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https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2014/9/8/little-tokyo-reporter-3/

排日土地法撤廃の功労者・藤井整を描いた「リトルトーキョーレポーター」 製作陣と出演者に聞く ~その3~

「移民の先人にはまさに武士道精神を感じる」と語る英二郎さん。 スタジオシティで

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俳優:尾崎英二郎

中国系アメリカ人の監督がメガホンを執り、日系3世のプロデューサーと主演俳優が関わった映画「リトルトーキョーレポーター」。日系1世のパイオニアを描いた作品だけに、俳優たちが口にする日本語を心配したが、まったく不自然さは感じられなかった。心配は杞憂に終わったのだ。しかし、その陰には、日本出身の俳優、尾崎英二郎さんのサポートがあったと知り、本作にも佐藤役で出演している英二郎さんに話を聞きに行った。

最初に彼は「短編は市場が限られていて、世に出る機会も少ないのに、2011年に撮影した映画が、こうしていまだに注目されて取材されるのは非常に有り難いことです」と感謝の気持ちを口にした。英二郎さんはトム・クルーズ主演の「ラストサムライ」出演でハリウッド映画への足がかりを得た後、クリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」でバロン西の部下役を熱演、マシ・オカが「やったー!」で一大ブームを巻き起こした「ヒーローズ」にも出演するなど、アメリカ進出以降、着実にキャリアを重ねてきた。「世に出る機会が少ない」と彼自身も言う短編に、なぜ出演することになったのか、まずは経緯を聞いた。

「監督のジェフリーが、僕の出ていた『8人目の侍(The 8th Samurai)』を見て、とても気に入ってくれ、声をかけてくれました。僕が演じた佐藤は実在した人物ですが、僕が演じるという前提であてがきをしてくれたのです。引き受けた理由はもう一つあります。僕は日本から7年前にアメリカにやって来ました。いわゆる新一世ですよね。そしてここアメリカで永住権も取得できて、食事も医療の心配もなく、アパートに住めて仕事もできています。これは、日本人一世の方たちが最初にやって来て、差別と闘いながら働き、この国に対して勤勉を印象付けたことで得たクレジットのおかげだと思うのです。だから、この映画に携わったことは僕なりの恩返しの気持ちもあります」

前述のように、英二郎さんは俳優としてだけでなく、日本語の発音に関しても監修を担当した。「ジェフリー、キャロル、クリス、皆が信頼してくれて、本読みの時には、日本語の発音を僕に確認してくれました。実は長いセリフよりも短いセリフの方が、ごまかしがきかない分難しいのです。『ふじいさん』と呼びかける時も英語を話す人は頭の『ふ』にアクセントを置いてしまう。しかし、それでは日本の観客が映画を見た時に不自然に感じるため、細心の注意を払いました。さらにアフレコの際もジェフリーの補佐につかせてもらっただけでなく、DVDでは日本語字幕を任せていただきました」

藤井のオフィスに脅迫状が置かれるシーンがある。日本人の書いたものではないと一目でわかったため、英二郎さん自身が現場で書き換えたこともあったそうだ。

「日系アメリカ人社会への感謝の気持ちが強くなった』

このように「リトルトーキョーレポーター」は、日系三世たちと、英二郎さんのような新一世が互いを信頼し合って協力して完成させた作品である。そして何より、監督と脚本を担当したジェフリーさんは中国系アメリカ人だ。彼の達成したことの意義深さ、乗り超えた壁の大きさを英二郎さんは次のように語った。

「彼の勇気には本当に頭が下がります。生粋の日本人を使って、意見も聞いてくれて、(監督の)自分にとって知らない言語と文化を扱うということは誰にでもできることではありません。そのことはたとえば、僕が以前に出演した『硫黄島からの手紙』のイーストウッド監督にも感じましたね。逆の立場で、日本人がアメリカの南北戦争を題材に映画を作れるかと言ったら、ベトナム戦争なら…それはとても難しい試みなのではないでしょうか」

そして完成した作品は世に出て、各地の映画祭で受賞を重ねている。この映画に携わる前と後で英二郎さんの中の何が変わったかを聞いてみた。

「日本からの移民の先人の方々や日系アメリカ人社会に対する感謝の気持ちがこれまで以上に強くなったこと。そして、何もないところから築き上げた昔の人々の根性を改めて感じました。僕らのような現代人には想像が及ばないレベルかもしれません。まさに鋼の精神、武士道ですね。彼ら先人の歴史を学ぶことで、僕らも日本人として頑張っていかなければと思います。そして、日系人を描く作品の機会があれば、それがどのような役であっても、また演じてみたいです」

最後にこの映画をこれから見る人々には、「外国人なら、藤井整という人物が勇気あるパイオニア的人物だということがわかってもらえると思います。日本人の話だからと思わずに、先入観なしで是非見ていただきたいですね」とメッセージを送ってくれた。

その4>>

 

「リトルトーキョーレポーター」公式サイトからDVD購入可: www.ltreporter.com

  

エグゼクティブプロデューサーからのメッセージ

「リトル・トーキョー・レポーター」はアメリカ国内のみならず、海外のさまざまな地域で上映を行うため、皆様からの献金をお願いしております。個人用チェックの郵送、またはウェブサイトからのクレジットカードによる献金が可能となっております。チェックの宛先はLittle Tokyo Historical Society (小東京歴史協会)とご記入下さい。また、皆様の献金は所得税等の控除の対象となります。日系一世のパイオニアであり、「忘れられた公民権の運動者」であった藤井整への関心と、映画へのご支援に深い感謝の意を表します。


個人用チェック郵送先:

Lil Tokyo Reporter Film
PO Box 3552
Rolling Hills Estates, CA 90274

オンラインによる献金はこちらから:http://www.ltreporter.com/blog/donate/

 

© 2014 Keiko Fukuda

カリフォルニア州 尾崎英二郎 藤田キャロル文子 ジェフリー・G・チン リトル・トーキョー・リポーター(映画) リトル東京 ロサンゼルス 藤井 整 アメリカ
執筆者について

大分県出身。国際基督教大学を卒業後、東京の情報誌出版社に勤務。1992年単身渡米。日本語のコミュニティー誌の編集長を 11年。2003年フリーランスとなり、人物取材を中心に、日米の雑誌に執筆。共著書に「日本に生まれて」(阪急コミュニケーションズ刊)がある。ウェブサイト: https://angeleno.net 

(2020年7月 更新)

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