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七夕ワークショップ - 二世週祭へ「前夜祭」-

全米日系人博物館は6月20日に、七夕飾りを作るワークショップを開く。恒例のロサンゼルス日系社会の夏のイベント、二世週日本祭に、舞台となるリ トル東京一帯を七夕飾りでいっぱいにしようという計画があるためで、それに向けての「前夜祭」的な行事の一環。現在「南加宮城県人会」の米澤義人会長も加 わって、一連の計画を具体的にどう実現するか検討している。七夕祭りは宮城県の仙台市のものが有名で、東北三大祭りの一つとして、毎年200万人以上が訪 れている。郷土の誇りであるこの七夕祭りをロサンゼルスで催すことが、米澤さんにとって長年の夢だった。2007年の二世週祭では青森ねぶた祭りで街は興 奮の坩堝と化したが、今年の夏は、七夕の話題で持ち切りになりそうだ。

七夕の伝説

七夕は元来、中国の牽牛(けんぎゅう)織女(しょくじょ)の二星会合の伝説と、そこから派生した乞功奠(きこうてん)の行事が日本に伝わり、日本の 棚機津女(たなばたつめ)の伝説と合わさって生まれたものとされている。江戸時代に、桃の節句や端午の節句と並ぶ五節句の一つとなり、竹の節句とされた。 これにちなんでさまざまな行事や祭りが行われるようになったが、やはり中心は、毎年7月7日、天の川の両岸にある牽牛星(アルタイア)と織姫星(ベガ)が 年に一度の逢瀬を果たすという伝説にあやかって、笹竹の枝に願い事を書いた短冊を吊し、軒先や窓辺に飾るというもの。また、各都市で商店街などに飾り付け して商売の繁盛を期すようにもなった。

仙台の七夕は、江戸時代の初期、仙台藩祖の伊達政宗が婦女に対する文化向上の目的で七夕を奨励したため盛んな年中行事の一つになったとされるが、詳 細は不明。現在は月遅れの8月6日から3日間にわたって、市内の各商店街を中心に計3000以上の飾り付けがなされ、街中が七夕一色になる。また、付随イ ベントとして、パレードやコンサート、出店なども行っている。

米国での七夕飾り

米澤さんは宮城県加美町(旧・中新田町)出身で、1956年、26歳の時に、インペリアルバレーで農業を営んでいた叔父を手助けするため渡米した。 以来、米国生活は半世紀を超えたが、郷里宮城県への思いは強く、「県のために何かしたい」と、何かにつけ県人会会長として率先して奉仕活動に携わってい る。七夕祭りに関しては、南加宮城県人会が100周年を迎えた2002年、仙台市の「白松がモナカ本舗」白松一郎社長の寄贈による吹き流しの飾り10個を ホテルニューオータニ(当時)のロビーに飾り、知事ら一行を迎えての100周年行事を盛り上げた。

米国で七夕祭りを催したのは、年代も理由も不明だが、フィラデルフィアでだいぶ前に七夕飾りを飾ったことがあったのが伝えられているぐらい。仙台と姉妹都市提携を結ぶカリフォルニア州リバーサイド市では一度「飾りたい」という話があったが、実現しなかったという。

最近では、宮城県人会が昨年、モントレーパーク市内の公園で行ったピクニックで七夕飾りを飾ったが、これは、全米日系人博物館の「ディスカバー・ ニッケイ」のコーディネーターをしている西村陽子さんが、3年前にブラジルを訪れた際に、サンパウロで行われた七夕祭りを見てきて、米澤さんに「ロサンゼ ルスでも」と提言したのがきっかけだった。翌年たまたまロサンゼルスで開かれた国際ロータリークラブの大会に宮城県から関係者が来ていたので、彼らの協力 を得て吹き流しの飾りを5個作り、ピクニックで飾ったのだった。

これが思ったより好評で、その後、東本願寺のカーニバルや南加県人会協議会が日米劇場で毎年催している奨学金授与の演芸会の舞台に飾ったり。また、 小東京交番にも飾っていたが、それが今年の二世週祭の実行委員長を務めるロサンゼルス市警察副本部長のテリー・ハラ氏の目に止まり、二世週祭での採用と なった。

「輸出」される七夕祭り

仙台の七夕祭りでは七種類の飾りが飾られる。それぞれ意味があり、米澤さんはそれらをワークショップで作ろうという計画だ。

七種類の飾りは「短冊」「紙衣(かみごろも)」「折鶴」「巾着(きんちゃく)」「投網(とあみ)」「屑籠」そして「吹き流し」。それぞれ、短冊は学 問や書の上達を願い、紙衣は病や災いの身代わり、または裁縫の上達を、折鶴は長寿を、巾着は富貴と貯蓄、商売繁盛を、投網は豊漁を、屑籠は清潔と倹約を願 う。吹き流しは織姫の織り糸を象徴するもので、くす玉が付く例が多い。

ただ、二世週祭では飾りを200個作ろうという案も出ており、そうなれば、一回のワークショップで作るだけでは間に合わない。それで米澤さんは、ロ サンゼルス地区の各日本語学校からの協力を得ることも考えている。生徒たちに飾りを紙で折ってもらう。日本文化の理解と普及を兼ねた行事だ。それに、日系 の高齢者施設などの居住者からも協力を得られるかもしれない。紙などの材料は仙台から取り寄せなければならないため、資金面での協力も不可欠。南加県人会 協議会もすでに協力を決めており、二世週祭実行委員会では今後、同協議会などとともに、広く日系団体や日系企業に協力を呼びかけていく方針だ。

仙台の七夕祭りはすでに海外にも「輸出」されており、サンパウロでは1979年から開催。飾り付けに加え、屋台や古本市が出たり、短冊売りをした り、ゆかたコンテストを催すなど、現在は市のイベント・カレンダーにのるほどに成長した。フランスのパリでも「仙台七夕まつり・イン・パリ」と銘打って開 かれており、仙台の市民組織「仙台七夕国際交流委員会」や、地元パリに住む同郷人の会「青葉会」の協力で、飾りを作るワークショップや、仙台の伝統工芸品 の紹介なども行っている。

今年の二世週祭は第69回目で、8月15日から23日まで開催される。リトル東京にどんな「逢瀬」を呼ぶか。七夕祭りへの期待は早くも膨らんでいる。

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二世週祭の七夕祭りについては、第1回ロサンゼルス七夕祭り のページをご参照ください。

© 2009 Yukikazu Nagashima

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