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アマゾンの日系社会

第2回 日本語教育

1895年に日本とブラジルの外交関係が結ばれて、今年で120年。これをきっかけに、文化・芸術・経済など様々な分野で両国の関係強化が図られることになり、ブラジル各地でいろいろな記念行事が開かれている。先日ベレンであった毎年恒例のブックフェアでは、テーマ国の日本の文化紹介が行われた。また、120周年記念式典も催されて、シモン・ジャッテーネ州知事より、14の日系団体と企業に勲章が贈られ、私の配属先である北伯日本語普及センターにも勲章が授与された。北伯(ブラジル北部)での長年にわたる日本語教育を讃えられたことは、関係者全員にとってとても喜ばしいことだろう。とくに、これまでの北伯日本語教育の歴史を築いてこられ、今も最前線で活躍されている1世の先生方には、ご苦労が報われた思いであったのではないだろうか。

戦後に移住してこられた1世の先生方は、子どもたちに日本語を含む日本文化を継承するためにと、日本語学校を創設、国語教育を始めた。しかし、2、3世がブラジルの教育を受け日本語を使わなくなるにつれて、様相は外国語として教える日本語教育へと変化していった。日本から専門家を呼んで日本語教育を学び始め、各地の学校の取りまとめをする機関として、1993年に設立されたのが北伯日本語普及センターである。当初の会員校の生徒総数は約1300名。1990年代にブラジル全土が見舞われたハイパーインフレで、日本への出稼ぎ者が増加、次第に生徒は減っていった。

それから22年、少なくなった生徒数は昨今の日本ブームや日本企業進出で徐々に持ち直してきて、現在は1231名、そのうち非日系は74%。非日系の教師は21%で、ここ数年、日本に関心を持つブラジル人が増えている。彼らの日本語学習を始める動機は、ほとんどの場合がアニメで、興味の入口は「ジャパニーズカルチャー」、その後、さらに奥深い「日本文化」へと移っていく。 

ここの日本語教育の特徴は、2世が中心の南部と異なり、戦後に移住された1世の方が現役であること、そして、出稼ぎで親と日本へ行って、義務教育を終えて帰国した3世が教えていることだ。彼らの多くは大学で勉強したり他に仕事をしたりする傍ら、自分の特長を活かして日本語教師をしている。しかし、将来ずっとこの仕事をしていくのは経済的に難しいだろう。ここの特色としてもう一つあげられるのは、結婚を機にブラジルへ来た、40歳前後の先生方の存在。次世代として1世から引き継ぐ、大きな担い手である。

昨年の8月、安倍晋三首相がブラジルへ来られたとき、「JICAボランティアを100名に増やす」とおっしゃった。とくに、文化・スポーツ面での支援を強めていきたいということで、日本語教育も含まれる。それには、ブラジル社会への日本文化普及が視野にあって、ブラジル各地で行われている様々な120周年事業は、大きな効果をもたらしているようだ。

書道体験(筆者撮影):ブックフェアでの一コマ  

今回のブックフェアでは、茶道・生花・琴・折り紙など、多くの日本文化が紹介されたが、私が担当させていただいた書道もその一つである。10日間の開催期間中、1回2時間のコマを3回行ったが、どれも予想以上の申し込み者数だった。初回の参加者が後で手伝いに来てくれたり、書道を教えた巡回先の学校の生徒も来てくれた。初めて筆を持つという人がほとんどで、一画一画を緊張しながら書いていたが、想像よりも上手くて驚いた。何よりも嬉しかったのは、多くの人が興味を持ち、初めての体験にとても満足していたこと。ブラジルの方たちに喜んでもらえたことは、ブラジル社会への日本文化普及の一端となり、120年の歴史の一片になったのではないかと思う。

贈られた勲章は重い。センターに派遣されたボランティアとして、これからも貢献していきたい。

 

© 2015 Asako Sakamoto

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このシリーズについて

ボランティアの目から見たアマゾンの日系社会について、一世、日系人、日系社会、文化、日本語、いろいろな角度から語るジャーナル。日々の活動を通して感じたこと、日系社会の歴史と現状、等々をお伝えします。