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デカセギ・ストーリー

第二十七話(後編) 天からの贈り物

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ひらりちゃんへ

こんにちは。徳永涼子です。おばあちゃんです。

突然でびっくりしたでしょう。全然お返事しなくて、本当にごめんなさい。

ひらりちゃんが書いてくれた手紙(全部で22通)は全部読みました。写真もクリスマスカードも、大切にしまってあります。おばあちゃんの宝物になっています。

どうして、今まで一度も返事してくれなかったのかと聞きたいでしょう。

ごめんね。いろいろあったんです。まず、ひらりちゃんのお父さんのレオが事故で亡くなった後、立ち直るのにすごく時間がかかったからです。さらに、その間に大変な出来事がいろいろと起こったのです。

お父さんがお店のお手伝いをしてくれていたのは知っていると思うけど、大分前からうまくいってなくて、2008年、ついにお店を閉めることにしたの。でも心労がたまったひらりちゃんのおじいちゃんは半年間入院してしまったんです。ちょうどその頃、ひらりちゃんが日本語の手紙を送ってくれるようになったのよ。おじいちゃんはそれを読んでとても喜んでました。

ひらりちゃんの手紙は、おじいちゃんを癒してくれ、闘病の励みにもなりました。手紙があったからこそ、おじいちゃんは病気を早く治そうとくじけることなく頑張ることができたんです。お医者さんや看護師さんに、思った以上に回復が早いと驚かれたくらいです。

退院の日、おじいちゃんは「ブラジルに住んでいる孫のひらりからの手紙なんですよ。天使のような孫なんです!」と、嬉しそうにひらりちゃんからの手紙をみなさんに見せていました。

ひらりちゃんには心から感謝しています。本当にありがとう!

店を閉めた後、レオの兄の源、つまり、ひらりちゃんの伯父さんは新しい仕事、念願の有機野菜の栽培を始めました。でも源のお嫁さんの恵子さんは大反対だったんです。恵子さんはもともと商売に向いている人で、ずっと店先に立っていたのよ。でもその店が閉り、家事も畑仕事も苦手だった恵子さんは居場所が無くなったと思ったのかもしれません。まもなく、2人の子供を連れて実家に戻り、その一年後源夫婦は離婚してしまいました。

私達はそれで良かったと思っています。

知ってる?ひらりちゃんのお父さんとお母さんがブラジルで結婚して日本に戻ったとき、おじいちゃんは、ひとつ屋根の下で一緒に暮らすことを望んでいたのよ。でもレオは遠慮したのか、隣町に住むことにしたの。きっと、同じ家に2人もお嫁さんが居ると、複雑になると思ったのでしょう。そして、ひらりちゃんたちがブラジルに帰る前に、私達と一緒に暮らさないかとお母さんを誘ったけれど、結局ブラジルへ帰国してしまいました。

大人の考え方や行動は分かりにくいですね。でもひらりちゃんはもう心配しなくていいのよ。おばあちゃん、この10数年間のブランクについて話せるときが来るのを待ち望んでいたんだから。

YouTubeで日本の歌を聴いているとひらりちゃんの手紙に書いてあったので、おばあちゃんも見てみました。ひらりちゃんの好きなシンガー・ソングライターのmiwaさんの歌も聞き、おばあちゃんもファンになりましたよ。

今年の「紅白歌合戦」を今から楽しみにしています。遠く離れていても、ふたりで、同時にmiwaさんを聴きましょうね!おばあちゃんは年越しそばを食べながら。ひらりちゃんが居るブラジルは午前中だから、何を食べるのかしら?アイスクリーム?それとも「パネトーネ1」?(覚えていますか?以前、クリスマスには「パネトーネ」が欠かせないって、写真を送ってくれたでしょう?美味しそうだったわ。)

ささやかだけど、プレゼントを贈ります。miwaさんの新曲「結-ゆいー」のDVDと写真一枚。写っているのは野菜畑で働くおじいちゃんと源伯父さんです。おばあちゃんも一緒に撮りたかったけど、おじいちゃんが「お化粧なしでは、ひらりちゃんが驚くよ」と笑いながら言ったので、一緒に撮らなかったの。

ひらりちゃん、あと2年で高校卒業ですね。ブラジルで勉強を続けるつもりですか?

突然でびっくりするかもしれないけれど、おじいちゃんもおばあちゃんも、是非、ひらりちゃんとお母さんを日本へ呼び寄せたいと思っています。これから、じっくりと、お互いに相談しましょうね。

では、元気に過ごしてください。お母さんに宜しくね。

                                                                          おばあちゃんより                          
                                                                          2016年12月24日

注釈

1. イタリアのクリスマスケーキ

 

© 2016 Laura Honda-Hasegawa

Brazil dekasegi family fiction

このシリーズについて

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。