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私の母は環境保護主義者!?

小さいころ自分の母親は、世界で一番ケチな人だと信じていました。何度も何度も繰り返し使われてしわくちゃになったランチバッグでお弁当を持たされるのは、本当に恥ずかしかったものでした。

だんだんと成長するにつれわかってきたのは、母は、西サクラメントの片田舎に住むそれほど裕福でない7人家族が、収入以上の生活をしたくなかっただけであったということです。ひとつの収入源で食べさせていくには多すぎるほどの家族で、しかもその収入源というのがトマトの収穫という期間限定のものでありましたから。また母が物資の少ない戦時中の日本で育ったことも、なんでも繰り返し使うことにつながったのであろうと思います。

私達はいつも丁寧にクリスマスのプレゼントの包みを開けなければなりませんでした。うまくいけばその包み紙をまた来年使えるからです。いまどき3歳児がびりびりっと破いてプレセントに早くたどりつくことが出来ないのであれば、うれしさも半減してしまうことでしょう。

母はまた豆腐の容器、肉の発泡スチロールの入れ物、割り箸、乾燥剤、箱、紙袋、漂白剤のボトルなど大切に取っておきます。漂白剤のボトルは、洗濯バサミを入れるために再利用され、物干しにぶら下げられていました。パイ皿などは多くの植木鉢の下に敷かれて使われています。

あまり多くて全部書ききれません。

これらのことをスタッフに話していて気がついたのですが、もう77歳になる母のしていることは、自分なりのやり方で環境保全に貢献しているのだと言うことです。

例えば、卵の殻だけを入れるかごが台所の流しの下においてあり、そのそばにはコーヒーの出しがらもとってありました。当時の私は、母がそれらをどうしていたのか知りませんでしたが、兄のマークが教えてくれたウェブサイトのおかげで、「卵の殻は、93%炭酸カルシウムで、約1%の窒素や0.5%のリン酸、そのほかにも微量の肥料に最適の物質が含まれている」ことを知りました。

卵については、名古屋にすむ一番上の姉キャロルが卵の殻の有効利用法を教えてくれました。殻の中の薄い皮を顔にはると小鼻の毛穴の汚れが取れるのだそうです。「乾いてからはがすと汚れがいろいろついてくるのよ!」と、Eメールしてきました。

コーヒーの出しがらについては同じサイトに、「花壇で有効活用できる。また、たい肥にもなる。コーヒーの出しがらには約2%の窒素、0.33%のリン酸および炭酸カリウム、ミネラルや炭水化物、糖分、ビタミン、カフェインなども含まれている。ブルーベリーや常緑植物、つつじ、バラ、椿、アボガドやある種の果物の木など酸を好む植物に与えることが出来る」と、あります。

かまぼこ板でタワーをつくった母と姪のマキ(写真:M. Sharon Taguma)

母の溜め込んでいたかまぼこの板は、甥や姪たちに何時間もの楽しい時間を与えてくれました。それにしても僕たちは、どうやってあんなにたくさんのかまぼこを食べたのだろう?そのかまぼこ板を使ってたくさんの木の家や、上手に作らないと倒れてしまうものすごく高いビルを作ることができました。

カリフォルニアのマウンテンビューに住む義姉のアリスによると、かまぼこ板はサンノゼ別院日本語学園でも使われたということです。「ある年にお義母さんに200個もの板をもらったのよ。それをスプレーで真っ黒に塗って子供たちの工作の雛人形や鯉のぼりの台にしたの」と、教えてくれました。

アリスも母の再利用術を思い出すのに一役買ってくれました。「一番印象に残っているのは牛乳パックの下半分を使ってコースターにしたことかな」

そうだった!しょうゆやラム酒、調理用油など、たれて汚れやすいものの下に確かに敷いてあったのです。

「お米の袋で枕のカバーを作ったり、古新聞で野菜を包んであげたりしたわね」とアリスはつけ加えました。

母は一度も割り箸を買ったことがなかったのでないかと思います。僕らが外食して持ち帰った箸を残らずとっておきました。箸袋も持ってかえってきて、本のしおりになりました。「安い割り箸は火をおこすのに使ったじゃない」と姉のシャロンが思い出させてくれました。「発泡スチロールはお弁当用に、お母さんのためにとっておいてるわ。私もそうだけど、ジップロックもラップも洗って何度も使うし、冷蔵庫の横に干してあるわよ」

最近、母の再利用術のレパートリーが一つ増えました。母は毎月教会やその他の機会に、皆がほしがる太巻きをつくるのですが、その入れ物にラップやフォイルの入っていた箱を使うすばらしいアイデアを考えつきました。なんて簡単ですばらしいアイディアでしょう!母の友達でさえもが使い終わったラップの箱をくれるのだそうです。

そうなんです。母はもう一銭でも浮かそうといろいろ知恵を絞って再利用した、7人兄弟の中で育ったケチな娘ではなくなったのです。私にとって、母は「もったいない」という文化的概念を最も実践してるお手本のような人なのです。いろいろな方法で地球への影響を少なくしようと努める母は、本人がそれを意識してるかどうかは別にして、まさしく環境保護主義者にほかならないのです。

 

* 本稿は、2008年2月21-27号の「日米タイムズ」に掲載された英語の原文を日本語に訳したものです。2013年7月16日、82歳でお亡くなりになったサカエ・田熊氏を偲び、転載したものです。

© 2013 Kenji G. Taguma

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