ディスカバー・ニッケイ

https://www.discovernikkei.org/ja/journal/2009/8/28/brazilian-school-in-japan/

在日ブラジル人学校で出前授業 不況下、笑顔に安心

日本財団の奨学生として日本の大学で学ぶ中南米出身の日系人留学生ら5人が7月24日、岐阜県美濃加茂市の在日ブラジル人学校(Sociedade Educacional Brazilian School)で出前授業を行った。大手メーカーの部品工場が集中し人口の1割を外国人が占める同市では、世界同時不況の影響で職を失う外国人労働者が増えているが、子供たちはいたって元気。留学生からは「子供たちの笑顔を見て安心した」との声も出た。

授業に聞き入る子供たち

出前授業に参加したのは、国立がんセンターの研究生で日本財団留学生会の会長を務める岸本グスタボさん(ペルー出身)、デジタルハリウッド大学大学院でデジタルコンテンツを勉強中の猪島イーゴルさん(ブラジル出身)、奨学生として今年度から日本で学ぶ崎山メリーナさん(ブラジル出身)、山中ハナさん(同)の4人と留学生OBで現在「海外日系人協会」で留学生を支援するチリ出身の打村明さん。

出前授業は、留学生会が日系人を含む在日外国人子弟の支援を目的に2007年から全国3カ所でスタートし今回で9回目。授業には小学校から高校まで全校生徒118人のうち約80人が出席。講師役の留学生が「環境保護」や「麻薬の危険性」、「ITの可能性」などについてポルトガル語で講義を行い、夢を持つことの大切さや勉強の必要性を説明した。授業後には、「自分のやりたいことを実現するにはどうしたらいいか」といった質問も出され、留学生は各自の体験を基に「好奇心と追求心をもってやりたいことに突き進んでほしい」、「失敗してもやり直すことのできる若さがある」などと励ましのメッセージを贈った。

授業後、全員で記念撮影

学校のある美濃加茂市は人口5万5千人。ブラジル人を中心にした外国人労働者の街として知られ、2008年10月時点で6200人の外国人労働者と家族が暮らす。しかし、不況の影響でその後、約500人が職を失い、両親とともに母国に帰る子供も増加、300人に上った全校生徒も半分以下に減少。今回で3回目の出前授業参加となる打村さんは、「雇用の悪化で多くの出稼ぎ労働者が帰国せざるを得ない状況になっている。子供たちも不安を抱えていると思うが、元気で前向きな笑顔を見ることができ安心した」と安どの表情を見せた。

街にはポルトガル語の看板も

日本財団は「海外日系人協会」と協力して2004年に日本留学を希望する中南米の日系人学生を対象にした奨学金制度「日本財団日系スカラーシップ・夢の実現プロジェクト」を創設、これまでに計46人が奨学金を受けている。留学生会では今後も出前授業や新たに始める絵画コンテストを通じて在日外国人の子供を支援していく考えだ。

絵画コンテストに寄せられた作品

*本稿は、日本財団ブログ・マガジンから許可を得て転載したものです。

© 2009 Takehiro Umemura

ブラジル人学校 教育 日本 日本財団 (The Nippon Foundation)
執筆者について

2005年3月に早稲田大学人間科学部スポーツ科学科を卒業。その後、ロンドン・メトロポリタン大学にてスポーツマネージメントを学び、2007年12月にMAを取得。2008年4月より日本財団国際協力グループ新規分野開拓チームへ在籍。2004年8月にはロサンゼルスドジャースで1か月間インターンをした経験を持つ。

(2009年8月 更新)

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