ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2012/4/5/jake-shimabukuro/

ボーダーを越えて受け入れられたウクレレ演奏: ジェイク・シマブクロさん

ウクレレ界のジミ・ヘンドリックス

ハワイが好きで、ハワイ暮らしの日本人のブログを毎日読むのが日課になっている。お気に入りのブログの中に、旅行代理店勤務の女性のものがあり、ワイキキ周辺で開催されるウクレレのライブについても伝えてくれる。

ジェイク・シマブクロさん (写真提供:Sencame)

中でもハワイ在住のジェイク・シマブクロのライブの記事の数が群を抜いている。コンサート会場はもちろん、ホテル、レストラン、ショッピングモールと場所を選ばず、ジェイクはウクレレ演奏を頻繁に行っており、そのブログの執筆者もまめに追いかけてはその様子をアップしている。写真や動画を見る限り、とてもフレンドリーで少年っぽい笑顔のジェイク、しかし演奏が始まるとその印象は一変。時にはマイケル・ジャクソンやクイーンの曲をウクレレで弾きこなすさまは感動的だ。「ウクレレ界のジミ・ヘンドリックス」との形容に納得する。

ハワイ在住者のブログをきっかけに、こうしてまだ会ったこともなく、実際の演奏を生で聴いたこともないウクレレ奏者のジェイク・ シマブクロにいつか取材したいと思うようになった。そんなある日、ロサンゼルス郊外の私が住むビーチシティーを車で走っていた時、レドンドビーチ・パフォーミングアーツセンターの近くを通りかかった。そして、コンサートの告知用の電光掲示板に目をやると、「Jake Shimabukuro」の文字!ジェイクがわが町にやってくるのだ。「これは是非ともコンサートも行って、彼にインタビューしなくては」と一気に気持ちが高まった。

早速、ジェイク側に連絡を取った。しかし、残念なことにアメリカ本土では各地で予定が詰まっているようで、面談式のインタビューは難しいらしい。結局、電話取材になったが、それでも貴重なチャンスだ。

YouTubeで世界中を魅了

私は彼に特に聞きたいことがあった。ウクレレ奏者を彼が職業に選ぶのに勇気がいったのではないか、ということだ。家族は反対しなかったのだろうか。「教師か公務員にでもなりなさい」と言われたりしなかったのだろうか。

すると電話越しのジェイクはこう答えた。

「実は高校生の頃、学校の教師か、政府勤めの役人になろうかと考えていました。ウクレレは4歳の頃から、母のてほどきで始めていて、コーヒーショップやいろんな場所で演奏活動を続けました。演奏すればするほどウクレレに魅かれていったし、プロになれたらどんなにいいだろうと思っていましたが、高校生の頃はまだそれが現実的ではありませんでした」

ところが地道に演奏を続けていたことが、日本のレコード会社ソニーミュージックとの契約につながったのだ。その10年前の出来事が、プロのウクレレ奏者としての最初の転機になったとジェイクは語る。

「家族のサポート?もちろん、僕の親はウクレレのプレイヤーになることをずっと応援してくれていました。僕のなりたい職業が何であっても、家族は応援してくれるはずです。それが家族というものでしょう?」

ジェイクのまっすぐな言葉が胸に響いた。

そして、彼の第二の転機は動画投稿サイトのYouTubeが作った。

「NYセントラル・パークでインタビューを受け、その時に演奏したビデオがYouTubeにアップされました。視聴回数が瞬く間に伸びて、僕の演奏が世界中の人に知られることになりました」とジェイク。

世はまさにインターネット時代である。ウクレレというハワイ伝統のクラシックな楽器を用いて、ロックミュージックを弾きこなすジェイクのライブは、インターネットに乗って多くの音楽ファンを魅了することになった。そこには国境も、音楽のカテゴリーの枠も存在しない。彼の演奏はボーダーを超えて受け入れられたのだ。

呼吸するように毎日弾く

今では年間に200本近いライブを行っているというジェイク。

「僕は本当に恵まれています。ライブを通じて人と出会い、皆を幸せな気持ちにできる。まさに今の生活は、僕の夢がかなった形なのです。ライブの後に、目を輝かせて話しかけてくる子供たちとの交流も、僕にエネルギーを与えてくれます。死ぬ直前まで今のような生活を続けていけたらと願っています」

そして、ライブに向けては毎日練習を欠かさないそうだが、それは彼にとって特別なことではないと言う。

「僕にとってウクレレを弾くことは、ご飯を食べたり寝たりすることと同じです。自然な生活の流れの中にウクレレがある。だから、練習という意識はないのです」。

まさに呼吸をするように彼はウクレレを弾くのだ。

名前からわかるように、彼は沖縄系の日系五世である。沖縄を訪ねたことがあるかを聞くと、「6回ありますがすべてコンサートの仕事でした。でも、もちろん、合間に沖縄の文化を楽しむことはできます。ソーキ蕎麦やゴーヤチャンプルーが大好きで、そんなところに僕自身の沖縄の血を感じます」と回答。

CDのレコーディングやライブと、世界を股にかけて活躍するジェイクのレドンドビーチでのコンサートだが、インタビュー直前に販売サイトに行くとすべて売り切れていた。残念!そのことをジェイク本人に伝えると「次回必ず」と言ってくれた。そして、彼の人気が凄まじいことを知っていながら遅過ぎた行動を後悔しつつ、出来れば次回は本場ハワイのどこかで彼の演奏を聞くことができればと夢見ている。


ジェイク・シマブクロについてはこちら>>
www.jakeshimabukuro.com
www.facebook.com/jakeshimabukuromusic
www.twitter.com/jakeshimabukuro

© 2012 Keiko Fukuda

ハワイ ジェイク・シマブクロ 日本 音楽 楽器 沖縄県 ウクレレ アメリカ
執筆者について

大分県出身。国際基督教大学を卒業後、東京の情報誌出版社に勤務。1992年単身渡米。日本語のコミュニティー誌の編集長を 11年。2003年フリーランスとなり、人物取材を中心に、日米の雑誌に執筆。共著書に「日本に生まれて」(阪急コミュニケーションズ刊)がある。ウェブサイト: https://angeleno.net 

(2020年7月 更新)

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