花の声に耳傾ける -北島蓉幸さん-

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福田 恵子

2008年7月3日(木)

アメリカ人の日本にはない発想に驚く

日本の大学で地質工学を専攻し、卒業後は造園会社に就職。大学時代には既に入門していた北島さんの草月歴は37年になる。

「大きさが違うだけで、庭も生け花も本来の作り方は同じです。生け花の主、添え、控えの構造は日本庭園にもそのまま当てはまります」

日本造園技師として渡米したのは1979年。アメリカでも、草月の沖中春洋先生に師事した後に自分でも教え始めた。日本で師範の資格を取得していた北島さんに、日米の生け花の違いを聞いた。

「アメリカ人は、日本人が考えつかないような色合わせと、素材の組み合わせに優れています。自分にはない発想だと感心させられることがたびたびあり ます。教えられたからというのではなく、自然に身に付いているものではないかと思わされます。また、素材が豊富なことも日本以上にチャンスに恵まれている 点です。たとえば、極楽鳥などは日本では高価な花ですが、カリフォルニアには庭に何本でも生えています。ここでは、素晴らしい花材が容易に手に入ります。 素材を制限されることのない草月は、カリフォルニアではまさにやりがいのある生け花だと言えるでしょう」

花器から花材まで手作りにこだわる

現在の生徒の数は50人ほど。コミュニケーション法について聞いてみた。

「実は、渡米して29年になりますが、私の英語はそれほどうまくはありません。でも、アメリカ人の生徒さんたちは日本人以上に日本的で、日本の文化にも非常に詳しい方が多いのです。英語が十分でない分、私は行動で示します。生徒と接していても常に勉強です」

北島さんが心がけているのは、生徒の長所を褒めること。「固まりを作るのが上手な人、ラインを作るのが上手な人、大きな作品が上手な人、それぞれ個 性があります。悪い所も指摘するのではなく、上手な所をよく見てあげて、そこを伸ばすように指導します。その人の持っているいい部分を引き出すのがアメリ カ式の教育です。日本の生け花だから、という理由で日本式に教えるだけではなく、アメリカ的に生徒さんがプライドを持てるように指導するのが私のやり方で す」

そして、常に生徒には挑戦を求めていると言う。「私に褒められるような作品は必要ありません。長い人はどんな作品なら褒められるかがわかっていま す。また、禁じ手も理解しています。しかし、小さな枠にはまるのではなく、私を驚かせるような作品、私自身を考え込ませるような作品を作ってほしいので す。先生と生徒という師弟関係を超えて、お互いの作品で刺激を与え合うことでクラスの雰囲気は非常に熱くなります」

アメリカを意識するのは、教え方だけではない。「日本の人に見せた時に、『やはりアメリカの草月は違う』と思わせるような、さらに自由な発想の作品にしたいと常に考えています。大きいだけではなく、『面白い』と思ってもらえるような作品です」

北島さんが良く使うのはパームジャケットやジャイアントバナナの葉など、南国の空気を感じさせる素材だ。北島さん自身がナーサリーの経営者であるこ とから、グリーンはすべて自分が育てた素材を使用している。「できるだけ自分の手で作った物で完結させたいので、花器となる陶器も手作りです」

舞台上のパフォーマンスでスタンディングオベーション

自分で育てた花材と作った花器で、北島さんは、これまでにさまざまな場所で作品を生けてきた。長年、リトルトーキョーにあったホテル・ニューオータ ニのロビーの花も北島さんが担当していた。ロサンゼルスのダウンタウンにある日本総領事館内の花は、今も生けている。また、フラワーデコレーションの専門 家が集まるポモナフェアにも毎回出品している。アメリカ人の専門家から日本の生け花が一目置かれることは何よりも嬉しいと話す。

さらに、北島さんが力を入れているのは生け花のデモンストレーションである。過去にジャズコンサートとのコラボレーションをはじめ、さまざまなイベ ントに出演してきた。ダイナミックな動きと共に、ゼロの状態から完成された作品までのプロセスをそのまま舞台上で表現するパフォーマンスが終了すると、観 客からスタンディングオベーションで迎えられると言う。「ホテルやパーティー会場で展示されてあるだけの作品の手応えは伝わり難いですが、観客からその場 でいただく拍手は非常に嬉しく、また、自分自身を奮い立たせるいい機会になります」

生け花をショーとしてよりよく見せるため、ラスベガスでは必ず一流エンターテイナーのショーを観賞するのだそうだ。「サーク・ド・ソレイユ、マジック、コミック、何でも勉強になります。生け花も見る人、つまり、観客あってのものだと思います」

つまり、見る人が不在の、自己満足の作品であってはならないということだろう。メジャーリーグの野球でさえも、勉強になると言う北島さん。確かに、 日本のプロ野球よりも、「ファンを魅了する」ことにかけては、格段のプロフェッショナル精神を感じさせるのがアメリカの野球だ。

北島さんにとって生け花とは何かという問いを投げ掛けた。「花、つまり、植物は私の家族です。各地に植わっている、私が育てた植木を見るたびに愛お しい気持ちになります。もちろん、花には話しかけながら生けています。花の気持ちになって、静かに耳を傾けていると、彼らがどう生けられたいかがちゃんと 伝わってくるのです。本意ではない生け方をされてしまうと、花も気持ち悪くてすぐに枯れてしまいます。生け花が生き生きしているのは、花たちが喜んでいる からなのです」


北島 蓉幸さん

プロフィール:日本の大学生時代に草月入門。大学卒業時に師範取得。1979年に渡米し、82年よりアメリカで草月流を教え始める。現在の教室はパサデナ とサンゲーブル。ナーサリー経営。2007年に草月本部よりSpecial Award for Overseas Instructorを授与。

© 2008 Keiko Fukuda

 

福田 恵子 (ふくだ・けいこ)

Keiko Fukuda was born in Oita, Japan. After graduating from International Christian University, she worked for a publishing company. Fukuda moved to the United States in 1992 where she became the chief editor of a Japanese community magazine. In 2003, Fukuda started working as a freelance writer. She currently writes articles for both Japanese and U.S. magazines with a focus on interviews. Fukuda is the co-author of Nihon ni umarete (“Born in Japan”) published by Hankyu Communications.

Updated February 2008

 
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