ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2015/12/31/oshogatsu/

日本を恋しく思い出させるお正月

年末が迫ったこの時期、サンパウロの東洋街がにぎわいます。日本食品店のショー・ウインドーの張り紙には「餅とおそなえの予約受付中」と書いてあります。

普段、日本の習慣に従うことがない日系人でも、お正月には「餅」が欠かせません。餅を焼いて、しょうゆと砂糖を付けて食べるのが一般的だと思います。もうひとつはお雑煮です。

わたしが初めて日本で過ごしたお正月は42年前のことでした。2人の日系ブラジル人留学生が家に遊びに来て、4日間ほど一緒に過ごしました。正月は、お店のほとんどが閉まってしまうと聞いたので、食品を買いだめしたことを思い出します。

しかし、作った料理と言えば、おせち料理ではなく、ただ、日本食品をブラジル風にアレンジしたものでした。3人とも親戚や親しい日本人の友だちが日本にいなかったので、本格的なお正月を過ごすことができませんでした。

大晦日の夜にはNHKの紅白歌合戦を見たと思いまが、当時、わたしも友だちも西洋の音楽やブラジルのボサノバに夢中だったので、日本の歌謡曲はあまり知らなかった気がします。番組が終わり、外に出てみると、大勢の人が神社の方へ向かって行くので、わたしたちもついて行きました。そして、みんなと同じように手を合わせて祈りました。カトリックのわたしたちは主イエス・キリストに祈りをささげました。

時が経ち、7年前に日本での二度目のお正月を過ごしました。東京の日本人の友人の家に泊まっていたので、友人夫婦、親戚、友人、知り合いの方々にお世話になり、素晴らしい体験がいろいろできました。

このときの日本のお正月は完璧でした!今まで知らなかったお料理に出会い、お正月は、特に、本場の物に適わないと思いました。

伊達巻&黒豆

そして、ブラジルでは見たことのない「黒豆」が大好物になりました。あの柔らかくつやつやした粒、ほんのりと甘い香り、何ともいえない優しい味!とても美味しかったので、黒豆の写真を撮るのを忘れてしまいました。この友人にその話をしたら、友人がわざわざ黒豆を煮て、写真を撮って送ってくれました。横に写っている「伊達巻」も友人の手作りで、これもわたしの好物です。

また、日本での街を彩るクリスマスの飾りやイルミネーションも最高です!ブラジルでも飾りやイルミネーションは見ることができますが、今のように治安が悪い状態では、夜の外出は危険なので、なるべく避けることにしています。2009年、お台場で見たイルミネーションを壁紙にして「よかったな!」と、今でも眺めています。

壁紙のお台場

思い出の福袋

もうひとつの素晴らしい体験は、お世話になっていた友人に「福袋1を買ってきて」と、頼まれた時でした。その瞬間、「初めてのお使い2」というテレビ番組を思い出し、「面白そうだなあ」と、張り切って買いに行きました。帰ると、友人に、「開けてみて」と言われました。わたしは、子供が胸をおどらせてクリスマスのプレゼントを開けるように、わくわくしました!中には、何から先に食べようかと迷うほど、たくさんの美味しそうな物が入っていました。

「福袋」用の真っ赤な袋を今でも、大事に持っています。中には買い物バッグが入っています。この袋を見ると、いつも「日本のお正月」を思い出します。またいつか行けるようにと、毎日の励みにしています。

みなさん、あけましておめでとうございます!

注釈

1. 正月の初売りなどで、色々なものを詰めて封をして販売する袋。

2. 3歳から6歳くらいの幼児に初めてお使いに行かせる様子を見せる日本テレビの人気番組。

 

© 2015 Laura Honda-Hasegawa

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執筆者について

1947年サンパウロ生まれ。2009年まで教育の分野に携わる。以後、執筆活動に専念。エッセイ、短編小説、小説などを日系人の視点から描く。

子どものころ、母親が話してくれた日本の童話、中学生のころ読んだ「少女クラブ」、小津監督の数々の映画を見て、日本文化への憧れを育んだ。

(2023年5月 更新)

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