ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2011/12/23/contributions-to-copani-2/

ディスカバー・ニッケイ: 2011年第16回パンアメリカン日系人大会(COPANI) への貢献 その2

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COPANIでは、アンケート回答の最も多かった5カ国、アメリカ合衆国、ブラジル、ペルー、メキシコ、チリからの回答をまとめて発表しました。アメリカ合衆国の場合は、回答者の多数を占めた南カリフォルニア在住者に絞りました。ラテンアメリカからの回答は、そのほとんどが大規模な日系コミュニティのある都市圏に集中しており、ブラジルはサンパウロ、ペルーはリマ、メキシコはメキシコシティ、チリはビーニャ・デル・マルからでした。

下記の表は、最も回答数の多かった文化、コミュニティ、アイデンティティに関する自由回答形式のアンケート結果の一部です。

1. あなたのコミュニティで、最も人気のある「日系人の食べもの」は何ですか?

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2. 日系人が日々の会話の中で最も頻繁に使う日本語は何だと思いますか?

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3. あなたの街で行われている最も重要な日系人のお祭りやフェスティバルは何だと思いますか?

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4. あなたのコミュニティで、最もよく知られている「日系」の有名人、または人は誰だと思いますか?

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5. 日本について考えるとき、最初に思い浮かぶ言葉は何ですか?

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上記5カ国からの回答で興味深いのは、全ての国で最も人気のある食べ物が、地元料理とアレンジされた寿司だということです。アメリカ合衆国ではスパム・ムスビやカリフォルニアロールが人気なのに対し、メキシコでは、クリームチーズ入りのフィラデルフィアロールやアボカド入りの巻き寿司が一般的なようです。また、全ての国で「ありがとう」という言葉は使われていますが、ブラジルでは「大丈夫」がよく使われており、ペルーでは「お金」が上位3位の回答に入っています。

このような国際的アンケートの利点は2つあり、地元に居ながら他の国々で行われている様々な日系の祭りを知ることができることと、日本や日系文化を祝う様々な方法を互いに学ぶことができることにあります。例えば、日本フェスティバルはブラジル特有の祭りでとても人気がありますし、文化ウィークはペルーでのみ行われている祭りです。また、お盆や二世ウィークは、アメリカ合衆国でのみ行われています。

最後に、日本について最初に思い浮かぶ言葉が、日本的価値観に関わる言葉(例:尊敬、規律、秩序、誠実などの価値観)という回答から、南北アメリカの日系コミュニティには、日本的価値観が根強く残っているということがわかります。

今大会の重要なテーマであり、アンケートの質問項目にもあったのが、「ニッケイ」とは何かと言うものでした。ニッケイ」という言葉は、実際何を意味するのでしょう?「ニッケイ」は、政治、歴史、社会など、語られる文脈に応じて様々に解釈することができます。『アメリカ大陸日系人百科事典』(2002年キクムラ=ヤノ編)では、日系の定義を「日本人移民とその子孫で、アメリカ大陸のそれぞれの定住国特有の環境のなかで独自のコミュニティを形成してきた人たち」としています。

そして、アンケート結果では、「ニッケイ」は下記カテゴリーに分類されるものとありました。1)生まれ、血縁、家系 2)日本文化や伝統 3)所属意識、自己定義。例えば、「日系人とは、日本を継いでいる人。私は三世なので、日系人です (Nikkei is someone of Japanese heritage. I am a sansei, that makes me a Nikkei)」と回答している日系アメリカ人もいました。また、ある日系ブラジル人は、日系人を日本の価値観を持っている人と定義し、「子供の頃から日本文化の伝統や習慣に親しみ、敬意を払ってきた人 (Alguém que têm contato e admira as tradições e costumes da cultura japonesa desde a infância)」と回答していました。

多くの日系人にとって、「ニッケイ」の定義を、1つのカテゴリーに当てはめることは困難なようです。社会的に構築された用語としての「ニッケイ」の定義は、文化やアイデンティティの変容に応じて変化してきました。ある日系ペルー人は、「難しいですね。日系人とは、単なる血のつながりや日本人の子孫というだけでなく、日本的価値観や文化との関わりもある人だと思います。様々な文化が融合しているのがペルーですが、一方で日系ペルー人はペルーと日本両方の文化を持ち、日本文化の良い側面を保持するよう努め、誇りを持って生きています (Difícil, creo que ser nikkei ya no es sólo ser descendiente de japonés por la sangre, sino que debe de involucrar también el aspecto de valores, aspectos culturales. Somos una mezcla de culturas pero el nikkei vive ambas culturas trata de rescatar aún los aspectos positivos de la cultura japonesa y vive orgulloso de ello)

興味深いことに、アメリカ合衆国からの回答で2番目に多かった「ニッケイ」の定義には、ジャパニーズ・アメリカンという特定の言葉が使われていました。また、「sansei(三世)」や「yonsei(四世)」(例:私は四世(移民四世代目)の日系アメリカ人です。)といった言葉は、ブラジル、ペルー、メキシコ、チリよりアメリカで多用されています。さらに、ラテンアメリカの国々からの回答には、「ニッケイ」の意味を説明するのに、家族の続柄が頻繁に使われていました。(例:日本人移民の孫、両親が日本人)

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© 2011 Lindsey Sasaki

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執筆者について

四世のリンジー・ササキは、異文化交流を専門とし、海外移住、エスニックアイデンティティ、ラテンアメリカについて研究しています。中でも、ブラジルとペルーにおける日系ディアスポラと日本におけるラテンアメリカコミュニティに着目しています。特に、日本に渡った日系ブラジル人の大学生と工場で働く労働者の若者が、どのように個人生活を送り、仲間作りをしているか、同時に、民族性とアイデンティティの境界がどのように変容し、ある特定の社会的、経済的、政治的状況に置いて、それらがどのように再形成されているか調査しています。ニューヨーク大学の教員であり、国際教育プログラムの博士候補です。国際関係学を専攻し、スペイン語を副専攻としてポモナ大学の学部を卒業しています。

(2011年12月 更新)

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