ジャーナルセクションを最大限にご活用いただくため、メインの言語をお選びください:
English 日本語 Español Português

ジャーナルセクションに新しい機能を追加しました。コメントなどeditor@DiscoverNikkei.orgまでお送りください。

media

ja

「フローズン」「タングルド」のCGアーティスト、糸数弘樹さん ~ その2

「タングルド」のキャラクターでは主人公の髪の毛に一番苦労したと語る。

その1を読む >>

ワーナーからディズニーへ

1993年、糸数さんはワーナーブラザーズで修行を始めた。「当時はまだCGをやる人が少なくて、経験者も周囲にいない、教えてくれる人もいませんでした。でも見習いの立場から脱しなければという必死の思いで、夜12時近くまで会社に残って独学で学びました」

努力の甲斐あって、半年後には正社員として登用され、最初の時期はスーパーマンが主役の実写テレビ番組「ロイス・アンド・クラーク」のエフェクトを担当、映画「バットマン」シリーズではテクニカルディレクターやリードモデラーという肩書きで、バットマンがヒルから飛び降りるシーンやゴッサムシティーを構成する建物全体のCGを手掛けた。

「エフェクトの部門には20人、いや30人近くスタッフがいました。今に比べるとソフトも使いづらくて苦労しました。それでも、バットマンをやった時はエフェクトの監督として有名なジョン・ダイキストラが直接、私の横に座って指導してくれました。さらに、ブラッド・バードというアカデミー賞を受賞している監督からも個人指導を受ける機会に恵まれました」

ワーナーブラザーズでは3つの部門を経験し、1999年まで勤務した。しかし、デジタルエフェクト部門が突如閉鎖された後、ディズニーにいた友人から声がかかり、2000年にウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオにモデラーとして入社。

ワーナーとディズニーの違いについて聞くと、糸数さんは「ワーナーでやっていた時はデジタルの部門が立ち上がったばかりということもあり、良く言えばフレキシブル、悪く言えばオーガナイズされていなかったですね。ところがディズニーは個人の仕事の範囲が明確に決められていて、それをてきぱきとこなすことが求められました」と答えた。

ワーナー時代と同様に、ディズニーに移籍してからも、巨匠の個人指導を受けるという、糸数さんの幸運は続いた。

「最初に、エリック・ゴールドバーグという監督の下で、東京ディズニーシーでの『アラジン』のショーに登場する、魔人ジーニーの3Dのキャラクターの制作を担当しました。ジーニーの顔って正面と横顔がもともと違うんです。それをいかに立体にするかというのが難題で、私が入社するまではそのプロジェクトが頓挫してしまっていたそうなのです。それを私が試行錯誤の結果、違うアイデアを提供して克服したことで、エリックも大喜びして、私の仕事を高く評価してくれたのだと思います。実はディズニーシーには、いつか行きたいと思いながら一度も行ったことがないんですよ」

「タングルド」では、「リトルマーメイド」「ビューティ・アンド・ザ・ビースト」「ポカホンタス」をはじめ、ディズニーのアニメの名作でスーパーバイジングアニメーターを歴任した巨匠グレン・キーンの直接指導を受けながら、糸数さんは主人公ラプンツェルのキャラクターの立体制作を手掛けた。

「完成まで7年かかりました。R&Dの段階から始めて、主人公の顔や王様をはじめとする他のキャラクター作りを担当、特に映画の鍵となるラプンツェルの髪の毛には苦労しました。ああでもない、こうでもないと試行錯誤を重ね、やっと完成させ、私が作ったモデルをもとに、次のプロセスとなるアニメーションの担当者に仕事を引き継ぎました」


CGアーティストの後進を育成

さらにアカデミー賞を受賞した世界的ヒット作「フローズン」に「ベイマックス」と糸数さんの活躍は続いた。「フローズン」の前と後で何が変わったかと聞くと…。「知名度が一気にアップしたことです。フローズンの後は自分の名前で検索すると、いろいろな記事が出て来るようになりました。それでも『アカデミー賞作品に携わって凄いですね』と言われるたびに、以前の私は『いえいえ、たいしたことないです』と答えていたのです。しかし、そういう謙遜というのは、子どもの夢を壊すのではないかと考えるようになりました。自分が頑張った成果だ、誇らしいと最近は素直に言葉にするようにしています」

そして、ディズニーを2014年の年末に退職、糸数さんは新しい人生を歩み始めた。一つはCGオンラインスクールの運営、さらに日本の企業と提携してCGブースターという別のオンラインスクールの校長にも就任した。また日本工学院専門学校のオンラインクラスやカリフォルニア州立大学ノースリッジ校のCGのクラスでも教鞭を執っている。多忙な日々だ。

「これまでは自分の専門分野だけを知っていれば良かったんですが、教える立場になると、広い範囲にわたって最新知識を身につける必要があるので、ディズニー時代以上に勉強に時間をかけるようになりました。日本の学生と(アメリカの)ノースリッジの学生の違い?日本の学生はとにかく大人しいですね。わかってないのかな?と思うと質問をしないだけで実は理解している。他方、アメリカの学生はすぐ質問しますよね。逆にちょっと考えてから質問してほしいと思うくらい(笑)」

現在はCGについてオンラインでクラスを開講

日本の大学時代に美術を教えたいと思っていた将来の希望が、卒業後30年経って別の形で実現したことになる。CGアーティストを目指す若者たちへのメッセージを聞くと、「自分がアーティストであるということをまず自覚してほしい。 与えられた課題をこなすだけでなく、デザイナーとして熱意を持っていい物を作るということを常に目指してほしいですね」と答えた。それは彼自身がハリウッドの現場で長年実践してきたことでもある。

最後に、糸数さん自身の夢は何かを聞いた。

「今のオンラインでの指導は、ネット環境さえあればどこでもできます。ですから(久米)島に帰って、のんびり生活しながらオンラインでCGを教えたいですね。夏休みになったら受講生を島に集めて研修合宿を開いたりもしたい。今すぐにでも実行したいけれど、4人いる子どもの一番下がまだ中学生なので、その夢はしばらく先になりそうです」

CGオンラインスクールのサイト:www.cgonline.biz

CGBoosterのサイト:www.cgbooster.com

 

© 2016 Keiko Fukuda

artist big hero 6 CG artist disney Frozen Hiroki Itokazu okinawa Tangled warner brothers