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デカセギ・ストーリー

第二十四話 日本人になりたかった少女の日記~その4

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2011年3月4日

バチャンのお姉さんが入院したので、バチャンはカンポ・グランデに行っているの。だから、わたしは、当分、ナイル叔母さんの家でお世話になるの。いとこが3人いて、一番下のノアちゃんはすっごくかわいい。2歳なの。

日本に居たときと比べると、今の方がめっちゃ、にぎやかで楽しいわ!日本では朝の7時半から夕方の6時まで学校で過ごしていたの。クラスには8人しか居なかった。その中の3人とは大の仲良しだったけど、2008年の末には、生徒の半分はもう居なかった。町を出て行ってしまったから。そして、親友のアリネちゃんもブラジルに戻ってしまった。マミーは「É a crise1」と、言っていたけど、わたしにはよく分からなかった。

学校の友だちはどんどん少なくなって、お家でもマミーと2人きりだった。大勢の人と過ごすことが無くなっていた。ブラジルにバチャンや伯父さんや叔母さんやいとこがいることは写真で知っていた。たまにマミーが電話して、最後に「ジェシカも挨拶しなさい」と言われて「Como vai?2」と言うぐらいだった。隣近所は、みんな日本人で、お互いに挨拶もしなかった。

ブラジルに来たら、まるで別世界のように見えて、わたしは、ますます、ブラジルに関心を持つようになった。隣のドナ・クラウディアはいつも学校のことを訊いてくれるし、バチャンがカンポ・グランデに行ってると知ってからは、バチャンのお姉さんの様子を訊いて、いつも「Estimo melhoras3」と言ってくれる。

今の学校は日本のブラジル人学校より5倍ぐらい大きいし、生徒は400人を超えている。もちろん、先生の数も多い。日本のブラジル人学校は、先生不足のため、1人の先生が2つ以上の科目を教え、ひとつの教室で違う学年の生徒と勉強するのが普通だった。でも、ここでは、同じ学年の子がひとクラスに35人も居て、先生は同じ内容の授業をすればいいので、勉強が進む。

だけど、男の子の大騒ぎには、まだ、慣れなくて、そのたびにわたしは驚かされる。特に、サッカーのことで言合いが始まると、耳をふさいでもふさぎきれない程の騒ぎになる。なんで、そんなにサッカーに夢中なのか、不思議だ。

女の子はやっぱりファッション!日本とは違って、メークして学校へ行ってもいいし、アクセサリーもサンダルもOK!このことを日本に居るさくらちゃんに言ったら、彼女はびっくり!うらやましいと言っていた。でも、わたしは自分流で満足してるの。今ハマッテルのはTシャツを自分でカスタマイズすること。友だちからの注文もあるの。ブラジルの女の子って手作業は苦手みたいね。

そろそろ、叔母さんの手伝いをしなきゃ。

愛しきディアーリョ。じゃあね。


2011723

前期が無事に終わって、冬休みをサンパウロでマミーと過ごすのが楽しみ!

今年は、もうひとつしたいことがあるの。4年ぶりにマリナちゃんと逢うこと!マリナちゃんとは小学校3年生までブラジル人学校で一緒だったの。でもマリナちゃんは違う町に引越しし、そこで日本の学校に通い始めた。しばらくすると、マリナちゃんはポルトガル語を忘れてしまい、メールは日本語だけになり、わたしにはとても難しくなったため、メール交換はそこで終わってしまった。

マリナちゃんが今年の1月にブラジルに戻ったと聞き(マリナちゃんのお母さんがマミーに連絡した)、逢うのを楽しみにしていたけど、マミーはなかなかマリナちゃんの家へ連れて行ってくれなかった。

でも、あと2日でマリンガへ戻ると言う日に、マリナちゃんのお母さんが家を尋ねて来てくれた。だけど1人で。

マリナちゃんはどこ?と、マリナちゃんのお母さんに聞くと、お母さんはわたしをぎゅっと抱きしめ、「マリナは風邪で寝込んでいるの。今日はジェシカちゃんに頼みがあって来たの」と、赤い表紙のノートを渡された。

それは4年前までわたしたちが交換していた日記だった。マリナちゃんのお母さんは、わたしがその日記に書くのを待っててくれて、大事に持って帰ったの。

その晩、マミーは本当のことを話してくれた。ブラジルに戻ったマリナちゃんは、ある日、お母さんとバスに乗り、楽しそうに日本語で話していたら、若者のグループにひどく冷やかされ、それっきり家に閉じこもっているんだって。悲しくて悲しくて。

マリナちゃんのために何かしたい。神様に頼んでみよう。何か良い方法を教えてください。マリナちゃんは心の友だから。お願いします。

愛しきディアーリョ。いつも一緒に居てくれてありがとうね。

その5 >>

注釈

1. 「原因は経済危機よ」

2. 「お元気ですか?」

3. 「お大事に」

 

© 2015 Laura Honda-Hasegawa

Brazil community dekasegi fiction identity

このシリーズについて

1988年、デカセギのニュースを読んで思いつきました。「これは小説のよいテーマになるかも」。しかし、まさか自分自身がこの「デカセギ」の著者になるとは・・・

1990年、最初の小説が完成、ラスト・シーンで主人公のキミコが日本にデカセギへ。それから11年たち、短編小説の依頼があったとき、やはりデカセギのテーマを選びました。そして、2008年には私自身もデカセギの体験をして、いろいろな疑問を抱くようになりました。「デカセギって、何?」「デカセギの居場所は何処?」

デカセギはとても複雑な世界に居ると実感しました。

このシリーズを通して、そんな疑問を一緒に考えていければと思っています。