでは、ダウンタウンから少し離れたところにMaruta Shoten(マルタ商店)といった日本の食品・食材を扱う店や、日本だけでなくアジア系の食材をそろえた店はいくつもある。

そのなかで、インターナショナル・ディストリクトといわれる繁華街の一角に店を構えるUwajimayaは、品ぞろえでは群を抜いている。にぎやかなダウンタウンからは徒歩圏だし、すぐ近くに長距離路線の鉄道アムトラックのキングストリート駅があり、メジャーリーグ、シアトル・マリナーズの本拠地であるセーフコ・フィールドも近い。

Uwajimayaが入る建物(Uwajimaya Village)は、ベージュにピンクがかったやさしい色合いの外壁で、正面には色鮮やかなブルーの瓦屋根があしらってあり、その上には「Uwajimaya  Asian Food & Gift Market」の文字が見える。店先にはときに天津甘栗の出店をおくなど日本情緒を感じさせる趣向も凝らしている。周辺には店舗やレストランも多く駐車スペースを求めて買い物を兼ねてUwajimayaの駐車場を利用する人も多く、年末などは車がひっきりなしに出入りするほどにぎわいを見せている。


「ボンタンアメ」が目立つところに  

現在、Uwajiamayaは、シアトル市内のほかワシントン州では、シアトル近郊にあって日本企業の駐在員などが多く暮らすべルビューというまち、同じく近郊のレントンに店を構えている。また、南隣のオレゴン州のビーバートンでも1998年に紀伊国屋書店とのパートナーシップで開店している。 

核となるシアトル店は、店舗面積が約3250平方メートル(985坪)というから60メートル四方より少し狭いくらい。日本でいえば総合スーパー(GMS)の店舗の売り場といった感じだ。

肉、野菜、魚の生鮮食料品をはじめ加工食品などふつうのスーパーにある食料品が並ぶが、もちろん特徴は日本をはじめ、中国、韓国、ベトナム、タイ、インドネシア、フィリピンといったアジア諸国からの商品にある。そばやうどん、インスタントの味噌汁やスナック菓子など、たいていのものはそろっている。

日本の食品がずらり。Uwajimayaシアトル店で。(写真提供:北米報知

おもしろいのは、日本の菓子のかなでなぜか昔ながらの「ボンタンアメ(Botan Ame rice candy)」を、代表的な商品の一つとして置いているところで(ホームページにも記載)、独特な日本色を醸し出している。ときに海外にある日本的なものは、日本より日本的なところがあるが、これもその一つだろう。


おせち料理の注文も

近年、日本酒(Sake)が世界に広まっている。海外の日系のスーパーでも日本酒の品ぞろえを豊富にしている。Uwajimayaでも種類は豊富で、ワイン、ビールはもちろんのこと日本各地の地酒ブランドがずらり並んだ棚がある。食材については、日本料理に興味をもっていて自分で料理をしてみようと素材を買い求めるアメリカ人の顧客が、なにを使ったらいいのか、あるいは料理方法がわからない場合には、店内のスタッフがアドバイスしてくれる。

肉の売り場では、日本では当たり前だが、一般のアメリカのスーパーでは見られない商品がある。

「パックに入った薄く切ったお肉があったので、すきやきにするときにとても便利でよく買いました」

と、長年シアトルで暮らし、昨年帰国した日本人の女性は言う。しゃぶしゃぶ用の肉も注文に応じて切ってくれるという。

もうすぐ新年を迎えるが、年末にはおせち料理が並び、“重箱”の注文も受け付けている。黒豆、伊達巻などをつめた「Osechi Ryori - Japanese New Year Good Luck Food」として、59ドル95セントで売られている。正月になれば、店内も日本の正月ムードを演出することになるはずだ。

おせち料理も並ぶ。Uwajimayaシアトル店で(写真提供:北米報知

 

© 2017 Ryusuke Kawai

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このシリーズについて

アメリカ・ワシントン州シアトルを拠点に店舗を展開、いまや知らない人はいない食品スーパーマーケットの「Uwajimaya(宇和島屋)」。1928(昭和3)年に家族経営の小さな店としてはじまり2018年には創業90周年を迎える。かつてあった多くの日系の商店が時代とともに姿を消してきたなかで、モリグチ・ファミリーの結束によって継続、発展してきたその歴史と秘訣を探る。

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