ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2011/12/16/contributions-to-copani-1/

ディスカバー・ニッケイ: 2011年第16回パンアメリカン日系人大会(COPANI) への貢献 その1

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この度、ディスカバー・ニッケイは、南北アメリカ及び日本の日系コミュニティを中心に、コミュニティやアイデンティティに関する意識調査を試験的に行いました。ディスカバー・ニッケイが国際的なアンケート調査を行うのは今回が初めてのことです。このアンケート調査の結果は、2011年9月1日から3日にメキシコのカンクンで開催されたパンアメリカン日系人大会(COPANI)にて発表されました。今回のCOPANIの主要テーマは、“PORQUE SER NIKKEI NO ES SER DIFERENTE, SINO EL QUE HACE LA DIFERENCIA”(人と違うからニッケイなのではない。私たちニッケイが違いをもたらす)でした。

ディスカバー・ニッケイプロジェクトは、日系の文化的多様性に注目し、世界の日系コミュニティの過去から現在にいたる多様なアイデンティティの探究に取り組んでいます。ディスカバー・ニッケイ・ウェブサイトを通し、異なる世代が互いの日系ストーリーやアイデア、体験談を共有し、世界中の日系人が繋がることを目指しています。日系コミュニティは、アジア、オセアニア、ヨーロッパ、アフリカなど世界各国に広がっていますが、このプロジェクトは、歴史的に規模の大きな日系コミュニティが集中する南北アメリカに焦点をあてています。今回のアンケート調査は、COPANIを主催するパンアメリカン日系人協会の参加国である11カ国、アメリカ合衆国、アルゼンチン、ウルグアイ、カナダ、コロンビア、チリ、パラグアイ、ブラジル、ペルー、ボリビア、メキシコを対象に行いました。

(写真提供:アルベルト松本)

COPANIは、2年ごとに開催されており、今年の開催地は、ちょうど30年前の1981年第1回大会が行われたメキシコでした。グローバリゼーションは、日本と南北アメリカの国々の関係を強化し、結果として日本と日系文化やアイデンティティに変化をもたらし、それらは常に更新されています。私たちは現代における日系コミュニティ間の関係の実態を探るため、今回のアンケート調査を実施しました。

今回のアンケートでは、対象者を無作為に選んだのではなく、特定のグループを選んで行いました。対象者の共通項は、日系コミュニティへの所属意識でした。南北アメリカ及び日本で対象者を選ぶにあたり1、スノーボールサンプリングと呼ばれる調査対象者の抽出法を適用しました。スノーボールサンプリングとは、先に選ばれた回答者に対して、次の回答者を紹介してもらうというやりかたで、雪だるま式に調査対象者を増やしていくことからこう呼ばれいます。今回は、日系コミュニティへの所属意識を持つ者を対象者としているため、すでにディスカバーニッケイに参加しているものを中心にアンケートを配布し、そこから日系コミュニティへ関心のあるもといった今回の調査条件に見合う回答者を増やしていくと言う方法を取りました。

アンケート質問条項は、英語、スペイン語、ポルトガル語、日本語に訳されており、各言語のアンケートへのリンクをEメールにて送信し、オンラインにて回答を記入していただきました。アンケートは調査、研究を第一目的としており、アンケート結果を大勢に当てはめて一般化することが目的ではありません。日系コミュニティをより深く理解することで、現状認識が可能になり、未来への探求に繋がることを期待しています。

アンケートの実施機関は、2011年6月28日から2011年7月25日でした。その間、下記の南北アメリカの国々(五十音順):アメリカ合衆国、アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、カナダ、チリ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、ボリビア、メキシコから回答を受け取りました。アンケートの質問形式は、二者択一または自由回答式のもので、コミュニティとアイデンティティに関わるものが中心となっています。また、対象者は18歳以上とし、アンケートから得た個人情報は全て機密扱いされています。アンケート参加者は683名で、英語368名、スペイン語192名、ポルトガル語108名、日本語15名でした。

こちらのリンクをクリックし、今回COPANIの発表の際にまとめた各言語によるアンケート結果の統計をご覧ください。
英語 >>
スペイン語 >> 
ポルトガル語 >>

アンケート結果2

最も興味深い統計結果の1つは、学歴に関することでした。(下記テーブル1、2、3をご覧下さい。)英語圏からの回答は、大卒46%、大学院卒36%、大学院在籍4%に対し、ブラジルは、大卒47%、大学院卒30%、大学院在籍7%と、大変近い指標を示していました。最後に、スペイン語圏の日系人の結果は、大卒51%、大学院卒16%、大学院在籍7%でした。合算した教育達成率データ(大学卒業、大学院在籍、大学院卒業)アメリカ86%、ブラジル84%、スペイン語圏74%。このデータからわかるのは、日系社会は教育に非常に高い価値を置いているということです。

テーブル1: 学歴に関する英語アンケート(回答件数359)

テーブル2: 学歴に関するスペイン語アンケート(回答件数179)

テーブル3: 学歴に関するポルトガル語アンケート(回答件数107)

もうひとつの特筆すべきアンケート結果は、日系人が日本へ行く理由の多様性です。3カ国語のアンケートからわかるのは、日本を頻繁に訪れる日系人は多く、南北アメリカから日本への訪問回数が5回以上という回答も多数ありました。英語とスペイン語による回答者の多くが日本訪問の主な理由を観光と答えたのに対し、ブラジル人の一番多い回答は勉強でした。また、スペイン語及びポルトガル語圏からの回答には、日本訪問理由の上位5位の中に、デカセギ3労働があるのに対し、北米からの回答にはありませんでした。

また、北米の日系人の渡日目的の選択肢に教職があるのに対し、ラテンアメリカの日系人にはありませんでした。最後に、「その他」で回答のあった渡日目的を地域別・言語別で見ると、興味深い内容になっていました。英語のアンケートでは、軍務、スポーツ、布教活動という回答があるのに対し、ブラジルとスペイン語圏からは、奨学金(政府やNPOによる)付きまたはデカセギ労働者の子としての留学との回答があったことです。

その2>>

注釈:
1.日本在住の日系人からもアンケートへの回答を得ましたが、COPANIで発表した統計結果には反映されていません。コミュニティに関する質問での混乱を防ぐためです。地元イベントについての質問で、出身国の地元イベントか、現住の日本でのコミュニティのものか、判別が難しいだろうことがその理由です。

2.このアンケート調査は、ウェブサイト、Eメール、SNS、関係機関など、基本的にはディスカバー・ニッケイネットワークを中心に配布されました。

3.デカセギとは、家族のために収入を得るために一時的に地元を離れて働くこと。ラテンアメリカを離れ日本で働くための滞在を指すことが多い。(2002年 キクムラ=ヤノ)

© 2011 Lindsey Sasaki

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執筆者について

四世のリンジー・ササキは、異文化交流を専門とし、海外移住、エスニックアイデンティティ、ラテンアメリカについて研究しています。中でも、ブラジルとペルーにおける日系ディアスポラと日本におけるラテンアメリカコミュニティに着目しています。特に、日本に渡った日系ブラジル人の大学生と工場で働く労働者の若者が、どのように個人生活を送り、仲間作りをしているか、同時に、民族性とアイデンティティの境界がどのように変容し、ある特定の社会的、経済的、政治的状況に置いて、それらがどのように再形成されているか調査しています。ニューヨーク大学の教員であり、国際教育プログラムの博士候補です。国際関係学を専攻し、スペイン語を副専攻としてポモナ大学の学部を卒業しています。

(2011年12月 更新)

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