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折り紙と平和:日系アメリカ人の視点で見る広島の折り鶴  

「私はいつも友人たちに、日本文化では全ての小さなことが何かを象徴し、意味していると好んで伝えてきました」と言うリチャード・ワタナベさん。

リチャード・ワタナベさん

ロサンゼルスの全米日系人博物館(JANM)で15年間ボランティアをしているワタナベさんは、広島訪問から最近戻ったばかりです。第二次世界大戦中に破壊的な原子爆弾が投下された広島は、平和を象徴する折り鶴で国際的に知られるようになりました。

南カリフォルニア大学ケック医学校の予防医学および生理学・生物物理学分野の教授であるワタナベさんは、人類遺伝学の学会で日本を訪れた時、広島やその他の地域の先祖ゆかりの土地に足を運ぶ時間を作りました。 

「私の両親は2人とも広島にルーツがあります。私は四世で、父方の曽祖父は官約移民期(1800年代後半に日本政府がハワイに契約労働者を送った時期)に渡米しました。父方の祖父は、父がまだ小さかった頃、家族を連れて広島に戻りました。その後父は、1950年代前半まで米国に戻りませんでした。私の母は日本人で、広島出身です」

「私はこの機会にお墓参りをし、親戚に会いに行きました。広島で過ごした数日のうち一日は岩国を訪れ、錦帯橋や岩国城に行きました。広島には何度も行ったことがありますが、最後に訪れたのは10年ほど前でした。今回の訪問は私にとってナツカシイ旅でした」

今回の旅はタイミングが良く、ワタナベさんにとって意義深いものとなりました。2016年5月、ワタナベさんが広島を訪問した直後にバラク・オバマ米国大統領が在職中の大統領として初めて広島を訪れ、世界平和と核戦争の悲劇の遺産について重要な演説をしました。

オバマ大統領は、広島平和記念資料館を訪れ、絵本『サダコと千羽鶴』で有名な佐々木禎子の展示コーナーも見学しました。佐々木貞子は、原爆の放射能を浴び、白血病を患った子供でした。禎子は入院中、幸運と健康に恵まれることを願い鶴を折りました。日本には、千羽鶴を折ると特別な願いが叶うという言い伝えがあります。禎子は1955年に亡くなりましたが、彼女の物語は人々を動かし、後に像(原爆の子の像)が建てられ、そこには今もたくさんの折り鶴が届けられています。大統領の訪問は世界中のメディアの関心を集め、広島、そして折り鶴が改めて注目されました。

同じ月に佐々木貞子の家族は、禎子が作った折り鶴をワタナベさんがボランティアをしているJANMに寄贈しました。JANMは、禎子の折り鶴が贈られた米国西海岸で唯一の機関で、世界でも数少ない博物館です。その折り鶴は、現在博物館で展示されています。

ワタナベさんは、折り鶴の寄贈は、歴史的にも個人的にも意義深いと言います。「禎子の折り鶴は多くを象徴し、教えてくれます。私にとって最も重要なのは、戦争がもたらした犠牲を人々に伝えてくれることです。特に現代において、1945年のあの運命の日以来、スマート兵器と呼ばれる武器はかつてないレベルまで戦争を浄化しました(その結果戦争の実態が見えなくなった)。この少女は、戦争の犠牲となり、新型兵器の恐怖に直面し、自らの苦しい状況を乗り越えようと日本の伝統にすがった罪のない子供でした」  

「もう一つ重要だと思うのは、日本の伝統に感謝し、維持することです。未来の世代には禎子が折り鶴の伝統に願いを込めたことを理解し、大切にしてほしいと思います」

「千羽鶴そのものは、大切な日本の伝統を思い出させてくれる貴重なもので、それを記憶し、次の世代に伝えることは難しくありません。禎子の物語には、戦争の悲劇を未来の世代に伝える重要な役割もあります。禎子自身、そして禎子の物語のために数百万もの鶴が折られたことを考える時、折り鶴は1945年の禎子と今の世代を実質的に結んでくれます」

オバマ大統領はスピーチの中で、現在そして未来の世代には決して過去を忘れないでほしいという願いを繰り返しました。「亡くなった方々は、私たちと同じ人々でした。普通の人々はこのことを理解できると思います。彼らはもう戦争はこりごり、科学の驚異を、人生を奪うためではなく生活の向上のために使ってほしいと思っています。このような素朴な良識が、各国の選択に、あるいは指導者たちの選択に反映される時、広島の教訓は生かされるのです」

佐々木家により平和を願って寄贈された貞子が作った折り鶴

 

*寄贈された貞子の折り鶴は、全米日系人博物館にて現在ご覧になれます。2016年8月6日には、折り紙:新しい発想」の学芸員メイヤー・マッカーサーにより、貞子とこの折り鶴について説明があります。詳しい情報とこのイベントへの予約は、こちらからお願いします。

 

© 2016 Japanese American National Museum

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