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シアトル日本食界を支えた職人集う・寿司カシバ、食とサービス、日米の融合

寿司カシバ

連日多くの人で賑わうシアトルきっての観光名所、パイクプレースマーケット。そこに去年12月に開店したのが和食レストラン「寿司カシバ」だ。「素材にこだわり、基本に忠実でシンプルな江戸前寿司は伝統的な日本料理。それをいかに正しく食べていただくか」――。シアトルで長年すしを握ってきた加柴司郎さんの持つコンセプトに賛同した仲間たちが、日本が誇る食とサービスの文化を追及している。

昨年パイクプレースマーケットの近くに6人の共同パートナーともにオープンした寿司カシバで、週5日寿司バーに立つ加柴司郎さん
(写真提供:佐々木志峰、北米報知)

加柴さんをトップに共同パートナーになる6人のほとんどが、過去に一緒に仕事をしていた経験があるという。5人が店を構えた経験のあるベテランで、2人は寿司カシバ開店に際し、自身の店を売却。強い絆で結ばれた新レストランへの覚悟がうかがえる。

パートナーの年齢は合わせて400歳を超える。「パワフルなシニア集団、7人のサムライが一堂に集まった新しいビジネスモデルの店です」とパートナーの1人、高橋進さんは話す。

開店当初から来客が途切れず好調なレストラン。加柴さんの知名度に加え、人気の秘訣は徹底した正統派江戸前すしの追求と、日本のおもてなし文化からなるサービスにある。

「日本でしっかり修行して基本を勉強し歴史も学んだ人が本物のおすしをつくることができる」と語る加柴さん。50年以上の経験を誇る職人の中の職人といえる存在だが、今でも勉強は怠らないという。

「おすしも少しずつ変わっている。自分が使ったことのないような食材が日本で使われていたりする。日本で起きている変化を常に勉強して取り入れていくことが大切です」

サービス部門を担当する高橋さんは、「料理とサービス、両方揃って日本の文化」と語る。サービス関係の従業員は、ほとんどが長年一流レストランで経験を持ち、飲食のサービスという面ではプロだが、「問題は日本の食文化について彼らはあまり面識がないこと」という。

和食は奥が深い。食器の置く場所、向きなど多岐に及ぶ。素材の味を大切にする江戸前寿司において、素材への知識は不可欠だ。歴史も深く、「日本のおもてなしの文化は世界から見ても素晴らしい文化。そしてそれは禅の心から来ている。日本レストランとしてよりよいサービスを提供するには日本の歴史から学ぶ必要がある」と高橋さんは語る。

月に2回、食欲をそそるお通しの作り方を習う寿司カシバのウェイターたち
(写真提供:佐々木志峰、北米報知)

シアトル地域には、日本食レストランは200軒以上あるが、日本人がオーナーで日本人がキッチンで指揮を取る店は少数だという。すしでいうとマヨネーズやとうがらしをふんだんに使ったロールすしを中心に、アメリカナイズされた料理を提供する店も多い。

「各国の食文化に合わせてフュージョンされたおすしは、それで素晴らしい文化。それによっておすしに親しみを持ってもらえる」と加柴さんは語る。いきなり異国の料理を口にすることに対して抵抗がある人も多く、フュージョンされた料理が果たす役割は大きい。

「徐々に本物は何かという好奇心が芽生えてきて、多くの人に日本文化の理解を深めてもらうことができます」

本物のすしを求めての来客者も少なくない。「本物のおすしを求めるお客さんが多くなっていることに驚いている。これからどんどん増えていくのではないでしょうか」

観光客を含め、日頃自国で口にするすしとの違いに驚く人も多いという。「この場所には世界中からお客さんが集まってくる。おすしを通して外国の方に日本の文化について伝えることができてとても楽しい」と加柴さんは笑顔を見せた。

パイクプレースマーケットは観光地というだけではなく、当初は多くの日系農家が商売を行っていた歴史を持つ土地だ。高橋さんは、「日系人の方々が苦労して生活を作り上げてきたその上に私たちの生活がある。米国人の日本人に対するイメージがシアトルで良いのは彼らのおかげ。そのことに対して、この地で頑張ることでお返ししていきたい」と語った。

形は違えど、日本の精神は引き継がれている。高橋さんは「経営の仕方、日本の食文化を若い人に伝えていきたいです。このお店にはそういう目的もあります。30、40、50代といった次の世代に日本の伝統料理を引き継いでもらい発展させてほしい」と話す。

「日本人の技、 気持ちと米国人のホスピタリティのハーモニーの試金石。10年、20年先に、『あのレストランはオリジナルだったね』といわれるような店を目指したいと思っています」

人種と食の多国籍化が進む米国で、日常の食事の一環として定着しつつあるすしをはじめとする日本料理には、多くの歴史、文化、職人たちの努力が詰まっている。月日は流れても伝統を守る、という強い信念は、これからも職人から職人へ紡がれ、生き続けていくに違いない。

 

* 本稿は、2016年9月1日の北米報知(Vol 71, issue37)からの転載です。

 

© 2016 The North American Post

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