ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2011/9/7/manju/

第8回 まんじゅうの味

丸くて、中にはあま~いあずきのあん。これが和菓子のまんじゅう。ブラジル人も知っているドセ・デ・フェジョン。

ふかし饅頭

これは母から聞いた話。八十数年前のこと。住んでいたのはシーティオ。

ある日、町からお客さんが訪れた。同じ日系人の方。おみやげは珍しいまんじゅだった。

子どもたちは、ほうきを戸の後ろにさかさまに。お客さんが早く帰るおまじない。

さあ、お客さんは帰った!子どもたちはみんなおまんじゅうに一直線!

一個のまんじゅうは四つに分けられた。母は十人兄弟。子どもたちは丸ごと味わうことはできなかった。その日のおやつは、そのまんじゅうだけだった。

わたしはひとりっこ、まんじゅうは一個でも二個でも、好きなだけ食べられた。

しかし、その話を聞いてから、まんじゅうの味は少し変わった。

今でも丸いまんじゅうを見ると、母から聞いたその話を思い出す。貧しかったけれどにぎやかだったという母の家。目頭が熱つくなり、時には涙ぐむ。

何十年経っても忘れられないまんじゅうの味。切なく愛しい「あじ」がする。

© 2011 Laura Honda-Hasegawa

ブラジル 食品 饅頭
このシリーズについて

祖父は日本から約100年前に来伯。私はブラジル生まれ。だから、私はブラジルと日本との「架け橋」になりたい。私の心に深く刻まれた「にっぽん」は宝物。ふるさとのブラジルで守りたい。そんな思いを込めて書いたのが、このシリーズです。(Bom Diaはポルトガル語でおはよう)

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執筆者について

1947年サンパウロ生まれ。2009年まで教育の分野に携わる。以後、執筆活動に専念。エッセイ、短編小説、小説などを日系人の視点から描く。

子どものころ、母親が話してくれた日本の童話、中学生のころ読んだ「少女クラブ」、小津監督の数々の映画を見て、日本文化への憧れを育んだ。

(2023年5月 更新)

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